貯金と年金で生活している人たちは、最近の物価の変動は日々の生活の悩みの種ではないでしょうか。
政府は支援策として、電力・ガス・食料品等などの価格高騰に対応するための緊急支援金の給付を進めています。
この支援金の対象としてよく言及されるのが「住民税非課税世帯」です。そしてこの「住民税非課税世帯」のうち高齢者の割合が高くなっています。
そこで今回は70歳代における「住民税非課税世帯」の割合を確認するとともに、彼らの貯蓄額も確認してみましょう。
1. 「住民税非課税世帯」とは?対象者は?
「住民税非課税」とは、文字通り「住民税が課税されていない」状態をさします。
住民税は前年の所得をもとに決定されるため、「今は稼いでいても昨年は無職だった方」「収入は低いが資産は多い方」が該当することもあります。
なお、住民税は「所得割」と「均等割」から成ります。
生計を一にする家族全員が所得割と均等割の両方が課税されない場合に、その世帯は「住民税非課税世帯」となります。
住民税非課税世帯には該当しないものの、住民税の均等割のみ課税となる低所得世帯にも10万円の現金給付が進められています。
2. 住民税非課税になる年収の目安はいくら?
住民税非課税世帯になる条件は、自治体によって異なります。
ここでは参考までに、東京23区の「所得割」と「均等割」が非課税になる条件を見ていきましょう。
- (1) 生活保護法による生活扶助を受けている方
- (2) 障害者・未成年者・寡婦又は寡夫で、前年中の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合は、年収204万4000円未満)の方
- (3) 前年中の合計所得金額が下記の方
<同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合>
35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下
<同一生計配偶者及び扶養親族がいない場合>
45万円以下
前年の合計所得金額が45万円以下であれば、扶養家族の有無にかかわらず非課税になるといえます。
ここで言う合計所得金額は、年収とは違います。
所得はそれぞれの要因によって決まるため、一概に「年収いくら」とはいえません。
例えば東京都板橋区の場合では、次のとおり提示されています。
パートやアルバイトの給与収入(複数の勤務先があれば、その合計の金額)が、100万円以下(合計所得金額45万円以下)の場合、住民税は非課税です。
また、前年中に障害者控除・寡婦(ひとり親)控除・未成年の適用があった場合、給与収入が2,043,999円以下(合計所得135万円以下)であれば非課税です。
このように、住民税非課税になる年収は居住地や収入の種類、家族構成等複数の要素によって決まるため、くわしくは自治体のホームページや窓口などで確認してみましょう。
3. 70歳代は35%が「住民税非課税世帯」に該当
住民税非課税世帯になる要件を確認しましたが、高齢者世帯における住民税非課税世帯の割合が高い傾向にあるようです。
厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」によると、年代別の住民税非課税世帯の割合(全世帯に占める住民税非課税世帯の割合)は次の通りとなりました。
- 60歳代:19.2%
- 70歳代:34.9%
- 80歳代:44.7%
- 65歳以上:35.0%
- 75歳以上:42.5%
年代が上がるごとに住民税非課税世帯の割合が増えているのが見てとれます。
また住民税非課税世帯を母数とした場合、70~79歳が占める割合は37%、80歳以上が占める割合は29%です。
年金収入が少ない場合、労働収入を得るという選択肢が浮かびますが、70歳代、80歳代になると健康面や体力面においてそれも難しくなるでしょう。
しかし、住民税非課税世帯だからといって必ずしも生活が苦しいとは限りません。
住民税非課税世帯の条件には「金融資産保有額」が含まれませんので、貯蓄があれば取り崩して生活費にあてることが可能です。
70歳代の貯蓄事情について、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和4年)」から見ていきましょう。