アップルとインテルの「パフォーマンス低下問題」

今春からの進学や就職を控え、パソコンやスマホの購入を検討中の方も多いと思います。そうしたなか、昨年末から年初にかけて、こうした機器に関連する2つの「パフォーマンス低下問題」という気掛かりなニュースがありました。

まず、昨年12月に明らかになったのは、iPhone 6など電池が劣化した旧機種において、アップルがCPU処理速度抑制(スロットリング)を行っていた問題です。

続いて話題となったのは1月初め、インテルのCPUにセキュリティ上の問題が存在し、その解決のためにパソコンやサーバーなどのパフォーマンスに遅延が生じる可能性があるというニュースです。

この2つの問題は全く別ものです。ただ、テクノロジーにあまり詳しくないと、「最近、パソコンやスマホの処理速度が落ちることが問題となっているから、少し買い控えたほうがいいのかもしれない」と感じる場合があるかもしれません。

そこで今回は、これら2つの問題に関してのおさらいと、押さえるべきポイントについて整理をしたいと思います。

アップルは電池交換とiOSの更新で対応

まず、アップルから。同社は現在、保証期間が過ぎている場合でも、2018年12月末までiPhone 6以降のバッテリー交換費用を通常の8,800円から3,200円に値下げしています。

先述のように、昨年末、同社は電池が劣化した時に急に電源が落ちることによる不便さを避けるために、旧機種においてスロットリングの機能をソフトウエアに組み込んでいたことを明らかにしました。

それに対しユーザーから、”陳腐化したように見せかけて買い替えを促すためだ”という批判が殺到したことが、こうした措置を行う理由です。

ただ、リチウム電池の経年劣化は避けられないことであり、電源が突然、完全にシャットダウンしてしまうよりもパフォーマンスが落ちるほうが緊急事態でも対処できるといったメリットもあることなどから、「スロットリング」という対応策は、アップルに限らずパソコンなどでも取り入れられている方式です。

これらをを考慮すると、アップルが買い替えを促すためにスロットリングを取り入れたという”陰謀説”にはやや無理があることになります。とはいえ、テクノロジーに詳しくない一般消費者にそのことを十分に周知徹底しなかったという点では批判は免れないのかもしれません。

そこでアップルは、そうしたコミュニケーション不足を反省し、2017年12月28日に「A Message to Our Customers about iPhone Batteries and Performance」という謝罪文をホームページに掲載し、上述の電池交換費用の値下げによる対応策を発表しています。

加えて、18年春にリリース予定の基本ソフトのニューバージョン(iOS 11.3)により、バッテリー劣化状況の表示を追加し、さらにユーザーがシャットダウンを防ぐための速度抑制を望むか否かなどを選べるようにすることも表明しています。

こうした動きから、アップルがこの問題に対してユーザーに真摯に向き合おうとしていることが理解できますが、いずれにせよバッテリーの経年劣化は現在のテクノロジーでは不可避であるという点には注意すべきです。

よって、まず押さえるポイントは、よほどバッテリーに大きな技術的なブレークスルーがない限り、処理速度の低下による懸念から買い控えることには意味がないということになります。また、同じスマホを長く使い続けたいのであれば、電池交換を定期的に行うこと以外に根本的な対策はないとも言えます。

余談ですが、旧機種をお使いの方で、現状でバッテリーに大きな問題がないのであれば、値下げキャンペーン期間の最後まで使い続けることが得策であるということになるでしょう。

個人レベルでの影響は限定的なインテルのセキュリティ問題

次にインテルです。同社の株価は1月3日(現地時間)、CPUにセキュリティ上の重大なバグ(欠陥)が見つかったという報道により急落しています。

急落のきっかけとなった報道は、イギリスのコンピュータ系情報サイト「The Register」によるものす。その報道によると、対策はハードウェアかOS(基本ソフト)で行うことが必要となるが、後者だけで行った場合には大幅な性能低下を引き起こす可能性があると示唆されています。

このニュースだけを見た方は、アップルのスマホのみならずインテルが入ったパソコンも遅くなるのか、と心配されたかもしれません。しかし、その後この問題はインテル製CPUだけの問題ではないことが明らかになっています。

ちなみにインテルは、すでにこの問題を軽減するためのソフトウェアおよびファームウェアアップデートの提供を開始しています。

また、インテルでは、「パフォーマンスの低下は負荷に比例するものであり、一般ユーザーの場合、さほど大きなものとはならず、やがて緩和されるはずだ」という趣旨のコメントも発表しています。

このため、データセンターや企業、官庁などの大規模ITシステムの運用者にとっては、この問題は引き続き対応が必要となりますが、個人レベルでは当面はあまり重大な問題にはならなさそうです。

とはいえ、OS等のアップデートは定期的に行う、パスワードを頻繁に変える、不審なメールは開かない、などの一般的なセキュリティ対策には十分に注意を払いたいところです。

まとめ

結論としては、今回の2つの問題では「買い控えなくていい」ということになります。ただし、パソコンやスマホは、日常生活で水道や電気と同じようになくてはならない存在となっているため、引き続き、セキュリティやパフォーマンスの問題については注視していきたいと思います。

LIMO編集部