2. 年金だけでは月2万円以上の赤字に
総務省が集計する家計調査年報によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯で1月あたり2万2270円、単身世帯では2万580円不足するという結果となっています。
仮に30年間、95歳まで生きるとすると、65歳~95歳の間の生活費だけで、夫婦二人なら802万円、単身なら741万円足りない計算です。
さらに、介護費用まで想定すると不足額はもっと拡大します。
令和3年の生命保険文化センターの調査によると、介護費用の平均は一時的な費用が74万円、月々の費用が8万3000円です。
平均の介護期間が61.1ヶ月であるため、一人あたりの平均的な介護費用はおよそ581万円となります。
もし夫婦二人なら1162万円必要です。
以上を合計すると、平均的な生活のためには、夫婦二人で1964万円、一人世帯なら1322万円の資産形成をしなければなりません。
3. 老後に向けた備えのポイント
多くの方が老後に不安を抱えるなか、金融資産を築いた人、準備を進めている方のほうが、不安を感じている方が少ないことがわかりました。
ゆとりある老後生活のためには、早い内から貯蓄や資産運用を進めておくことが大切です。
3.1 貯蓄を習慣づけるのが第一
早いうちから家計収支をプラスにして、余剰資金を蓄える仕組みを形成しましょう。
貯蓄にせよ投資にせよ、継続的に資金を拠出して蓄えを増やしていかなければ資産形成はできません。
若いうちから資産形成を始めるほど、月々の貯蓄に回す金額が少なくても大きな資産の形成が可能です。
老後を見据えて、年金だけでは足りない金額を埋められるよう、少しでも早くから家計収支をプラスにして、資産形成を始めましょう。
3.2 iDeCoや新NISAで賢く資産形成を
さらに資産を増やすペースを早めたいなら、iDeCoや新NISAを活用して長期投資にチャレンジしましょう。
投資には不確実性が伴うため、必ず資産が増えるとは限りません。
しかし、一般に長期で投資するほどリターンが安定するため、単純な投資元本より資産を増やせる可能性が高くなります。
iDeCoなら、投資期間中の収益に対する課税がない分、効率良く資産形成が可能です。
60歳まで引き出せないため、うっかり売却して使ってしまう心配もありません。
また、新NISAは総額1800万円(元本)まで、本来投資の収益に対してかかる所得税・住民税が非課税となる制度です。
こちらも、20.315%の税金がかからない分だけ効率よく資産を増やせます。
4. まとめにかえて
「老後が非常に心配」と回答した人は45.3%、「多少心配である」と回答した人は32.6%もいます。
一方、それほど心配していない人にその理由を聞いた設問では、年金や保険で充分な生活資金を維持できる、もしくはすでに充分な金融資産を築いている方が多くを占めました。
ゆとりある老後のために潤沢な資産を形成したいなら、かしこく制度を活用して、早い内から始めるのが有効です。
参考資料
- 知るぽると「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)「1. 金融資産の状況等」」
- 総務省統計局「家計調査年報(2022年)」
- 生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査(速報版)」
太田 彩子