イェール大学エンダウメント(大学基金)から耳寄りなお知らせです。同エンダウメントは、2017年度(2017年6月末時点)の運用報告書の中で市場関係者に粋な計らいを見せています(25ページ参照)。

なんと、イェール大学の基金運用チームがファンドマネジャーを公募することを発表しているのです。

どんな条件が求められているのか

“募集要項”によれば、同エンダウメントのファンドマネジャーに求められる資質は以下のようになっています。

  1. 健全な投資哲学を持っていること
  2. 投資に対する熱意があること
  3. 際立った運用能力があること

加えて、同エンダウメントの運用チームは、誠実な研究態度を持ち、厳格な市場分析を行い、一貫性をもって運用に取り組むことが求められています。

それ以外の条件らしい条件は記載がなく、ウォール街出身でなくとも応募はできそうなところから、同エンダウメントが広範な人材を求めていることが分かります。つまり、“他の投資家が気づかない投資機会”に投資機会があると考えているようです。

なお、応募可能なファンドマネジャーの資産クラスは、上場株式、債券、LBO(レバレッジド・バイアウト)、ベンチャーキャピタル、不動産、絶対リターン型ヘッジファンド、天然資源となっています。

同エンダウメントの得意とする運用スタイルは、運用の初期段階から参加しリターンを極大化することですので、こうした資産クラスにアクティブ運用することで隠れた投資機会、しかも新しい投資機会を探しているのでしょう。

アクティブ運用に否定的なバフェット氏に対して・・・

ファンドマネジャーを電子メールで公募するという大胆なイェール大学エンダウメントですが、あのウォーレン・バフェット氏にも苦言を呈しています。

バフェット氏は「株主への手紙」(2016年)の中で、“エンダウメントもコストの低いインデックス投資を行い、再現性の低いアクティブ投資はやめるべきだ”と述べています。

これに対し噛みついたのが同エンダウメント。アクティブ運用の優位性を語ることで、バフェット氏を批判。次のようにバッサリ切り捨てています。

  • バフェット氏も認識している通り、優れたアクティブ・マネジャーは存在する。
  • コスト控除後のアクティブ・ファンドは、インデックス運用に劣るとの認識は間違いで、リスク調整後のアクティブ・リターンは決してパッシブ運用(インデックス運用)に劣っているわけではない。
  • 一般投資家ならいざ知らず、トップ・エンダウメントは洗練されたプロ中のプロが運用担当者となっており、一般投資家と比べるバフェット氏の考えは間違い。

アクティブ vs. パッシブの神学論争がここでも見られます。さはさりながら、バフェット氏自身が世界一のアクティブ・マネジャーでもありますから、低成長経済下でパッシブ運用の脅威を感じているのは、ほかならぬバフェット氏自身かもしれません。

ということで、腕に自信のある方はイェール大学エンダウメントの門をたたいてはいかがでしょう。連絡先は「prospective.managers@invest.yale.edu」です。

メールアドレスが、“有望なファンドマネジャー@イェール大学”となっているのが粋ですね。

太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)