2024年2月27日に公表された厚生労働省「人口動態統計速報(令和5年(2023)12月分)」によると、婚姻件数は48万9281組で減少しました。一方、離婚件数は18万7798組で増加しています。

昨今では熟年離婚が増えていると話題になったりしますが、気になるのは老後の生活です。

特に、国民年金しか加入していなかった専業主婦は年金額が少ないため、老後に不安を感じる人もいるでしょう。

この記事では、61歳で「息子の独立を機に熟年離婚」を検討している女性について、離婚後の年金という観点から解説します。

専業主婦の老後生活についても紹介しますので、離婚を検討中の方は参考にしてください。

1. 離婚時の年金分割制度

公的年金制度において、離婚する場合に忘れてはならないのが年金分割制度です。

制度内容や分割方法、分割によるメリットなどを紹介します。

1.1 年金分割とは

年金分割とは、離婚時に老齢厚生年金額の計算基礎となる標準報酬(厚生年金の保険料納付記録)を分割するものです。

妻が専業主婦の場合、年金分割によって夫の年金額が減り、妻の年金額が増えるのが一般的です。

ただし、年金分割によって金額が変わるのは老齢厚生年金のみで、老齢基礎年金額については変わりません。

1.2 分割するのは婚姻期間中の厚生年金の標準報酬

年金分割によって夫婦間で分割するのは、婚姻期間中の厚生年金の標準報酬(厚生年金の保険料納付記録)です。

標準報酬は、毎月の給与を基に算出した「標準報酬月額」と、賞与を基に算出した「標準賞与額」の2つがあります。

標準報酬を使って計算した厚生年金保険料を支払うことによって、標準報酬を使って計算した老齢厚生年金を受け取ります。

標準報酬が高いほど厚生年金保険料は高くなり、老齢厚生年金額も多くなる仕組みです。

そのため、夫が会社員で妻が専業主婦の場合、夫は標準報酬に基づいた老齢厚生年金が受け取れるのに対し、妻は老齢厚生年金を受け取れないため、夫と比較して年金額が少なくなります。

この夫婦間の格差を埋めるのが年金分割制度です。

年金を含め「婚姻期間中に獲得した財産は夫婦の共有財産」という考え方により、年金分割によって婚姻期間中の標準報酬を分割します。

その結果、夫が将来受け取る老齢厚生年金は少なくなり、妻の年金額が増えます。

1.3 合意分割と3号分割

年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。

合意分割は2人の合意により婚姻期間中の標準報酬すべてを一定割合で分割します。

一定割合のことを按分割合といい、50%とするのが一般的です。

3号分割とは、国民年金の第3号被保険者であった者(2008年5月1日以後に離婚した場合に限る)が相手の合意なしに年金分割できるものです。

ただし、分割できるのは、2008年4月1日以後の第3号被保険者期間中の配偶者の標準報酬に限られます。

専業主婦にとって3号分割は、相手の同意なく年金分割ができるメリットがある一方、分割される標準報酬が限定され損をする可能性もあります。