4月初旬、大相撲の舞鶴場所で、土俵上で挨拶中の舞鶴市長が倒れるという事件がありました。その際、土俵に上がって救命処置を行った女性に対し、若手行司から「土俵から降りるように」とアナウンスがあったことについて、「非常時に何を言っているんだ」「人命より伝統のほうが大事なのか」とインターネット上を中心に炎上しました。大相撲における土俵上の「女人禁制の伝統」をめぐっては、以前から議論はあったのですが、いままたその是非が問われています。

その一方で、4月15日には、大阪・堺で「女子相撲」の国際大会「第6回国際女子相撲選抜堺大会」が開催されました。かたや国際大会が開かれ、女性が堂々と土俵上で相撲をとっているのに対し、大相撲においては土俵に女性は入ってはならないとされています。この両者の違いは、どこからくるものなのでしょうか。

そもそも「女子相撲」って?

舞鶴場所での一件により、「土俵は女人禁制」というイメージが強くありますが、女子相撲を含むアマチュア相撲には、そうしたタブーはありません。

2013・14年の女子相撲の国際大会で2連覇を果たし、実力と愛らしいルックスも相まって女子相撲の興隆に大きく貢献してきた立命館大学の野崎舞夏星(まなほ)選手は、自身のTwitterで「女子相撲を見ていただくことで、相撲に対する見方考え方が変わってほしい」と言います。

女子相撲に対して、今でも苦言を呈する人はいるものの、「男子の相撲よりも迫力がある」とファンになる人も少なくないようです。また、体格差をものともしない戦いに「相撲本来のおもしろさが詰まっている」と評する人もいます。

「日本相撲連盟」と「日本相撲協会」

そんな女子相撲は、1996年に立ち上げられた「日本女子相撲連盟」によって運営されています。日本女子相撲連盟は、日本のアマチュア相撲を統括している「公益財団法人日本相撲連盟」が発足させた連盟であり、大相撲を運営する日本相撲協会とは別の団体です。

国際大会は2013年から行われ、毎年、国内外からアマチュア選手が集まり、熱戦を繰り広げています。重量別に階級が分かれており、レオタードの上にまわしをつけたスタイルで行われる点が大相撲と大きく異なりますが、ルール自体には、ほとんど違いはありません。

こうした女子相撲は、オリンピックの正式競技入りを目指し、相撲を「スポーツ」として世界に広めようという目標のもと行われています。日本の登録選手数は約500人にまで増えてきて、西日本には実業団もあります。こうして、今や「女子相撲」はアマチュア相撲界では欠かせない存在とまで言われます。

相撲はスポーツ? それとも神事?

一方で、大相撲の本場所を主催する公益財団法人日本相撲協会は、「神事を起源とした相撲の伝統と秩序を維持し継承・発展させる」という目的を掲げています。国技館の運営を行っているのも日本相撲協会であり、こちらには女人禁制というタブーが存在します。

歴史をさかのぼると、江戸時代まで「女相撲」は行われていたようですが、近代の大相撲では、女人禁制などの禁忌によって権威を高めてきたという歴史があり、現在の日本相撲協会はその流れを継いでいます。

「スポーツ」としての側面を強く押し出す日本相撲連盟と、「神事・祭事」としての側面を重んじる日本相撲協会。両者とも「国技としての相撲を発展させたい」という思いは一致しているものの、その主眼に大きな隔たりがあります。

従来「男性のもの」というイメージが厳然としてあったものも含め、最近はさまざまな場面で「男女平等」がこれまで以上に謳われるようになっています。その中で、これから日本の国技である相撲はどうなっていくのか、今後も注目していきたいところです。

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