世界中のビックマックの値段比較ができる“ビックマック指数”
イギリスの経済専門誌である「エコノミスト」は1986年から毎年、世界各国のマクドナルドで販売されているビックマックの価格を調べ、「ビックマック指数」として公表しています。
マクドナルドのビッグマックが選ばれた理由は、世界の多くの国で多少の違いはあっても、ほぼ同じ商品が販売されているためです。
少し専門的な話になりますが、経済学には「購買力平価」という考え方があります。同じものであれば、国内でも海外でも同じ価格で取引されるので、2国間の為替相場は2国間の価格を同じにするように動き、「均衡」するという考えです。
これが実際に均衡しているかを調べることが、この指数が作られた理由となっています。
トップのスイスは日本の2倍、ウクライナは半分
では、直近の2017年7月の調査結果を見てみましょう。下図のように、スイスのビックマックが762円であるのに対して、日本は380円と約2倍の開きがあります。
また、調査対象の56カ国中、最下位のウクライナは192円と日本の約半値になっています。仮に「世界で最も安いビックマックを食べたい」という目的で海外旅行に行くのであれば、行き先はウクライナということになります。
日本円は安過ぎる?
では、なぜこのように大きなばらつきがあるのでしょうか。世界の物価は「一物一価」であることを前提としている上述の購買力平価に基づけば、その理由は為替レートにあることになります。
この調査の時点では、アメリカのビックマックの現地価格は5.3ドル、日本では380円でした。購買力平価の考えでは、1ドルは71円となるべきですが、実際には、2017年7月時点の為替レートは1ドル113円となっています。
このため、実際の為替レートは、ビックマック指数から求められる理論的な為替レートに比べると約40%(71円÷113円)過小評価されている、つまり円安になり過ぎているということになります。
日本円でお給料をもらい、それをドルに両替して最近アメリカに旅行に行かれた方が、“最近のアメリカの物価は高いな”、とお感じになったとしたら、それは円安になっていることが大きな要因であるということにもなります。
米国のビックマック価格は日本以上に上昇
とはいえ、現実の為替レートは購買力平価だけで決まるのではなく、金利差やマネーの動きなどによっても大きく左右されます。
また、購買力平価の考えをビックマックという単品だけで議論することも、あまり意味のあることとは言えません。よって、現在の為替レートは円安過ぎるから今後は円高に向かうと断定することはできません。
また、考え方によっては、日本のビックマックは外食業界の競争激化や長期間続いたデフレの影響、また効率化の進展により、海外に比べると安く売られ過ぎている可能性もあるかもしれません。
実際、10年前の2007年と比べると、アメリカのビックマックが+55%上昇していたのに対して、日本は+36%の上昇に留まっています。
まとめ
さて、日本のビックマックの値段は56カ国中36位となっています。トップのスイスに生まれていれば、世界中どこを旅行しても、自国よりも安く食べられるという優越感?を味わうことができますが、日本人は、半分以上の国でそういう思いはできないということになります。
ビックマック価格ランキングの上位に近づくために、円高やインフレ(物価高)を受け入れるべきか。あるいは、給料が上がらないのだから現状のままで良いと考えるべきか。これは難問ですね。いずにせよ、現状の日本は全体ではそれほど豊かな国ではなくなっているのかもしれません。
LIMO編集部