北朝鮮を巡る地政学リスクが後退、米雇用統計も好調
2018年3月9日の東京株式市場で、日経平均株価の終値は、前日より101円13銭高の21,469円20銭となりました。ザラバでは一時、上げ幅が500円を超えました。
大きなきっかけとなったのが、同日に、トランプ米大統領が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長の要請を受け、5月までに首脳会談を開催すると発表したことです。北朝鮮リスクが後退すると期待する買いが優勢となりました。
このほか、懸念されていた米政権による鉄鋼とアルミニウムの輸入制限については、メキシコ、カナダ、オーストラリアを対象から外す方向であることを明らかにしたことに加え、他の国に対しても交渉の余地を残しました。欧州や中国に対する厳しい姿勢は変えていないものの、市場では世界的な貿易戦争になるリスクは後退したと受け止められたようです。
9日には2月の米雇用統計が発表されましたが、非農業部門雇用者数が前月比31万3000人増と、市場予想(20万5000人増)を大きく上回りました。
これを受けて、同日の米国株式市場ではダウ工業株30種平均が前日比440ドル53セント高の25,335ドル74セントと大幅に続伸しました。また、ナスダック総合株価指数も約6週間ぶりに過去最高値を更新しました。
今週以降の動きはどうなるでしょうか。米株にとっては警戒感が後退したことから回復基調になりそうです。ただし、日本株も連れ高になるかと言えば楽観はできないところです。
大きな要因は為替相場です。対円のドル相場は、中期的にも下降トレンド(円高傾向)になっています。9日のニューヨーク外国為替市場で円相場は続落し1ドル=106円75~85銭で終えましたが、8日には一時、105円台半ばまで円高が進みました。このまま円高が進めば、輸出企業などの業績にも影響が出ます。
足元では年度末のため、機関投資家などの利益確定売りも出やすいこともあり注意が必要です。
200日移動平均線で反発するが、25日移動平均線で上値を押さえられる
先週の動きをテクニカル面から振り返ってみましょう。先週はローソク足の実体が短く、ヒゲが長い乱高下の動きでした。5日には一時、直近の下値めどである2月14日の安値(20,950円)を割り込みました。
そのまま下落すれば下降トレンドラインが形成されるところですが、下ヒゲを付け、200日移動平均戦にタッチしたあたりで反発し終値は回復。逆に6日は窓をあけて上昇しました。
その後は5日移動平均線に下値をサポートされて上昇。一時、25日移動平均線も上回りました。ただし、終値は25日移動平均線に上値を押さえられた形になりました。
25日・75日移動平均線を回復するようであれば目線は上に
今週の動きはどうなるでしょうか。まずポイントとしては、直近の下値めどである2月14日の安値(20,950円)を割り込まなかったことです。このことで、Wボトムの形になりました。今後の上昇が期待されます。
ただし、25日移動平均線を回復できなかった点は懸念されます。再び21,000円付近まで下落し、25日移動平均線との間でレンジのようになる可能性もあります。まずは25日移動平均線を回復できるかどうか確認したいところです。
直近の上値めどは2月27日の高値(22,502円あたり)になります。現在、その付近に75日移動平均線もあります。直近の下落傾向の中でも、週足は依然として上昇トレンドの中にあります。25日移動平均線、75日移動平均線の両方を回復するようであれば、目線は上に持っていいでしょう。
下原 一晃