東京都心部にお住まいの方やお勤めの方は、近ごろ街なかで「公道カート」を見かけることはありませんか? 中でも世界的に有名なゲーム『マリオカート』のキャラクターに扮した観光客が公道でカートを運転する姿は、さながらゲームから飛び出してきたようです。

しかし、現実はゲームのようにはいきません。実際には公道カートでの事故や迷惑行為も多く起こっていて、現在、さまざまな対策や規制が検討されています。そもそも公道カートとは、そして問題になっているのはどんなことなのでしょうか?

法律上では「ミニカー」

自動車の分類では「道路交通法」と「道路運送車両法」という2つの法律が関係しています。その中で「総排気量が0.050リットル(50cc)以下の四輪自動車」という位置づけの公道カートは、「ミニカー」に分類されています。しかし実際のところ、公道カートは「法律のはざまにある」とも言われています。

道路交通法では、四輪自動車を運転する際のヘルメット着用は義務づけられていません。そして道路運送車両法では、総排気量50cc以下の車両を運転する際にはシートベルト着用が義務づけられていません。このために、ヘルメットもシートベルトも着用しない運転が主流となってしまい、中には「信号待ちの際に道路上でカートから降りた」などの行為が報告されています。

ハンドルを誤り飲食店に衝突

公道カートの利用者は、主に訪日の外国人観光客です。カートに乗るために日本にやってくる人もいて、2020年の東京オリンピックを前に、いまや日本の観光資源の一つとして注目されています。レンタル業者も日本全国に複数展開されて、公道カートでの都内ツアーも開催されるほどです。

一方、利用が進んできたことで、公道カートでの事故が目立つようになってきました。2017年3月から2018年2月にかけて、警視庁管内で確認された公道カートでの事故だけでも50件に上ります。5名ほどで連なって公道カートを運転していた外国人観光客が、ハンドル操作を誤って飲食店に衝突した事故や、人身事故も発生しています。これまでに死亡事故は確認されていませんが、明らかな信号無視や、並走する車のボディを手で触るなど、危険な行為は多数確認されています。

こうした状況を受けて国土交通省は、シートベルトの着用義務化や他の交通からの視認性の向上など保安基準を改正し、安全基準を拡充・強化することを正式に発表しました。

大型車の運転手からも困惑の声

この数年で、外国人観光客だけでなく日本人にも利用者が増えている公道カート。実際に利用した人からは「爽快!」「気持ちいい」など好評です。一般的なクルマとは違った開放的な車体で、目線も低いカートで走るスピード感が人気の理由のようです。

しかし「安全対策が不十分で危ない」「いつか大事故につながるかもしれない」といった意見も以前から少なからずありました。特にバスやトラックなどの大型車の運転手からは「車体が低いから見つけづらく、ミラーにも映らない時がある」という声が寄せられています。また、交通量のある道路上でいきなり停まって車から降りたり、赤信号でも数台のカートが連なって走行したり、蛇行運転したりといった「利用者の公道でのマナー違反」を指摘する意見もありました。

人気を博している公道カートですが、安全と周囲への配慮を徹底した上で、その爽快感を楽しんでもらいたいところです。

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