“若者の車離れ”という言葉をよく聞くが、“若者のバイク離れ”も深刻だ。今、バイクに乗っているのは、経済的余裕がある中高年ライダーやリターンライダーたちだ。

そのバイクの中でも激減しているのが50ccバイク。ヘルメット着用の義務化や、最高速度が30km/hという、日本の道路事情に合っていない道交法、さらに面倒な二段階右折などがあるため、原付きを気軽に乗れなくなっていったのも原因の一つだろう。ただ、ヘルメットは安全上必要だし、必ず着用してほしい。

日本自動車工業会調べによると、国内の原付第一種(50cc以下)の販売台数は、1980年に197万8426台だったのに対して、2016年には16万2130台と約12分の1にも減っている。原付第一種の激減で、2016年にはホンダとヤマハが50ccスクーターの協業を開始。内容はホンダが生産・販売を行なっている50ccスクーターをヤマハへOEM供給するというものだ。

原付第二種(51~125cc)では、1980年の20万238台に対して、2016年は10万1424台と、約半分に減った。このことからも50cc以上のスクーターや、ビッグスクーターはまだ需要はあると考えられる。

スクーターを製造している海外メーカーとしては、台湾のKYMCO(キムコ)やSYM(三陽工業)、PGO(摩特動力機車)、イタリアのVESPA(ベスパ)、PIAGGIO(ピアッジオ)、ADIVA(アディバ)などがある。しかし、国内においてはホンダ、ヤマハ、スズキの寡占状態だ。

そこに現存する世界最古のバイクメーカーである、プジョースクーターが販売を開始した。

プジョースクーターが国内販売を開始

プジョースクーターの輸入販売元は、イタリアのスクーターメーカーADIVAの輸入・販売を行なっているADIVAだ。今回、プジョースクーターとして「DJANGO(ジャンゴ)」シリーズを4台、「SPEEDFIGHT(スピードファイト)」シリーズ2台を、「東京モーターサイクルショー2018」のブースで展示した。

実はこの2つのシリーズは新型モデルではなく、「ジャンゴ」は2014年にすでに登場している。今までプジョースクーターは日本国内に輸入・販売されていたものの、いくつかの販売会社があった。それを今回、ADIVAが総輸入代理店として販売するに至ったわけだ。

まず、「ジャンゴ」だが、1953年にプジョー初のスクーターだった「S55」や「S57」といった伝説のSシリーズにインスパイアを受けた復刻版となる。4種類のラインアップを用意し、「ジャンゴ125エバージョン(メーカー希望小売価格は37万440円)」は、ネオレトロスクーターとしてクラシカルなデザインが特徴。

2トーンカラーでレトロな雰囲気の「ジャンゴ125エバージョン」

また、「ジャンゴ125ヘリテイジ(35万9640円)」は、シンプルかつモノクロームボディが優雅なスタイリング。「ジャンゴ125S(38万1240円)」は、1953年ボルドールやルマンの伝説的な勝利の栄光へのリスペクトを表現したスポーティなモデルで、シングルシートカバーを装着する。

さらに、「ジャンゴ125アリュール(38万1240円)」は、エレガンスを具現化したモデルで、クロームフィニッシュのリアラゲッジラックには、バックレスト付きのトップケースを装備するなど実用性が高いモデル。

ジャンゴシリーズのコンポーネントは基本一緒で、エンジンは空冷4ストロークSOHC単気筒の125cc。見た目はレトロだが、フロント、リアのライトにはLEDを採用。12V電源ソケットも装備し、使い勝手は現代風にアップデートされている。

もう一つのシリーズが「スピードファイト」。1997年にデビューした「スピードファイト」の第4世代にあたる。

アグレッシブなデュアルヘッドライトの「スピードファイト125R-CUP」

「スピードファイト125」と「スピードファイト125 R-CUP」の2台はカラーが違うのだが、「スピードファイト125R-CUP」には、プジョーのレーシングカー「308TRC」にインスパイアされたグラフィックを採用。さらにスマートフォンホルダーを標準装備している。

2台ともパワフルな水冷4ストロークSOHC単気筒の125ccエンジンを採用し、LEDライトやUSB電源も装備している。どちらもメーカー希望小売価格は36万720円。

ざっくりと言えば、ヤマハの「トリシティ125」と「NMAX」の中間くらいの価格で、ライオンマークが付いたプジョーのスクーターに乗ることができるというわけだ。

「スピードファイト125R-CUP」はスマートフォンホルダーが標準装備

現存する最古のバイクブランドであるプジョー

あまり知られていないが、プジョーは現存する世界最古のバイクブランドだ。1810年に金属製造業からスタートし、自転車製造を経て、1890年には動力源に蒸気を使った三輪車を発表、1898年には第7回パリモーターショーの会場にて、ド・ディオン・ブートン社のエンジンを搭載した、プジョー初のバイクを発表している。

その後はさまざまな市販モデルを発売し、マン島TTやボルドール耐久などのモータースポーツでも活躍するなど、120年もの長い歴史がある。

フランスのプジョーというブランドが好きなら気になる一台だろう。

鈴木 博之