2. 年金分割して専業主婦は生活できるか?
年金分割によって専業主婦が将来受け取る年金額は増えますが、それだけで生活できるでしょうか。
まずは、モデルケースを使って妻の年金額をシミュレーションします。
- 夫婦の婚姻期間は20歳から60歳
- 婚姻期間中は夫が会社員で妻が専業主婦(40年間第3号被保険者であった)
- 60歳時点の保険料納付状況による年金額は夫が200万円、妻が80万円
61歳で離婚し按分割合50%で年金分割した場合、それぞれの年金額は約140万円(月額約11万7000円)です。
年金分割によって年金額は60万円アップします。
婚姻期間がモデルケースより短ければ、妻の年金額は140万円より少なくなります。
次に、老後の支出について考えましょう。
老後生活の支出金額は一人ひとり異なりますが、総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)」によると、65歳以上の単身無職世帯の1か月の平均支出金額は約15万5000円です。
元専業主婦が離婚して上記の年金収入(月額約11万7000円)を得て平均的な支出(約15万5000円)を行った場合、毎月の家計収支は3万8000円の赤字です。
そのため、老後資金を貯める、働いて収入を得る、支出を抑えるなどの対策が必要になります。
3. 年金分割できても老後生活が安泰とは言えない
専業主婦が熟年離婚した場合、年金分割によって年金額がアップします。
年金分割できるのは離婚後2年以内と限定されるため、忘れずに手続きしましょう。
また、合意分割より3号分割の方が不利になるケースがあるため注意が必要です。
年金分割によって年金額アップしても老後生活が安泰とは言えません。
離婚時には老後の家計収支を試算して、安定した老後生活を送れるように対策しましょう。
参考資料
- 日本年金機構「離婚時の年金分割」
- 日本年金機構「離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)」
- 日本年金機構「離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)」
- 日本年金機構「報酬比例部分」
- 総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)」
- 厚生労働省「人口動態統計速報(令和5年(2023)12月分)」
西岡 秀泰