「子どもが喜んで食べてくれる!」、「見た目重視で栄養が偏りがち」など、賛否が分かれるキャラ弁。簡単にキャラ弁を作るグッズもさまざまあり、賛成派のなかには日々かわいいお弁当を作ることに楽しみを感じている人もいるかもしれませんね。
では、そのキャラ弁作りは、子どもが何歳になったら卒業したらよいのでしょうか。この機会に、お弁当について少し考えてみましょう。
お弁当の発祥と進化
まずは、お弁当の歴史を簡単にひも解いてみましょう。お弁当の発祥は、5世紀頃と言われています。当時は、ご飯を干して腐りにくくしたものを非常食として持ち歩いていました。それは「お弁当」というより、「携帯食」と呼ぶにふさわしいものでした。
その後、安土桃山時代には、入れ物の中に食事を詰める「お弁当」のスタイルに進化。江戸時代には芝居の合間に食べるお弁当として「幕の内弁当」が登場し、ご飯をたわら型にむすび、煮しめなどのおかずを入れたお弁当が評判となりました。携帯食だった頃に比べて、見た目の美しさや栄養バランスにも気を配られるようになっていったのです。
こうしてお弁当の目的は、単に空腹を満たすことから、外出や旅行時の楽しみへと変化してきました。
お弁当は貴重な日本文化のひとつ
現在のお弁当のように主食と副菜・デザートが入ったお弁当は、諸外国ではほとんどありません。「BENTO」として世界各国の辞書に載っていることからも、お弁当は日本文化のひとつであると言えそうです。
ここで、幼少期の食事のしつけについて考えてみましょう。食事のマナーをしつけることは、単に「やって良いこと・悪いこと」を教えるだけのものなのでしょうか。日本では箸やカトラリーを使って食べることを良しとしますが、とある国では手で食べることが正しい食べ方です。また麺をすすって食べる国、すすることがマナー違反の国などさまざまです。
食事のマナーをしつけることとは、「文化を教えること」でもあるのではないでしょうか。そう考えると、キャラ弁は日本文化を教えるツールのひとつであり、自国の文化を学んだり誰かに伝えたりすることに年齢制限なんてないのかもしれませんね。
時期は家族で決めていくもの
そうは言っても、思春期になると特に男の子はキャラ弁を恥ずかしく思うこともあるかもしれません。本来お弁当には「喜んで食べてくれるかな?」とか「フタを開けたときに少しでも感動させたい」と相手のことを想う作り手の愛情もたっぷり詰まっており、その気持ちを伝えるツールでもあります。
だからこそ、相手が嫌がっているのに作り続けるのであれば、それは途端にひとりよがりで自己満足になってしまうかもしれません。
「キャラ弁は何歳まで必要か?」を考えるうえで大切なことは、一般的な意見ばかりに耳を傾けることではありません。作り手と食べる人がコミュニケーションを取りながら、「もう少し作ろうかな?」とか「そろそろやめようか」と、自分たちで終わりを見つけていくことが大切なのではないでしょうか。キャラ弁をきっかけに家族の会話が増えるのであれば、とても素敵なことですね。
お弁当箱に込めるもの
最近では、夫婦喧嘩をした翌日にご主人のお弁当を思いっきりかわいいキャラ弁にすることで仕返しをする女性も増えているそうです。お弁当箱という小さな空間に、家族のドラマがたくさん詰まっていることを感じさせられます。
また、お弁当箱のなかには、食品を腐りにくくしたりキレイに盛り付けたりと、歴史の中で培われてきたノウハウがぎっしりと詰まっているのです。もしかしたら、今後キャラ弁人気が下火となり、誰も作ることがなくなるかもしれません。しかし、形を変えたとしても、親から子どもへの愛情や伝承するべきワザなどは、その小さな空間に残り続けることでしょう。
まとめ
キャラ弁に賛成か反対か、そして賛成なら何歳まで作り続けるのか、どれも明確な正解なんてありません。各家庭の考え方によって、正しい選択は変わっていくのでしょう。ただ、どんな選択をしても、お弁当の目的のひとつでもある「楽しむこと」を忘れずにいられると良いですね。子どもを想い奮闘した毎朝は、きっと忘れられない思い出となるでしょう。
桜井 まどか