2019年に「老後2000万円問題」という資産形成に関する言葉が有名になりました。金融庁の報告書において老後の30年間で約2000万円が不足すると発表されたことがきっかけで議論が巻き起こった、老後の資産形成に関する問題です。

5年経った今では物価上昇によって生活が圧迫されているのは確かで、2000万円という金額に対して「果たしてその金額で足りるのか」と疑問視されているのが現状です。

2024年3月に公表された内閣府「生活設計と年金に関する世論調査」によれば、老後「全面的に公的年金に頼る人」は26.3%でした。

7割以上の人は公的年金のみに頼らず、貯蓄などでセカンドライフを送ると考えられます。

また、日本では医療技術の進歩に伴い長生きする時代になっています。長生きするリスクがある以上、5年前に話題に上がった2000万円では十分にカバーできないかもしれません。

そこで本記事では貯蓄額にゆとりを持てる可能性がある3000万円以上の世帯がどれぐらいあるのかについて確認していきます。

60歳代・70歳代で「金融資産保有」世帯と「金融資産非保有」世帯に分けて検証しているので、ぜひ最後までご覧ください。

1. 【60歳代・二人以上世帯】貯蓄3000万円以上は何パーセントか

まずは、60歳代・二人以上世帯で「貯蓄3000万円以上」の人はどれくらいいるのか見ていきます。

1.1 金融資産を保有していない世帯を含む貯蓄額

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」より、60歳代・二人以上世帯の貯蓄事情について、金融資産を保有していない世帯を含んだ数字を確認します。

【写真全4枚中1枚目】60歳代世帯の貯蓄円グラフ

60歳代・二人以上世帯の貯蓄円グラフ

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」をもとにLIMO編集部作成

【60歳代・二人以上世帯】の貯蓄3000万円以上の割合

  • 20.5%

【60歳代・二人以上世帯の貯蓄額】平均と中央値

  • 平均:2026万円
  • 中央値:700万円

60歳代世帯のうち、貯蓄貯蓄3000万円以上の割合は約2割となりました。一方、貯蓄を保有しない世帯は21.0%にものぼります。

ほぼ同数ということから、貯蓄事情は二極化傾向にあることがわかります。

では貯蓄保有世帯に絞ると、どのように変わるのでしょうか。

1.2 貯蓄保有世帯のみの貯蓄額

同調査より貯蓄保有世帯のみの貯蓄額について見ていきましょう。

【写真全4枚中2枚目】60歳代世帯の貯蓄円グラフ。3枚目の写真で「70歳代の貯蓄円グラフ」も紹介

60歳代・二人以上世帯の貯蓄円グラフ

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」をもとにLIMO編集部作成

【60歳代・二人以上世帯】の貯蓄3000万円以上の割合

  • 26.0%

【60歳代・二人以上世帯の貯蓄額】平均と中央値

  • 平均:2588万円
  • 中央値:1200万円

貯蓄保有世帯のみの貯蓄額をみると、貯蓄3000万円以上は26.0%です。

平均は2000万円を超え、中央値は1000万円を超えました。

金融資産非保有の世帯に比べ、金融資産を保有している世帯のほうが貯蓄をしっかり蓄えていることが結果となって表れています。

では、現役世代も含まれる60歳代とは異なり、ほとんどがセカンドライフを迎えている70歳代の貯蓄事情はどうなっているのでしょうか。

ここからは、70歳代・二人以上世帯の貯蓄事情を紐解いていきます。結果からは「貯蓄の取り崩し」をしている世帯も垣間見え、苦しい老後生活を余儀なくされているリアルな結果が浮き彫りとなっています。