2018年2月5日に行われた、日本水産株式会社2018年3月期第3四半期決算説明会の内容を書き起こしでお届けします。IR資料

スピーカー:日本水産株式会社 取締役常務執行役員 山本晋也 氏

2018年3月期 第3四半期決算

山本晋也氏(以下、山本):日本水産の山本です。本日はお忙しいところ、ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

時間も限られていますので、早速ですが、決算短信補足資料に基づきまして、私から20分程度かけてご説明したのち、ご質問にお答えしていきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

2018年3月期 第3四半期決算 総括

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それでは決算短信補足資料の1枚目です。

ご覧のとおり、当四半期につきましては、売上高は(対前年同期比)475億円の大幅増益でした。また、各段階損益についても過去最高益ということで、とくに最終損益については、前年比40億円、32パーセントの増益となっています。

後ほど触れますけれども、原材料などの値段に不安定な要素があるものの、年間予想については概ね順調に推移していると考えています。

2018年3月期 第3四半期決算 セグメント別概況

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めくっていただきまして、スライド3ページになります。

各事業別に売上高と営業利益がブレークダウンされていますけれども、為替の影響が大きくありまして、売上高につきましては水産・食品事業とも大幅に増収でした。利益につきましては、水産は大きく増益でしたが、その他については後ほど触れますが、食品・ファインケミカル事業ともに減益でした。

主な営業利益増減要因

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次のスライドです。営業利益の主な増減について、ウォーターフォールのかたちで整理をしています。

第2四半期でも同じ説明をしていましたが、南米の鮭鱒事業が販売価格(上昇)が非常に堅調に推移して、養殖成績も良好でしたので、非常に大きく対前年比増益でした。ご覧のとおり、56億円の増益でした。

加えまして、北米欧州も改善もしくは拡大してまいりまして、増益ですが、日本においては、業務用調理冷凍食品や常温食品において、水産原料の確保、(価格)高騰などが影響しています。

あるいは、水産事業においての油飼飼料関係のコストアップもありました。あるいは、ファインケミカル事業で先行投資……これも第2四半期でもご説明申しましたけれども、新工場の新設に伴う償却費負担、あるいは、今年度は通販を拡大しようということで、広告宣伝費の投入などを行ってまいりましたので、国内については減益になっています。

連結損益計算書(前年同期比)

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損益計算書です。

以上を総合いたしますと、営業利益段階は先ほど申し上げたとおり18億円、10パーセントの増益でした。最終損益は有価証券の売却を実行している関係もありまして、40億円の増益になっています。

有価証券の売却益は表の特別利益のところの主な増減要因に書いてありますけれども、41億円含まれています。

連結貸借対照表(前期末比)

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それから6スライド目、バランスシートです。

総資産が5,000億円を若干超えました。前期末比で482億円の増加をしていますが、主要因として流動資産でして、売上が好調に推移したことで受取手形および売掛金が200億円程度(増加)。

それから棚卸資産が、魚価が高いということもありまして、100億円程度増えているという状況です。この2つを合わせて300億円増えているということになっています。

連結キャッシュフロー(前年同期比)

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めくっていただきまして、キャッシュフローです。

キャッシュフローは、今申し上げた在庫、それから売掛債権などの膨らみがありまして、営業活動によるキャッシュフローは108億円になりました。前期は166億円でしたので、若干営業キャッシュフローが運転資本に食われたという状況です。

連結借入金・純金利負担

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こちらが借入金の増減に影響していまして、次のスライドをご覧いただきますと、借入金が前期末比で申し上げれば134億円増加しています。短期(借入金)で180億円増え、長期(借入金)で48億円減り、ネットして134億円の増加でした。

水産事業

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次からのスライドが、各事業別に少しブレイクダウンしたものになります。

9スライド目は水産事業の連結全体ですが、南米の鮭鱒事業の大幅な好転……冒頭申し上げたとおりですが、こちらの好転によりまして増収増益。売上高については240億円、12パーセントの増収。営業利益は37億円、56パーセントの増益でした。

右側の折れ線グラフはいつもご覧いただいていますけれども、これまで右肩上がりできましたが、年の後半、(2017年)10月ぐらいから、少しずつ価格調整局面に入ってきたかなと見ています。

写真はニッスイグループの黒瀬水産が世界初のブリASC認証を取得いたしましたので、そちらについても、若干触れておきます。

水産事業 売上高・営業利益(前年同期比)

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それから10スライド目です。

こちらは水産事業を、さらにブレイクダウンいたしまして、漁業、養殖、加工・商事、ニッスイ個別で表しているグラフです。一番左端の漁業については今年は非常に苦戦をしています。

とくに日本は、価格の高い魚がなかなか取れない。ブリがなかなか取れず、イワシが主流になっていまして、漁獲的には非常に厳しい状況です。そこに加えまして、修繕費や新船の償却費などが発生しています。

もう1つ、同じ漁業のグラフのうち赤色で表示しているのは、南米のチリにおいての漁業で、こちらも大変苦戦している状況です。

それから、その隣の養殖のグラフのうち、濃いブルーは冒頭申し上げた南米チリの鮭鱒(トラウト)の養殖事業です。

それ以外の養殖事業、国内の養殖事業は、ブリについても順調ですし、境港で行なっている銀鮭の養殖につきましても、鮭の価格がよかったことも加えまして、順調に推移したました。その一方、まぐろの価格が下落していまして、若干苦戦しているという状況です。

それから加工・商事関係。昨年は非常に苦戦をいたしました北米のスケソウダラ事業。スケソウダラを加工する事業ですが、ここは助子(スケソウダラの卵)の(売上高)増収と労務コストの削減の効果が出てまいりまして、増益となっています。

欧州は、後ほど出てくる食品事業と合わせまして、非常に順調に推移している状況です。

右下の破線で囲っているところは、毎年ご覧いただいていますチリの鮭鱒養殖業の在池魚の評価です。昨年もあまり(影響は)ありませんでしたけれども、当年度の損益にも大きな影響はありません。ブルーで表示しているのが、その損益です。

黄色がいわゆる通常の営業活動で出てきた損益ですので、今年はやはり販売価格に支えられたという状況です。

水産事業 ニッスイ個別(前年同期比)

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めくっていただきまして、11スライド目、ニッスイの個別です。

ご覧のとおり、売上高は左側の折れ線グラフになりますけれども、赤が昨年、グリーンが今年ですが、それほど大きな違いはありません。

ただ、損益的に見ると、左下に営業利益の四半期ごとのグラフがありますが、第3四半期あたりから……第2四半期も若干ですけれども、少しずつ原価が上がってまいりまして、少し苦戦している状況です。

食品事業

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食品事業。12スライド目です。

連結全体の食品事業を見た場合は、欧州の冷凍食品会社が非常に堅調でした。日本においても、家庭用冷凍食品・魚肉ソーセージ(の販売)は順調でした。

ただ、冒頭申し上げたとおり、業務用冷凍食調理品および常温食品は、缶詰・瓶詰等々の水産原料の不足の影響がありまして、222億円の増収であるものの、営業利益は6億円の減益になっています。

食品事業 売上高・営業利益(前年同期比)

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めくっていただきまして、(水産事業)同じように食品事業をブレイクダウンして、加工とチルドとに分けています。

それぞれ(対前年同期比で)減益になっています。さほど大きくはないのですが、少しずつ減益という状況です。

まず、左端の加工です。昨年はここも苦戦をいたしました。北米の家庭用冷凍食品につきましては、為替の影響もありまして、大幅な増収です。あわせて販管費の見直しなどもあり、増益になりました。

一方、業務用冷凍食品の会社は、増収ではありますが、えびの主原料の上昇によりまして、減益になっています。

欧州については、非常に堅調に推移しています。既存のカテゴリの順調な拡大と、それから成長カテゴリー……野菜などを中心とした成長カテゴリーへの取り組みが寄与いたしまして、大きく増益になっています。

それから、チルドは、コンビニエンスストア向けの惣菜類や調理麺などの販売ですけれども、売上高はお取扱い(先)を拡大いたしまして、非常に堅調に推移したのですが、これも第2四半期までに申し上げたとおり、生産の段階でややトラブルがありまして、コストアップになってしまった影響が、まだ少し残っている状況です。この影響などもありまして、減益となっています。

ニッスイ個別も先ほど申し上げたとおりです。水産原料の不足、それから販売競争の激化、販売コストの増加も影響していまして、若干の減益という結果です。

食品事業 ニッスイ個別(前年同期比)食品事業 ニッスイ個別(前年同期比)

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14スライド目は、ニッスイ個別だけを取り出したときのグラフです。

この第3四半期の左側の棒グラフをご覧いただきますと、第1・第2はともかく、第3で少し減益幅が広がっている状況です。とくに水産原料の不足が影響した四半期でした。

右上は水産原料不足となった記録的な不漁魚種ということで、秋サケ……北海道で取れる鮭ですが…こちらについての、この3ヶ年の数量の減り具合(のグラフです)。

それから単価の推移。非常に見づらいのですが、一番上のグリーンの折れ線が今年の単価でして、いかに数量が少なく単価が上がってきているかということが、ご覧いただけるのではないかと思います。この秋サケは写真に出ています「焼きさけあらほぐし」という、私どもの瓶詰めの商品に使われている原料です。

これに加えまして、いかは世界的に不漁ですが、いかの原料が不足しているということも、大きく影響している状況です。

ファインケミカル事業

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めくっていただきまして、15スライド目、ファインケミカル事業です。

ファインケミカル事業は新工場の償却費や通販の拡大に、意図してコストを使っているということがありまして、昨年に比べると減益です。グループにつきましても、診断薬などで販売が順調に推移しているのですが、製造原価コストなどが上昇していることもありまして、減益ということです。

ファインケミカル事業は、売上はほぼ横ばいながらも、営業利益は18億円の減益という状況です。右下に出ているのはインフォームドチョイスの認証を取得……とくにスポーツ、オリンピック選手などもそうなのでしょうけれども……ドーピング物質を含んでいないということが認められている商品ということで、私どもの「ウルトラ・ピュア」のEPA(エイコサペンタエン酸)が認められたということです。

物流事業

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それから物流事業。

こちらも第2四半期までと大きく変わっていません。非常に荷が安定して出入りいたしまして、昨年新設した大阪の舞洲の物流センターに加えまして、既存冷蔵庫(の入庫量)も非常に堅調に推移して、増収・増益です。堅調な事業かと思います。以上が第3四半期までの状況です。

2018年3月期 通期見通し セグメント別概況

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17スライド目以降が、残り3ヶ月踏まえまして、一部修正をしました売上(見通し)です。

売上については、今まで6,560億円で計画を出していましたが、6,770億円ということで、210億円の増収で通期の見通しを変更しています。内訳はご覧のとおりです。水産・食品事業ともに非常に堅調に推移していることがありまして、売上を修正しています。

一方、利益はで増減が多少ありますけれども、おおむね順調に推移しているということで、期初当初の240億円、総額は変えていません。ご覧のとおり、水産・食品・ファインケミカル・その他事業等々で、多少増減が見られますけれども、大きな増減はありません。

2018年3月期 第4四半期のポイント

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第4四半期のポイントです。

今まで申し上げてきた市況変動のリスク、やや鮭鱒を中心に価格の上昇局面から少し調整局面に入ってきたこと。それから水産原料が不足したり、コストアップなどがそろそろ出はじめてきていますので、少し不安要素は残っているのですが、利益については期初の計画を変更していないという点が、この第4四半期(のポイント)です。

何をするかということについて、今までとそれほど大きな変更はありません。水産事業につきましては在庫の管理。回転をあげて、価格下落リスクをヘッジしてまいります。それから産地加工。養殖場の近いところで加工して、加工度を上げることで、しっかりと単価(の維持)、利益を取っていくという戦略であります。

北米は引き続き、労務コストを削減し、年を明けてから既に動きはじめていますけれども、新生産ラインの稼働に向けてしっかりと進めてまいります。欧州は販売エリアの拡大を継続するとともに、先ほど申し上げた新規ビジネスの拡大を引き続き、行ってまいります。

それから食品事業。こちらはやはり、原料事情が非常に厳しいですので、販売価格の改定なども含めて、検討してまいります。それからチルドと焼きおにぎりラインは、非常に生産がタイトになっていますので、生産能力の増強についても進めてまいります。

欧州は第2四半期にも申し上げたとおりですが、5工場体制になりましたので、この本格的な増産体制をしっかりと回して、チルド関係の食品・野菜関係の食品を販売してまいります。北米については引き続き、生産コストの削減、価格改定なども含んで、進めてまいりたいと思います。

ファインケミカル事業は、年明け(2018年)1月20日過ぎから本格稼働を開始しました鹿島医薬品工場とつくば医薬品工場の最適生産体制をきっちりと確立してまいります。それから機能性原料については、国内が非常に堅調ですので、海外への拡大をより図ってまいりたいと思います。機能性食品については広告費をより効率的に使って、新規顧客を獲得してまいります。

水産事業の打ち手

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次のスライド以降は、各事業のもう少しイメージを付けさせていただいています。

高付加価値というのは、やはり加工度の高い商品ということで、食材化・加工機能の増強ということで、何点か事例を出しています。例えば、いわしの生姜煮であったり、寿司ネタの拡充であったり、境港サーモンをマリネにするなど、加工度を高めていくようなこと。このような事業も進めてまいります。

欧州での事業は左下です。デンマーク、この辺りを中心に拡大してまいりますけれども、その新規ビジネスというのは、例えば、クルーズに対する食材の提供です。クルーズは非常にビジネスが拡大していますので、クルーズに食材を提供するというビジネスの拡大です。養殖事業については魚種を拡大するとともに、日本発で世界にも展開できればと考えています。

食品事業の打ち手

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食品事業はやはり変化に対応して、新しい価値を常に提供していくということになろうかと思いますけれども、好調なカテゴリーでさらなる拡販ということで米飯類、チキン関係、このようなものも、扱ってまいります。生産機能の拡充ということで、先ほども少し申し上げましたけれども、おにぎりラインの増強。それから欧州の増強もより一層本格的に進めてまいります。

それから健康訴求商品群。エパプラス、EPA+だけではなく、それ以外の野菜を中心としたものも含めて、より健康訴求の商品群の拡充を図ってまいります。

ファインケミカル事業の打ち手

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ファインケミカル事業は先ほど申し上げたとおりです。医薬品工場が本格稼働いたしますので、これをしっかりと運営してまいります。

中期経営計画 MVIP2017①

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22スライド目は、2018年3月期の修正計画は先ほど申し上げたとおり、(売上高は)6,770億円で、240億円の(増収)、営業利益は変えていません。当初の中期経営計画は売上高6,800億円、営業利益230億円でしたので、(中期経営計画を)若干上回る見込みを現段階でも組んでいくということです。

中期経営計画 MVIP2017②

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めくっていただきまして、23スライド目はこれまでの経過です。ご覧いただければと思います。

ニッスイグループこの1年の主な動き

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24スライド目はこの1年間の各事業、もしくはCSRに関連すること、あるいはR&Dに関連する、主な取り組みを掲載しています。所々で触れさせていただいたような「SPORTS EPA ULTRA PURE」のアンチ・ドーピング認証の「インフォームドチョイス」や、(ブリの)ASC認証についても、こちらに記載しています。

ESG関連

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25スライド目です。私どものCSRの中で設定しました、マテリアリティ(重要課題)が3つあります。その3つをここに掲げてあります。「豊かな海を守り、持続可能な水産資源の利用と調達を推進する」「安全・安心で健康的な生活に貢献する」「社会課題に取り組む多様な人材が活躍できる企業を目指す」という3つの重要課題を設定いたしました。それぞれに活動を開始して、1年程度経っています。

水産資源の……次のスライドでもご覧いただきますけれども、「安全・安心で健康的な生活に貢献する」ということに関しましては、さまざま(な取り組みを)行なってまいりますけれども、既に(食品安全システム認証)FSSC22000を全直営工場は取得していますが、全グループ会社においても、取得することを目指してまいります。それから「社会課題に取り組む多様な人材が活躍できる企業を目指す」ということで、「健康経営宣言」というものを昨年行いました。

肥満対策や喫煙所対策はもちろんのことなのですが、育児や介護・看護など、さらなる制度の拡大、働き方改革に即したさまざまな施策をより深めてまいります。

水産物の持続的利用への取り組み

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26スライド目は、その中でも、水産に関するものだけを取り出してみました。ニッスイグループが取り扱う全水産物について調査・検討を開始しています。水産資源がどういう状態にあるのか、現在検証中です。これをより進めていきたいと考えています。またMSC・ASC認証の商品、これをより拡充していくと同時に、当社のグループでもASC認証の取得を進めてまいります。

ここまでがご説明でとなります。

(ご参考)第3四半期累計実績 セグメントマトリックス 売上高(前年同期比)

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スライド27は、第3四半期累計のセグメントの売上高のマトリックスです。

(ご参考)第3四半期累計実績 セグメントマトリックス 営業利益(前年同期比)

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スライド28は、第3四半期累計のセグメントの営業のマトリックスです。

(ご参考)通期修正計画 セグメントマトリックス 売上高(前年同期比)

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スライド29は、年間の修正計画に対するセグメントの売上高のマトリックスです。

(ご参考)通期修正計画 セグメントマトリックス 営業利益(前年同期比)

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最後のスライド30は、年間の修正計画に対するセグメントの営業利益のマトリックスを付けています。

やや長くなりましたが、以上、説明とさせていただきます。

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