米国株が大幅下落〜要人の発言をきっかけに

2018年3月2日の東京株式市場で、日経平均株価の終値は、前日より542円83銭安の21,181円64銭となりました。

きっかけは2つ。いずれも要人の発言です。2月27日には米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル新議長による就任後初の議会証言が行われました。パウエル氏は、米国の景気の見通しは依然として強く、さらなる段階的な利上げが雇用や物価の目標達成のために最適と述べました。

FRBはこれまで、イエレン前議長のもと、慎重で緩やかな利上げという方針を守ってきました。パウエル氏もこの方針を引き継ぐと見られていましたが、予想とは逆に、むしろ「タカ派」寄りの発言が出たことから、利上げを加速すると解釈され、米長期金利が上昇しドルが買われ、株が売られました。

結果、27日のダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反落し、前日比299ドル安となりました。

米株安に追い打ちをかけたのがトランプ米大統領の発言です。トランプ氏は1日、鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課し、輸入制限を行うことを表明しました。

鉄鋼の輸出国である中国などとの貿易摩擦につながり、米企業の業績にも影響が出るとの見方から株が売られ、1日のダウは前日比420ドル22セント安の24,608ドル98セントと2月12日以来の安値となりました。ダウは翌2日も売られ、4日続落しました。

今週以降の動きはどうなるでしょうか。米国の保護主義的な措置が引き続き懸念材料になりそうです。中国をはじめ世界の貿易や経済を停滞させる可能性があり、日本企業の業績にとっても悪影響になります。

欧州連合(EU)やカナダは関税措置をかけられれば対抗措置を取ると表明しています。中国の鉄鋼業界も強く反発しています。米国が輸入制限を発動すれば36年ぶりになります。実際に発動されるかどうかはわかりませんが、しばらくは予断を許さない状況であり、注意が必要です。

25日移動平均線で上値を押さえられて再び下落

先週の動きをテクニカル面から振り返ってみましょう。週初の26日は窓をあけて上昇し、5日移動平均線を回復しました。翌27日も窓をあけて上昇。ローソク足の実体は短いものの、直近の上値めどである2月19日の高値(22,152円)を上回り、さらに、約1カ月ぶりに25日移動平均線に到達しました。

しかし、翌28日からは25日移動平均線に上値を押さえられて下落。5日移動平均線も割り込みました。

直近の上値・下値をともに超えず。しばらくもみ合う展開か

今週の動きはどうなるでしょうか。1日、2日と窓をあけて大きく下落したのは懸念されるところです。

ただし、ここからつるべ落としのように下落するとも考えにくいところです。まずポイントとしては、大きな下落にもかかわらず、直近の下値めどである2月14日の安値(20,950円)を割り込まなかったことです。

足元の下落傾向の中でも、週足は依然として上昇トレンドの中にあります。押し目の下限がこの21,000円あたりで、200日線にも重なっています。

さらに、直近の上値めどである2月19日の高値(22,152円)を上回ったことで、日足の下降トレンドが崩れてしまいました。日足が再度下降トレンドになるには2月14日の安値を更新する必要があります。

その点では、現状は直近の上値めど(22,500円あたり)と下値めどにはさまれた、レンジ相場といった局面にあります。しばらくはもみ合う展開になるかもしれません。週足は上昇トレンドにあることから、下値のサポートが確認できれば、押し目買いの好機にもなりそうです。

下原 一晃