厚生労働省が2024年1月10日に発表した「生活保護の被保険者調査(令和5年10月分概数)」によると、2023年10月の申請件数は2万900件で、2022年10月の申請件数に比べて1200件増加しました。
生活保護を受けようとする人が増えるにつれて、申請や手続き方法で誤解をしている人も見受けられます。
今回は、生活保護でよく誤解されるケースについて解説します。
1. 生活保護の要件
生活保護は、世帯の資産や能力、その他あらゆるものを活用しても生活ができないと判断された場合に適用されます。
活用する項目は、以下の4つです。
- 資産の活用:預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等
- 能力の活用:働ける場合はその能力に応じて働く
- あらゆるものの活用:年金や給付金といった公的な支援
- 扶養義務者の扶養:親族等から援助
上記の項目を利用しても保護が必要とみなされた場合に、生活保護が受けられます。
最低生活費として厚生労働大臣が算出した毎月必要な費用のうち、年金や児童扶養手当などの収入分を差し引いた額を、保護費として支給します。
生活保護の申請はお住いの福祉事務所で申請できますが、手続きの前後でよく誤解されている項目について確認しましょう。
2. 生活保護の申請でよくある誤解
生活保護の申請で誤解されがちな項目をケースごとに5つ解説します。
2.1 書類が揃っていないと申請できない
書類がそろっていないと申請できないと思われがちです。
しかし、生活保護の申請は、必要な書類がすべて揃っていなくても実施できます。
まずは、近くの福祉事務所に相談してください。
2.2 離れた親族に照会されることはない
生活保護を利用する前に、扶養義務者に援助できないか照会します。
これは「扶養義務者からの扶養は保護を優先する」ためです。
そのため、たとえ離れた場所に居住していたとしても、扶養義務者には生活保護の申請をしている事実や、援助をお願いできないかの連絡が入ります。
民法上の扶養義務者は、3親等までの親族が対象です。
- 1親等:父母や子ども
- 2親等:兄弟や祖父母、孫
- 3親等:おじ、おば、甥、姪
そのため、上記の項目に連絡されます。
こうした照会を嫌って生活保護の申請を取りやめる人も多いです。
ただし、親族の中には「扶養を期待できない」例を示しています。
以下の項目に当てはまる扶養義務者には、照会されないケースがあります。
- 未成年
- 70歳以上の高齢者
- 10年程度の音信不通
- 借金をしている
まずは照会をする人がいるのかどうか、福祉事務所で相談してください。
2.3 親族に許可を得ていないと申請できない
親族に許可を得ていなくても申請は実施できます。
申請手続きを実施してから、親族や扶養義務者に連絡をする流れです。
2.4 家や車は手放さないといけない
一般的に、家や車は資産の活用となるので、売却して生活費に充てる必要があります。
しかし、家や車は以下のように処分されず生活保護を受けられる特例もあります。
- 家屋:居住用の持ち家であれば保有が認められる場合がある
- 車:通勤用の自動車を持ちながら求職している場合は保有を認められる場合がある
特例制度が適用されるかは、福祉事務所の判断になります。
2.5 生活保護でもらったお金は自由に使える
生活保護費として受け取ったお金は、自由に使えません。
生活保護として支給されるお金は、明確に使いみちが決まっています。
健康の増進や節約を図ることが義務付けられているため、以下のような使い方は認められていません。
- 無駄使い
- 用途以外の使用
- 自動車の借用
- 借金
使いみちを本来の生活費に使っていない場合や、福祉事務所からの指示や指導を受けていても従わない場合は、生活保護を受けられない可能性があるので注意しましょう。