ファンドマネジャーのイメージは、モニターに囲まれて1日中金融市場とにらめっこ、というものです。ただし、いったん企業調査やクライアント(投資家)とのミーティングに入ると、それなりの社交性が求められるのをご存じでしょうか。
レセプションでの英語の会話はおっくう?
よくあるのが、海外で行われるカンファレンス(国際会議)に出席して、講演で話したり聞いたりした後のレセプションです。
ネットワーキング(networking)などという便利な言葉でプログラムには書いてありますが、要するに飲み会。立食形式かつ横飯になってしまうので辛いのですが、外人ファンドマネジャーはそんなことなど意に介せず、バクバクぐびぐびやっています。
ここで引いてしまうのが日本人ファンドマネジャーです。(ファンドマネジャーにかかわらず日本人ビジネスマンとも言い換えられるかもしれません)。
レセプションでの共通言語である英語の問題は大きいのですが、相手が外人だと共通の話題がなかったり、「私、〇〇です。今日の誰々さんの講演は素晴らしかったネ」と話しかけても、「そうね、どこのポイントが?」と返されると、苦手な英語で答えるのもおっくうだったりします。
結果、得てして会場の端っこで、ひたすら飲み食いに徹するという光景が散見されます。でもその気持ち、よ~くわかります。
世界にはいろいろな”英語”がある
実は、英語のネイティブスピーカーは、日本人がしゃべる英語(多分に発音やアクセントと思われる)を何とも思ってません。というか、ネイティブ以外は、いろいろな発音やアクセントで話すのが当たり前だと思っています。香港英語は広東語とのちゃんぽんですし、シンガポール英語はSinglishという分野まで確立しています。
インド人英語はとにかくマシンガン英語でずっとしゃべり続け、ネイティブも辟易します。フランス人英語はフランス語に聞こえますし、ドイツ人英語はまるで全員シュワルツネッガー張りの”ゴツゴツ”アクセントです。
また、たとえば同じ英語ネイティブでもpotato(じゃがいも)の発音を、アメリカ人はボデイド、イギリス人はポテイト、オーストラリア人はパテイトと発音しているように聞こえます。
つまり、英語にはたくさんの発音やアクセントがあり、日本語ネイティブの日本人が英語の正確な発音やアクセントを身につけるのは、ほぼ不可能に近いということです。もしあなたが生まれも育ちも東京なら、大阪弁はしゃべれませんよね。それと一緒です。
まずはカタコトで十分、でも大事なのは・・・?
また、超一流のファンドマネジャーはそもそも語学能力に投資するよりも、資産運用能力を磨く方が重要です。もちろん流暢にしゃべれるに越したことはありませんが、極論すればそうした席では「通じればよい」のです。
特に、ファンドマネジャーは運用成績が物を言うので、たとえ英語がおぼつかなくても、それなりの実績や理論背景を持ったファンドマネジャーには自然と人が集まります。
向こうからアプローチしてくるので、気も楽です。質問は相手がしてくれますし、答える内容はそのファンドマネジャーの独壇場。へんてこな英語で答えても、「なにやら難解なことを言っている。コイツはスゴイやつだ」ぐらいに思ってくれます。
そして、「どうだ、俺のボスも参加しているからちょっと話さないか」となり、そのボスの知己も得られるという好循環になります。
ことほどさように、国際派を目指す日本人ビジネスマンにとって英語は鬼門と考えられていますので、完璧な英語を身につけなければと思う方が多いのは事実です。一方で、下手な英語では外人は聞いてくれないのでは?、と思い込んでいる読者もたくさんいらっしゃると思います。
でも、まずは英語は片言でしゃべれたらいい、ぐらいの気持ちで十分です。
ただし、大事なのは外人と話す気合と根性。国際舞台での社交性はこうしたド根性で培われていくもので、ド根性は相手が何人であれ、必ず通じるものなのです。