3. 繰下げ受給と健康寿命を考えるポイント

老齢年金の繰り下げ受給制度と健康寿命について解説しましたが、実際に繰下げ受給を検討するときは次の2点に留意して受給開始時期を決めましょう。

3.1 ポイント1.何歳まで働けるか

ポイントの1つ目は、自分が何歳まで働けるかということです。

繰下げ受給するには受給開始までの生活を支える収入が必要であるからです。

健康寿命を仕事が可能な期間と仮定すると、男性は約73歳、女性は75歳までしか働けないことになります。

個人差はありますが、平均的な男性の場合、73歳以降は日常生活の制限を抱えながら仕事をしないといけないことになります。

また、健康上の理由だけでなく働く環境があるかという問題もあります。

生活を支えられるだけの給与がもらえなかったり、配偶者の介護などで働く時間を確保できないケースも考えられます。

3.2 ポイント2.繰下げで増えた年金を何に使うか

ポイントの2つ目は、繰下げした年金の使い道です。

繰下げ受給によって増えた年金で海外旅行に行ったり趣味にお金をかけたりして豊かな老後生活を夢見ていても、健康を害して想像していた老後生活ができないこともあるからです。

健康なときしかできないこともあるため、元気なうちにやりたいことをするために年金を効果的に活用するという選択肢もあります。

ただし、老後の生活資金や健康・介護への不安から年金額を増やしたい場合、繰り下げによる年金額アップは有効です。

4. 年金まとめ:自分にあった受給方法を選択する

老齢年金を75歳まで繰下げした場合、年金額は84%もアップします。

ただし、繰下げを検討するときは健康寿命についても考慮しましょう。

繰下げ受給によって年金額は増えますが、健康状態によって受給開始までの収入を得られないケースや健康を害して想定していた豊かな老後生活を送れないこともあるからです。

何歳まで健康でいられるかは個人差があるため、自分にあった受給方法を選択しましょう。

参考)繰下げ増額率早見表

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

参考資料

西岡 秀泰