ある営業職の方は、「東南アジア系のファンドで高利回りの商品がある」という話を紹介され、200万円ほどを投資しました。しかし、お金を払ったあとしばらくすると紹介者は音信不通になり、結局、1円も戻ってきませんでした。

 また、あるメーカー勤務の方は、友人の紹介で経営者を名乗る男性と会いました。その男性が言うには、「実はこんな有望新規事業を準備中だが、多少、資金の必要な事業なので、これに出資してくれる人を探している」とのこと。「ニーズがあり、時代の流れにも合っていて、間違いない事業なので、いま出資してもらえれば増やして返済する」と熱心に説得され、コツコツ貯めてきた貯金の大半である700万円を投資することにします。しかし、お察しの通り、その700万円は数年経ったいまも返ってきていません。

怪しい話に引っかかる人の特徴

 こうした話に引っかかってしまう人の特徴として、「欲望を抑えられない」「お金を増やすことが目的になっている」「見栄っ張り」「人の言うことを聞かない」など、わかりやすいものもあります。一方で、以下のようにちょっと意外な(本人や周りが気づかないうちに深みにハマってしまう)ものもあります。

・大企業勤めや安定した職業で、自分が守られていることに気づかない人
・自己啓発にはまりやすい、根がやさしく、驚くほど素直な人
・親が過保護でいつまでも精神的な自立ができていない人
・ネットがすべて正しいと思ってしまっている人
・自分で納得しないと行動できない人

 「自分が守られていることに気づかない人」は、お金と時間にわりと余裕があり、他者を見下す傾向にあるので、下手に出てくるような営業には意外と弱いのです。また、「自分で納得しないと行動できない人」は、その裏返しで、自分に対して過度な自信を持っている人が多くいます。

 実はかつての私自身も、「怪しい投資話」に乗ってしまった1人でした。パチンコ台投資や出会い系サイト運営など、さまざまな投資に手を出し、数多くの失敗を重ねながら、資産運用の「現実」と「本質」を学んできました。

筆者の工藤さんの著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)

まとめにかえて

 拙著『隣の人の投資生活』でも、ストーリーの中にそのエッセンスを練り込んでいますが、失敗を重ねていく中で、私は資産運用において3つの大切なことを見つけました。

1.資産運用への知識
2.早めの計画・実行
3.勉強や情報収集を継続しつつ自分の受け皿を広げる

 さまざまな投資の種類についての知識がなければ、とりあえず聞いたことのある投資に手を出してしまいます。また、多くの投資の種類を知っていても、それについての深い知識がなければ、昔の私のように失敗してしまいます。

 上記の「3」はやや応用編に属すると思いますが、まずは「知識を得て」「動き出す」ために、できることから始められてはいかがでしょうか。


■ 工藤将太郎(くどう・しょうたろう)
西南学院大学卒業後、日本生命保険相互会社入社。資産形成について知識を深めるとともに、自身でも積極的に不動産投資や海外投資を実践。2012年株式会社クレア・ライフ・パートナーズ設立、代表取締役社長に就任。


隣の人の投資生活

工藤 将太郎