ついに開戦、米中貿易戦争~報復関税合戦は勝者なき戦いだが

米国ではインフレ、中東情勢、ロシア疑惑を警戒

トランプ政権による対中制裁が相次いで発表されており、米中貿易戦争の火ぶたが切って落とされた模様です。世界経済への悪影響が懸念される中、米国では関税引き上げに伴う物価上昇への警戒が強まっているほか、中東情勢やロシア疑惑とのリンクにも注目が集まっているようです。

米中貿易戦争ついに開戦、米国が対中制裁を矢継ぎ早に発表

米中貿易戦争の火ぶたがいよいよ切って落とされたようです。

トランプ大統領は3月8日、鉄鋼に25%、アルミ二ウムに10%の輸入関税を導入する大統領令に署名しました。すべての国が適用の対象となりますが、標的は中国と見られています。

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2017年の米国の対中貿易赤字額は3752億ドルで、トランプ大統領は中国に対し1000億ドルの赤字削減を求めているからです。

輸入関税とは別に、トランプ政権は中国による知的財産侵害や企業への技術移転強要への対抗措置として昨年8月から米通商法301条に基づく調査を進めており、高関税の導入などにより年600億ドルの制裁措置を検討中とされています。

さらに、これらの動きとは別に、米国際貿易委員会(ITC)は3月15日、中国製アルミホイルの輸入で米企業が損害を受けているとの最終決定をし、中国製品に対する制裁関税の適用が確定しています。反ダンピング関税は最大で106.9%、相殺関税は最大で80.97%となっています。

このほか、トランプ政権は1月23日に洗濯機と太陽光パネルに輸入関税をかける緊急輸入制限(セーフガード)を発動していますが、太陽光パネルは中国を念頭に置いた措置と考えられています。

中国からの輸入物価上昇に警戒感、利上げを後押し

報復関税をかけ合う貿易戦争には勝者はいないとされており、世界的な景気減速リスクが危惧されていますが、それと並行して米金融市場では物価に対する警戒感も強まっているようです。

米消費者物価指数(CPI)を財(コモディティ)とサービスに分けると、コモディティが37.4%、サービスは62.6%を占めています。ただ、6割強を占めるサービス価格が比較的安定しているのに対し、コモディティ価格は変動が大きいことから、物価動向のカギを握るのはコモディティ価格の動きといえそうです。

たとえば、サービス価格は2014年と2015年がともに2.5%上昇、2016年は3.1%上昇とやや上振れていますが、2017年は2.6%上昇に低下し、2017年2月現在も2.6%上昇とおおむね安定して2%台後半を推移しています。

一方、コモディティ価格は2014年が2.0%低下、2015年が2.1%低下、2016年が0.4%上昇、2017年が1.3%上昇、2017年2月現在は1.5%上昇と大きく振れています。

コモディティ価格は輸入物価とおおむね連動しており、その輸入物価は2014年が5.6%低下、2015年が8.3%低下、2016年が1.9%上昇、2017年が3.2%上昇、2017年2月現在が3.5%上昇となっています。

さらに、中国からの輸入物価を見ると、2015年、2016年がともに1.7%低下、2017年が0.1%低下、そして2017年2月は0.3%上昇とついにプラスサイドに浮上しています。

中国は米国最大の輸入国であり、輸入全体の約2割を占めていますので、中国への輸入関税が物価を押し上げる恐れがあるわけです。

近年の米インフレ率の低迷はコモディティ価格が弱かったことが影響しており、中国がデフレを輸出していると揶揄されてきました。ところが、中国からの輸入物価は既にプラスに転じており、歩調を合わせてコモディティ価格も上昇に転じて現在に至っています。

2月の米CPIは2.2%上昇とまだ落ち着いた数字となっていますが、輸入関税で物価上昇に拍車がかかった場合には、インフレ加速への警戒から利上げスピードも速まるのではないかと懸念されています。

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LIMO編集部

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