日銀のマイナス金利解除に伴い、メガバンクを中心に預金金利を引き上げる動きが見られます。

しかし、それでも年率0.02%程度の預金金利であり、仮に1億円を預けていたとしても、1年間で2万円程度の利息しかつきません。

預金金利が物価上昇率を下回っている状態では相対的にお金の価値が低下するので、安定した老後生活を見据えるならば、ある程度のリスクを許容して投資を行う必要があるのかもしれません。

そこで今回は、「配当金」を目的とした株式投資について考えてみます。投資のリスクがある一方で、銘柄によっては年率5.0%以上の配当利回りも期待できるのが高配当株投資です。

最新の家計調査を基に平均的な赤字額を確認し、その赤字を賄うために必要となる投資資金や配当利回りを考えてみましょう。

記事の後半では、毎月の生活費を配当金で賄うための投資計画について、シミュレーションを交えて解説しています。あくまでも一例ではありますが、投資計画を立てる際の参考にしていただければ幸いです。

1. 65歳以上・無職夫婦世帯の家計収支

総務省統計局の「家計調査報告〔家計収支編〕2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支は以下のようになっています。

<65歳以上・無職夫婦世帯の家計収支>

  • 実収入:24万4580円
  • 消費支出:25万959円
  • 非消費支出:3万1538円
  • 不足分:3万7916円


最新の調査結果によると、毎月平均で約3万8000円が不足しているとのことです。

家計収支には世帯差がありますが、老後は自らの金融資産を取り崩して生活するか、年金以外の収入源を確保しておく必要があるでしょう。

老後の収入減を確保する方法はいくつもありますが、今回はその1つとして、株式投資で得られる「配当金」について考えてみます。

2. 株式投資の配当金とは?

株式を発行する企業が、自社の株式を保有する株主に対して利益の一部を還元する仕組みがあります。その分配される利益のことを「配当金」と呼び、企業によって配当金の有無や配当利回りは異なります。

配当利回りは、1株当たりの年間配当金を、現在の株価で割って求めます。例えば、現在の株価が500円で、年間配当金が5円だった場合、配当利回りは1.0%です。

では、老後に不足する生活費を配当金で賄うには、どのくらいの投資金額と、配当利回りが必要となるのでしょうか。今回は、東京証券取引所のデータを基に考えてみます。

2.1 東証プライム市場の平均配当利回りは約2%

東京証券取引所では上場区分が設けられており、その中で最も上場基準が厳しい市場がプライム市場です。株主数や時価総額などが一定以上の企業が上場している市場であり、国内外において知名度が高い企業もこの市場に属しています。

2024年3月29日時点では、全上場会社数3938社の内、プライム市場には1651社が上場しています。

東証プライム全銘柄の平均配当利回りの今期予想値は2.10%、前期基準は1.97%となっており、個別で見れば5.0%を超える企業もあります。

例えば、配当利回りが2.0%で、毎月3万8000円(年間45万6000円)の生活費を補う場合、約2280万円の投資額が必要となる計算です。

単純に考えれば、投資資金さえ確保できれば生活費を賄えることになりますが、誰しもが準備できる金額ではありませんし、株式投資のリスクも考えなければなりません。

2.2 株式投資のリスク

株式投資には、大きく分けて2つのリスクがあります。1つは、株価の変動によって損をする可能性がある「価格変動リスク」、もう1つは投資した会社が破綻する可能性がある「信用リスク」です。

例えば、大きな金額を1つの銘柄に一括投資した場合、価格変動の影響が大きくなり、受け取った配当金以上の損失が発生するリスクが高くなります。

また、投資先の企業の経営状況が悪化して破綻した場合、配当金を受け取れなくなるどころか、投資した金額がゼロになる可能性もあります。

では、なるべくリスクを抑えつつ、毎月3万8000円の赤字を補うには、どのような投資戦略が必要になるのでしょうか。