難関大学にとって、定員割れは大学の収入の減少に直結しますから、何としても避けたいところです。そこで、追加合格を発表して下位の大学に入学を決めている受験生を引き抜いてこようとするはずです。

超難関大学の合格発表が行なわれ、難関大学で定員割れが確定してから追加合格を出すと、下位大学に既に入学金を納めていた学生が難関大学に再び入学金を納めなければならないわけです。

そして、さらに困るのが、難関大学に入学者を引き抜かれた下位大学です。下位大学は、入学式の直前になって追加の合格者を出し、さらに下位の大学から入学者を引き抜いてくるでしょう。そうなると・・・。

難関大学にとっては、定員割れは単なる収入減少の問題です。まさか難関大学が人気がなくて定員割れになったと思う人はいないでしょうから。しかし、下位大学にとっては「定員割れの大学」であるか否かが非常に大きな意味を持つのです。そこで、必死に追加合格を出して入学者をかき集めるはずです。それが玉突きで大きな混乱を引き起こすのです。

その場合、1点差で不合格であった受験生が「すでに他大学に入学金を納めてしまったので、結構です」と言えば、2点差で不合格であった受験生が合格することになります。「高得点の受験生が合格する」という入試の大原則に反した結果ともなりかねません。

下位の大学にとっては、さらに深刻な問題も発生しかねません。入学式直前に合格者を引き抜かれた場合、やむをえず追加合格を発表しても、すでに他大学への入学を決めている受験生は入学してくれないでしょうから、本来は定員割れにならずに済んだはずの大学が「定員割れ」というレッテルを貼られて翌年からの受験生集めに苦労する、といったことも起きかねません。

大学入試の仕組みをどう変えればいいのか

定員の1.2倍も学生を受け入れるのは「正しい」ことではない、という文部科学省の言い分もわかります。教授の数も教室の数も適正数を割り込んでしまう可能性があるからです。しかし、「正しい」ことが良い結果をもたらすとは限らないところが問題なのです。

せめて、毎年の入学者数ではなく、在学生の数で管理してもらえると、大学としては大変楽です。そうなれば、各大学は「過去3年間に、補助金カット直前ではなかったのりしろ分」までは今年の入学者が増やせるからです。

毎年の許容範囲を1.1倍とすれば、今年は定員の1倍から「4.4倍マイナス在学生数」までの入学が許されることになります。毎年ピッタリ1.1倍を入学させている大学はないでしょうから、今年入学させてよい学生数の枠が広がるからです。

もっとも、学生の多くが留年してしまうと、すぐに在学生数が定員の4.4倍を超えてしまうかもしれませんが(笑)。

ちなみに筆者の私案ですが、「大学入試センターがあらかじめ全受験生から第一志望以下の志望順位を聞いておき、全部の大学から全受験生の入学試験の点数を聞き、合格者リストを作成して一斉に発表する」というのはいかがでしょうか。

大学入試センターが最初に超難関大学の合格者を決定し、合格者を他大学の受験者リストから消去した上で、難関大学の合格者を決めるのです。そうすれば、難関大学は「歩留まり率」を気にせずに合格者を決められます。以下同様です。超難関大学の合格者で、他大学を第一志望としている受験生がいた場合には、超難関大学の次点を合格とする、といった調整は必要になりますが。

実際問題としては、国公立の後期日程を前倒しする必要はありますし、大学入試センターがシステム開発を行う必要がありますが、それほど複雑なシステムは必要ないと思います。

なお、本稿は厳密性よりも理解しやすさを重視しているため、細部が事実と異なる可能性があります。ご了承ください。

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塚崎 公義