2. 厚生年金と国民年金の「繰下げ受給実施率」が低い理由
繰下げ受給は魅力的な制度と言えるものの、まだまだ実施率は低い現状にあります。
厚生労働省「令和3年 厚生年金保険・国民年金事業年報」という資料では、繰上げ受給と繰下げ受給の実施率の推移を確認できます。
繰上げ受給とは、繰下げ受給の反対で「65歳より前に年金を受給するかわり、年金額が減額される」という制度です。
それぞれの実施率を確認しましょう。
※繰上げ受給は最大60歳まで可能。減額率は原則1カ月につき0.4%です
2.1 厚生年金の繰上げ・繰下げ受給状況の推移
厚生年金の繰下げ受給は1.2%。年々増えてはいますが、かなりの少数派であることが見て取れます。
- 平成29年度:0.7%
- 平成30年度:0.7%
- 令和元年度:0.8%
- 令和2年度:1.0%
- 令和3年度:1.2%
一方、繰上げ受給の実施率もわずかながら上昇傾向にあるようです。
- 平成29年度:0.2%
- 平成30年度:0.3%
- 令和元年度:0.4%
- 令和2年度:0.5%
- 令和3年度:0.6%
これにより、本来の65歳のまま受給開始としている方は98.3%にのぼります。
2.2 国民年金の繰上げ・繰下げ受給状況の推移
一方、国民年金に関しては少し実施率があがります。繰下げ受給は1.8%となりました。
平成29年度:1.3%
平成30年度:1.3%
令和元年度:1.5%
令和2年度:1.6%
令和3年度:1.8%
繰上げ受給の実施率は高く、11.2%が利用しています。
平成29年度:13.6%
平成30年度:12.9%
令和元年度:12.3%
令和2年度:11.7%
令和3年度:11.2%
2.3 繰上げ・繰下げした場合の受給額平均
国民年金の繰上げ・繰下げした場合の受給額は上の表の通りです。
繰上げの場合、本来の受給額よりも約1万4000円低くなり、繰下げの場合、約月1万8000円多くなっています。
ここまで実施率が低い理由は、「制度があまり普及していないこと」「デメリットがメリットを上回る」ことにあります。
「繰下げ受給のデメリット」に注目してみましょう。