このように、神戸物産の現時点での業績は「業務スーパー」をじっくり見ればよさそうです。

小売店を評価する際に重要なのは、大きくは新規出店のペースと既存店売上高の推移の2点です。新規出店については先ほど見たように、2016年10月末時点の747店舗に対して、2017年10月期に+33店舗を出店しており、新規出店比率は約4%です。

また、2017年10月期に関しては、全国/全店ベースでの業務スーパー月次動向を見る限り、既存店売上高は月次でいずれも100を割っていないという好調さを確認できます。

神戸物産の株価が下落するとすれば、リスクは何か

株価下落のリスクは上昇するきっかけの反対の状況ともいえますが、主には以下の2点です。

  • 新規出店の数が増えないこと
  • 既存店売上高の悪化

また、現在は新規出店に伴う店舗人員を十分に確保できない小売店も多く、そうした点も見逃せないでしょう。

神戸物産の財務体質はどうか

2017年10月期の総資産は1,445億円。純資産は301億円である一方、短期借入金(1年内償還予定の社債除く)が111億円、長期借入金が656億円、社債が31億円と負債は純資産に対して重く見えます。

とはいえ、資産の部に現金および預金が762億円あるので、ネット負債としてはそれほどではないといえるかもしれません。どちらかといえば、キャッシュの使い道について知りたいところです。

神戸物産の配当は

2017年10月期の配当は一株当たり50円と、配当性向でいえば16%程度。新規出店に伴う投資なども常に必要とはいえ、配当性向で16%というのは投資家から”もっと配当してほしい”と要求される水準かもしれません。

ただ、新規出店をすることでさらに会社全体の収益を拡大させる余地があるということが理解できれば、投資家にとっても配当より長期で同社株式に投資を続けるインセンティブへとつながることでしょう。

神戸物産の株価を予想するのに必要なポイントは何か

業務用スーパー業界には同社以外にも競合企業が存在し、現時点では競争過多という状況ではないものの、今後その環境が変わってくる可能性があります。

また、アマゾンやコンビニなどが個別配送で激しくしのぎを削るようになった際に、ユーザーに店舗に来てもらう同社の運営スタイルがどのような影響を受けるのかには注目です。

ただ、圧倒的にお得感のある、業務スーパーでしか買えない商品がユーザーを惹きつけるカギになることは間違いないでしょう。

まとめ

業務スーパーという、一見すると飲食業関係者だけが利用しているかと勘違いしそうな業態は、店舗数を増やし、既存店売上高も好調さを維持しつつ業績を拡大していることが分かりました。今後はそうした観点で同社を評価してみるのも面白いのではないでしょうか。

青山 諭志