家の近くに生鮮食品が充実したスーパーがあれば便利だというのは誰もが感じるところでしょう。ただ、地方や郊外では必ずしもスーパーやコンビニが徒歩圏内にあるとは限らないので、スーパーが入っているショッピングモールは欠かせません。

たとえば、千葉の木更津や富津あたりに住んでいる人の場合、イオンモールは週末のショッピングも含めて生活に欠かせない重要な場所で、時には館山のイオンモールにも足を運ぶそうです。

リアル店舗に攻勢をかけるネット小売り企業

さて、消費者の生活に密着しているイオンですが、そこにも競争の波は押し寄せています。というのは、アマゾンのようなネット専業の小売り企業にもリアル店舗を持つケースが目立ってきているからです。

2017年12月12日にイオンは「イオングループ2020年に向け」と題した発表を行っています。その中で、ネット専業の強みとして「便利さ」と「価格」をあげています。いずれの項目も消費者にとっては魅力的なものといえますが、その要素に関してはネット専業の方が有利という判断をしているのです。

一方で、イオンの強みとしては「食の強化」と「ネットとリアルの融合」をあげています。ネット専業の「鮮度」「返品や交換ができない不便さ」「体感、体験できない」という面を逆手にとって打ち勝とうという発想です。

ネット企業の攻勢は今後も強まっていくでしょう。そのため、リアル店舗に強みを持つ小売店の競争優位性をどこに置くのかについては議論が続きそうです。

イオンの収益の柱は実はスーパーではなかった

スーパーやショッピングモールとして知名度のあるイオンですが、実際はどういった事業で収益を稼いでいるのでしょうか。

2018年2月期の第2四半期累計(3-8月期)決算から、6カ月分ではありますが、その収益の構造を見ていくことにしましょう。

多くの方が日ごろ接しているイオンの顔ともいえるGMS(総合スーパー)事業は、第2四半期累計では▲104億の営業損失となっています。ただ、SM(スーパーマーケット)事業は108億円の営業利益となっているので、小売り事業そのものに利益が出ていないというわけではありません。

とはいえ、イオン連結で見ると同期間で収益を支えているのは総合金融事業とディベロッパー事業で、それぞれ329億円、235億円となっています。すなわち、金融と不動産関連事業が全社で見た場合の収益の柱ということになります。

イオンの注目すべき事業とは

イオンはGMSやSM事業以外の小売り事業でも収益の柱となる事業を抱えています。それはドラッグ・ファーマシー事業で、同期間の営業利益は138億円とSM事業よりも利益規模が大きくなっています。

先にあげた12月12日の公表資料の中にはHBC(ヘルス&ビューティーケア)の売上ランキングがあります。それによると、イオングループが9,300億円であるのに対し、ツルハグループが5,800億円、マツキヨグループが5,400億円と、同社の規模の大きさが見て取れます(2017年2月決算数値)。

ドラッグ・ファーマシー事業以外にも衣料品やホームファッションカテゴリを切り出すと、各カテゴリのランキングでは国内の大手プレーヤーと伍していける事業規模を抱えているということが分かります。課題は、ユニクロやしまむら、無印良品などの特化型小売事業者に対してGMSとしてのイオンがどう優位性を示せるかということになりそうです。

今後のイオンの業績は

2017年10月4日に行われた2018年2月期第2四半期累計決算発表時に、同社は業績の上方修正を行っています。

それによると、期初予想の営業収益(売上高)予想は当初のままであるものの、営業利益を1,950億円から2,000億円へと上方修正しています。また、長期的には2020年に営業収益10兆円、営業利益3,400億円を目指すとしています。

イオンの株価を見る上で今後注目すべきポイント

いかがでしたでしょうか。イオンの今後の業績を見通すうえで重要となってくるのは、金融や不動産事業の拡大とGMS事業の改善、加えてネット専業の小売り企業との競争環境をいかにやり過ごせるか、また特化型小売業に対して各商品カテゴリーで魅力的な商品をどう提供できるかにかかっているのではないでしょうか。

こうした点を解決していきながら、業績を拡大していく中で2020年の業績目標値があり、そうした進捗を株式市場がどう評価するかで株価が決まっていくといえるでしょう。

青山 諭志