4. 「特別支給の老齢厚生年金」の注意点
「特別支給の老齢厚生年金」を受け取れる人は、次に注意しましょう。
4.1 繰下げ受給ができない
老齢年金を繰り下げて年金額を増やすことを、「繰下げ受給」と言います。
ただし、繰下げ受給できるのは、65歳から受け取る老齢基礎年金と老齢厚生年金だけです。
「特別支給の老齢厚生年金」は繰下げできないため、手続きの案内が来たら請求申請しましょう。
4.2 収入が多いと年金が受け取れない
会社員で収入が高い場合、「特別支給の老齢厚生年金」の一部または全額が受け取れないことがあります。
この仕組みを「在職老齢年金」といいます。
具体的には、「老齢厚生年金の報酬比例部分の月額(加算を除く年金額)」と「総報酬月額相当額」が48万円を超えると、超過分の半額が支給停止になります。
総報酬月額相当額は、年収を12か月で割って概算できます。
自分で計算するのは難しいため、支給停止額を正確に知りたいときは、年金事務所に相談するなどしましょう。
4.3 失業保険を受け取ると年金が受け取れない
雇用保険の給付を受けると、「特別支給の老齢厚生年金」が支給停止されることがあります。
対象となる雇用保険の給付は、失業保険(基本手当)と高年齢雇用継続給付の2つです。
失業保険を受け取ると、年金は全額支給停止です。
高年齢雇用継続給付を受け取ると、受給額の約4割の金額が支給停止されます。
4.4 「長期特例」や「障害者特例」に該当すると年金が加算される
一定の要件を満たすと、「特別支給の老齢厚生年金」に「定額部分(老齢基礎年金相当額)」が加算される特例があります。
44年以上厚生年金に加入している人の特例を「長期特例」、所定の障害状態にある人の特例を「障害者特例」といいます。
上記に該当し、厚生年金に未加入の人(会社を辞めている人)に特例が適用されます。
5. まとめにかえて
「特別支給の老齢厚生年金」は、老齢厚生年金の支給開始年齢を60歳から65歳に段階的に引き上げるために設けられた経過的な仕組みです。
そのため、1961年4月2日以降に生まれた男性と1966年4月2日以降に生まれた女性は、「特別支給の老齢厚生年金」を受給できません。
該当する人は、65歳年金スタートを前提に65歳までの生活設計を事前に検討しておきましょう。
参考資料
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
- 日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」
- 日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」
西岡 秀泰