「独身貴族」という言葉がしばしば使われていた時代もありました。
2006年に放送された『結婚できない男』(フジテレビ系列)では建築家・桑野信介(阿部寛)が自宅のキッチンでゴージャスなステーキを焼いてひとり頬張る姿や自室でゆったりとしたチェアに座りクラシック音楽を鑑賞するシーンがあります。
また、2009年に放送された『おひとりさま』(TBS系列)では高校教師・秋山里美(観月ありさ)がひとりで高級なお寿司を堪能する姿やショッピングを楽しむ姿があります。
これらの主人公に共通しているのは安定的な職に就いており、十分な給与を得られているからこそ悠々自適なおひとりさまライフを送れているところにあります。
彼らは富裕層やリッチマンとはいえないものの、広々としたマンションに住み、趣味や食事に惜しみなくお金を使っており、その暮らしはまさに「独身貴族」といえるでしょう。
一概には言えないものの、結婚することで自由に使えるお金が減るという見方もあります。
既婚女性の中には独身時代よりもリーズナブルな価格帯の化粧品を利用している方も少なくありません。
また、独身時代は気軽に食べていた3000円のランチも、結婚後は友人とのたまのランチでも3000円を出し惜しむ方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、夫婦共働きが主流となっている昨今、結婚後は未婚の頃よりも世帯年収が増える世帯がほとんどです。
また、結婚するかどうかは本人の希望がもっとも大きいものの、近年においておひとりさまが増えている原因として「経済的事情」が挙げられることも増えています。
実際のところ、未婚者と既婚者ではどちらが自由に使えるお金が多いのでしょうか。
30歳代・40歳代の自由に使えるお金は未婚者の方が約1万円多い
SMBCコンシューマーファイナンス株式会社「30代・40代の金銭感覚についての意識調査2019」では、未婚者と既婚者(子どものいない/子どものいる)における「毎月自由に使えるお金の平均額」の調査結果を公表しています。
【図表1】によると、「毎月自由に使えるお金の平均額」は「未婚者」(3万8674円)が最も多く、「子どものいない既婚者」(2万8565円)、「子どものいる既婚者」(2万2096円)という順になっています。
未婚者と子どものいる既婚者の月々に使えるお金の差額は約1万6000円です。
1万6000円を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれですが、洋服をシーズンごとに購入したり、外食に何度か行ったりすることもできる金額です。また、趣味や旅行に充てるにしても十分な金額といえます。
とはいえ、おひとりさまが裕福なわけではない
近年、未婚者が増加している原因として「経済的事情」が挙げられます。
給与所得が30年ほど上がらず、税率も高まっている昨今。若者の多くが自分を養うのに精一杯であり、結婚や出産を考えられない状況におかれています。
また、氷河期世代の中には不安定な雇用をよぎなくされており、結婚を前向きに考えられない方も少なくないでしょう。
これらのことは、単身者の1カ月の支出にも垣間見ることができます。総務省統計局「家計調査(単身)勤労世帯」によると、2022年における単身者の1カ月の消費支出は16万1753円という結果でした。
必要な生活費を16万円以内に抑えるには節約を意識することはもちろん、頻繁に外食したり、ある程度の価格の洋服や不必要な日用品をむやみやたらに購入したりすることは難しいでしょう。
貯蓄額は二人以上の世帯の方が多い傾向に
おひとりさまが経済的にゆとりがあるわけではない状況は、二人以上の世帯の貯蓄額と比較することでよく分かります。
40歳代・単身世帯の金融資産保有額(金融資産非保有含む)
平均値657万円、中央値53万円
- 金融資産非保有 35.8%
- 100万円未満 14.8%
- 100~200万円未満 5.9%
- 200~300万円未満 4.9%
- 300~400万円未満 6.2%
- 400~500万円未満 2.8%
- 500~700万円未満 2.8%
- 700~1000万円未満 3.1%
- 1000~1500万円未満 7.7%
- 1500~2000万円未満 2.5%
- 2000~3000万円未満 4.0%
- 3000万円以上 5.9%
- 無回答 3.7%
40歳代・二人以上の世帯の金融資産保有額(金融資産非保有含む)
平均値825万円、中央値250万
- 金融資産非保有 26.1%
- 100万円未満 11.1%
- 100~200万円未満 7.2%
- 200~300万円未満 5.4%
- 300~400万円未満 5.5%
- 400~500万円未満 4.2%
- 500~700万円未満 7.9%
- 700~1000万円未満 7.3%
- 1000~1500万円未満 7.4%
- 1500~2000万円未満 3.8%
- 2000~3000万円未満 5.2%
- 3000万円以上 4.9%
- 無回答 3.8%
40歳代の単身世帯と二人以上の世帯の金融資産を比較すると、平均値と中央値のいずれにおいても二人以上の世帯の方が200万円程度多くなっています。
実態により近いと言われる中央値については、単身世帯は53万円と少々心もとない金額である一方、二人以上の世帯については250万円ものまとまった金額です。
金融資産非保有の割合も二人以上の世帯よりも単身世帯の方が多いという結果になりました。
また、単身世帯の金融資産保有額は400~700万円といった中間的な金額が極端に少ない点も気になります。つまり、金融資産を多く保有する人とそうでない人の差がはっきりしているということです。
なお、1000万円以上の金融資産をもつ人は単身者が20.1%、二人以上の世帯が21.3%とほぼ変わらない結果になりました。
まとめにかえて
世間的に見ると、既婚者よりも未婚者の方が自分のために使えるお金が多い傾向にあるといえるのかもしれません。
未婚者は趣味やファッション、旅行、グルメなど自分のためにお金を使いやすい傾向にあります。
しかし、未婚者が既婚者よりも経済的に余裕があるかというと、そういうわけでもないようです。貯蓄額については二人以上の世帯の方が単身世帯よりも多い結果になりました。
また、単身世帯の月額の支出の平均が16万円前後であることを考慮しても、多くのおひとりさまがゆとりのある暮らしをしているわけでないことは明確です。
既婚者が自分に使うお金が少ない傾向にあるのは、余剰金を子どもや家族のために使っていることにも関係しています。
子どもの習い事や学費に余剰資金をまわすと、ある程度の収入があったとしても自分へのご褒美や自己投資にお金を使うことが難しくなります。
特に、近年において大都市圏では中学受験がヒートアップしています。
ある程度の収入があるご家庭であっても子どもを中学校から私立に通わせるとなれば、親が趣味やファッション、同僚・友人などとの交際に使えるお金は限られます。
参考資料
- FOD『結婚できない男』
- TBS『おひとりさま』
- SMBCコンシューマーファイナンス株式会社「30 代・40 代の金銭感覚についての意識調査2019」
- 総務省統計局「家計調査(単身)勤労世帯」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和4年)」
西田 梨紗