2. 厚生年金・国民年金の平均受給額
厚生労働省の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均受給額は月額14万3973円、国民年金は5万6316円です。
◆厚生年金◆
- 全体:14万3973円
- 男性:16万3875円
- 女性:10万4878円
◆国民年金◆
- 全体:5万6316円
- 男性:5万8798円
- 女性:5万4426円
2.1 厚生年金は男女間で差がある
男女別に見ると、厚生年金では男性の方が女性よりも約6万円多くなっています。
厚生年金は、現役時代の年収や厚生年金加入期間等により保険料が決まります。
女性は、結婚や出産、介護などのために退職や休職をすることがあり、加入期間が短くなりがちです。
また、復職しても休職前のような給与が受け取れるとは限らず、年収が思うように増加しないことも考えられます。
このような事情が、厚生年金受給額にも影響を与えているといえるでしょう。
一方、国民年金は保険料の払込期間で受給額が決まるため、男女間での差がそれほど生じていません。
2.2 国民年金だけでは生活費をまかなえない可能性がある
国民年金の平均受給額は約5万6000円となっており、厚生年金より10万円弱少ないです。
国民年金だけで老後の生活費をまかなうことは難しいと考えられるため、自営業や個人事業主の方などは、年金以外の方法で老後資金の準備をしておく必要があります。
例えば、国民年金の上乗せ支給である「付加年金」や「国民年金基金」に加入して、受給額を増やしたり、早いうちから貯蓄を増やしたりすることが大切です。ただし、付加年金と国民年金基金は併用できません。
【付加年金】
国民年金保険料に、付加保険料として毎月400円を追加して納付します。
上乗せされる付加年金額(年額)は、「200円×付加保険料納付月数」で計算され、2年以上受給すると、納付した付加保険料以上の年金が受給可能です。
【国民年金基金】
国民年金に上乗せ支給される公的年金で、国民年金の「二階建て」部分を実現するものです。加入は口数制により、何口加入するかで受取額が決まり、給付の型(終身年金、確定年金)は自分で選べます。
3. まとめにかえて
70歳代ひとり世帯の平均貯蓄額は1529万円で、中央値は500万円、夫婦世帯では平均貯蓄額が1757万円、中央値は700万円です。
いずれの世帯でも、貯蓄なしの世帯と3000万円以上ある世帯の割合が多く、貯蓄額の両極化が見られます。
年金だけで生活費がまかなえない場合、頼りになるのは貯蓄です。現役のうちから意識的に準備を始めることが大切でしょう。
参考資料
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
- 日本年金機構「付加保険料の納付」
- 国民年金基金連合会
木内 菜穂子