公的年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、受給開始を遅らせることで年金の増額が可能な「繰下げ受給」という制度が存在します。
現代では65歳以上のシニアが働くケースが増えていることから、この制度が重要視されています。
本記事では、繰下げ受給制度の解説と、厚生年金「月額15万円」を基準とした繰下げ受給額についてシミュレーションを行います。
年金制度の理解と老後資金の計画を立てる際の参考にご確認ください。
1. 老齢年金「繰下げ受給」とは?
老後に受給する公的年金の受給開始年齢は、原則65歳です。
しかし、65歳で年金を受け取らずに66~75歳の間で受給開始を遅らせることで、年金額を増額させる「繰下げ受給」を選択することができます。
繰下げ受給では、受給開始を66歳以降1ヶ月遅らせるごとに増額率が増えていきます。
1ヶ月ごとに0.7%、1年で8.4%受給額が増額。
本来の金額から、最大で84%も年金額を増やすことができます。
たとえば、65歳で受給を開始する場合の年金月額が10万だった場合、1ヶ月、1年、10年繰り下げることで、それぞれ受給額が下記のように増えていきます。
- 1ヶ月遅らせた場合:月額10万700円
- 1年遅らせた場合:月額10万8400円
- 10年遅らせた場合:月額18万4000円
受給開始をMAXとなる75歳まで遅らせると、年金月額は18万4000円まで増え、生涯にわたり増額された年金を受給することができます。
ここで気になるのが年金受給を待機している期間の収入です。
近年は定年退職制度の廃止や、定年年齢の引き上げにより、65歳以降も働くシニアが増えています。
働けるうちは働きたいシニアにとって利用を検討しやすい制度といえるでしょう。
2. 「厚生年金・国民年金」年金月額は平均いくら?
そもそも年金受給額が満足できる金額であれば、繰下げ受給をする必要はないかもしれません。
老後の年金月額はどのくらいあるのでしょうか。
厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金・国民年金の平均月額は下記のとおりです。
2.1 【厚生年金】
- 男女全体平均月額:14万3973円
- 男性平均月額:16万3875円
- 女性平均月額:10万4878円
2.2 【国民年金】
- 男女全体平均月額:5万6316円
- 男性平均月額:5万8798円
- 女性平均月額:5万4426円
上記のとおり、国民年金と厚生年金では受給額が大きく異なります。
国民年金は、全員一律の保険料(年度ごとに見直しあり)を納付するため、納付期間により受給額が決定します。
極端に未納がなければ受給額に大きな差はないでしょう。
一方、厚生年金は、現役時代の年収や加入期間によって受給額が大きく変動します。
男性と女性で6万円ほどの差が見られますが、個人差も大きいです。
なお、ご自身の年金見込額をより詳しくしりたい場合は、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」でご確認ください。