LIMOが2023年5月にお届けした記事から、注目の記事をピックアップして再掲載します。
(初掲載*2023年5月21日)
働き盛りの世代ならば、日々の仕事に邁進し、給与があがると嬉しいものです。しかし同時に、昇給後の給与明細を見ると控除される税金や社会保険料の多さに愕然とする方も多いのではないでしょうか。
日本は「累進課税制度」を採用しているため、所得があがると納める税金額も増えます。現役時代に税金をしっかり納めてきたわけですから、老後は悠々自適な年金生活を送りたいと願う人も多いでしょう。
しかし老齢年金からも天引きされる税金や社会保険料があることをご存知でしょうか。今回は最新の年金受給額を確認し、老齢年金から天引きされるお金について眺めていきたいと思います。
1. 【老齢年金の基本】実際に受け取る年金額は人それぞれ
最初に、年金制度の基本をおさらいしましょう。日本の公的年金は「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」の2つの制度から成り立ちます。
加入する年金は、働き方や立場により異なります。そして老後に受け取る年金は現役時代の年金加入状況によって人それぞれです。
2. 【老齢年金】年金保険料&平均年金月額はいくら?
国民年金と厚生年金では、現役時代に支払う年金保険料や、老後に受け取る年金額が決まるしくみが異なります。
国民年金の年金保険料は全員一律で、全期間(480月)納付した場合に「満額」の国民年金を受け取ることができます。
一方、厚生年金の年金保険料は収入によって決められた年金保険料を納めます。現役時代の収入、そして厚生年金に加入して働いていた期間が、老後の年金額に直接響くのです。
転職や離職、独立や起業などのタイミングで、加入する年金制度が変わることも多いですね。将来の年金額は平均額を鵜呑みにせず、事前にしっかり把握しておきましょう。
3. 【老齢年金】自分の年金額を確認するには?
老後の年金見込額を把握することは、長期的なマネープランを作る第一歩ともいえますね。ご自身の年金加入状況や年金見込額は、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」を積極的に活用しましょう。
このうち「ねんきん定期便」は、毎年誕生月に日本年金機構から郵送されるもので、年齢によって形式や記載される内容が異なります。
3.1 50歳未満の人に送られる「ねんきん定期便」
50歳未満の人に送られる「ねんきん定期便」には、これまでの加入実績に応じた年金額が記載されています。
3.2 50歳以上の人に送られる「ねんきん定期便」
50歳以上になると「実際の見込額」が確認できるので、より正確な金額に近いものが確認できようになります。
4.「年金振込通知書」で知る”ほんとうの年金額”
この「ねんきん定期便」に記載された年金額は、あくまでも見込額、かつ各種控除前のいわゆる「額面」です。よって、実際の振込額とは異なります。
実際に受け取る金額は、受給開始後、毎年6月(※)に日本年金機構から郵送される「年金振込通知書」の記載内容を確認しましょう。
(※)年金支払額や受取金融機関に変更があった場合には都度送られます。
4.1 「年金振込通知書」の確認ポイント
冒頭でも触れたように、老齢年金からも「天引き」されるお金があります。そのため総支給と振込額に差が出るわけですね。「年金振込通知書」のサンプルを見ながら、確認項目を整理していきましょう。
■ 確認ポイント(1):年金支払額
年金は偶数月に2カ月分が支給されます。ここに記載のある金額は、あくまで各種控除を行う前の「総支給額」、いわゆる「額面」です。
■確認ポイント(2):介護保険料額
現役時代は給与から天引きされていた「介護保険料」も年金から控除されます。老後に介護認定を受け、実際に介護サービスを利用するようになった後も、この介護保険料の支払いは生涯続く点に注意が必要です。
■確認ポイント(3):後期高齢者医療保険料、国民健康保険料(税)
介護保険料と同じく、後期高齢者医療保険料や国民健康保険料(税)も天引きされます。ただし、天引き対象でない場合には記載がありません。
■確認ポイント(4):所得税額および復興特別所得税額
年金に応じた所得税額および復興特別所得税額が天引きされます。社会保険料と各種控除額を差し引いた後の額に5.105%の税率を掛けた額が記載されています。
年金に所得税が課税される場合も、年金からの天引きで納税します。
■確認ポイント(5):個人住民税
所得税と同様に、個人住民税も天引きとなります。
■確認ポイント(6):控除後振込額
ここに記載の金額が、各種控除後の実際の振込額、いわゆる「額面」です。
5. まとめにかえて
今回は、年金の基本や「ねんきん定期便」の見方について触れたあと、「年金振込通知書」のサンプルを見ながら、老後の年金から天引きされるお金について整理しました。
「人生100年時代」に向け、老後のお金対策の話題がメディアで頻繁に取り上げられるいま。将来の年金額を把握している人は結構多いかもしれません。でも、そこから差し引かれるお金の存在は意外に気づきにくいもの。
貯蓄や資産運用についての情報とともに、税金や社会保険など「公的なお金」に関する知識に高くアンテナを張っておくことはとても大切です。きっと、遠い将来に向けた資産づくりの役に立つでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 厚生労働省「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「ねんきん定期便」
- 日本年金機構「年金振込通知書」
山本 大樹