2. 老後の年金問題って何?50歳代からでもできる3つの老後対策
前章では、50歳代の平均貯蓄額・貯蓄割合について見ていきましたが、なぜ極端に貯蓄が多い人と少ない人で二極化しているのでしょうか。
そもそもどの年代においても、「貯蓄がある世帯・ない世帯」の差は大きいものです。年収の差や生活水準の差、さらに貯蓄の意識が高い世帯とそうでない世帯の差などが複合的に絡んでいると考えられます。
これに加え、50歳代はちょうど「就職氷河期世代」であり、この世代はバブル崩壊後の不景気により就職難になる人が続出し、現在もなおその影響が続いていることが背景としてあります。
就職氷河期の影響で、職に就けなかったり、正社員になれなかったりした人と、問題なく就職できた人とで年収や貯蓄に差が生じているのでしょう。
なお、就職氷河期による就職難は年収や貯蓄だけでなく、年金にも影響が出てくる可能性があります。
厚生年金は加入期間が短かったり、年収が少なかったりすると、年金受給額が少なくなる可能性があるため、今のうちから年金だけに頼らない老後資金対策をしておくことが大切になります。
本章では、50歳代からでもできる老後資金対策を3つ紹介していきます。
2.1 老後の収支計画を立てる
まずは、ご自身が将来「いくら年金を受け取れるのか」「老後の生活費はいくらくらいになるか」を確認しておきましょう。
前述したように、老後に受け取れる公的年金は、加入している年金タイプや加入期間、年収によって受給額が異なるため、個人差が大きいです。
そのため、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などで、ご自身の受け取れる年金額を事前に把握しておくことが、老後資金対策の第一歩となるでしょう。
想定される年金受給額が分かれば、老後の生活費から年金額を差し引いて、毎月の不足金額を算出しましょう。
仮に、65歳から老後生活をスタートさせ、20年間生活する場合は「毎月の不足金額×12ヶ月×20年」が、あなたが貯蓄するべき老後資産の最低金額となります。
もし算出した金額を老後までに貯めるのが現実的に難しい場合は、生活支出を抑えるシミュレーションをしたり、後述する資産運用なども活用したりしてみると良いでしょう。
2.2 NISA等で老後資産を増やす
貯蓄だけで追いつかない分は、資産運用を取り入れて「増やす」視点も必要です。
例えばNISAは、投資で得られた収益に対して税金がかからない制度のため、適度なリスクを取りながら老後資産を増やす選択も検討できると良いでしょう。
2024年から新たに「新NISA」が始まり、非課税適用の金額が大幅に増えました。
また、非課税保有期間が「無期限」となったため、老後に向けた長期的な資産運用をしたい方にはおすすめです。
「NISAを利用することで老後までにどのくらい利益ができるのか知りたい」という方は、金融庁が運用している「資産運用シミュレーション」を利用してみると良いでしょう。
2.3 iDeCoを活用する
公的年金以外に私的年金の準備をしておくことも、老後資金対策の1つです。
私的年金の1つである「iDeCo」は、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に給付を受けられるものです。
iDeCoは国が主導している「税制優遇制度」であることから、従来よりもお得に資産運用がしやすくなっており、税金の控除対象になることから、老後資金の準備をしつつ節税もできるのは嬉しいポイントです。
留意点として、一度契約をしてしまうと一定期間内は引き出すことが難しく、途中解約をすると元本割れのリスクがあるため損をしてしまうケースもあるため、メリット・デメリットを理解したうえで検討できると良いでしょう。
3. 老後資金対策は50歳代からでも間に合う?
本記事では、50歳代の平均貯蓄額・貯蓄割合について詳しく紹介していきました。
就職氷河期世代である50歳代は貯蓄ゼロの割合が多いですが、厚生年金の加入が短かったり年収が低かったりする場合は、十分な年金を受け取れないため、今のうちからある程度の老後資金対策は必要になるとうかがえます。
50歳代からでも老後資金対策は間に合いますが、どれも早ければ早いほど、月々の資金負担は少なく済みます。
「老後が不安」と感じている方は、今日から何か1つ、老後資金対策に向けた行動をしてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」
- 金融庁「資産運用シミュレーション」
太田 彩子