マイクロソフトのCopilotがもたらす変化

生成AIブームの火付け役は間違いなくChatGPTを開発したOpenAIですが、これだけ確固たるトレンドになっているのは、その影にマイクロソフトがいるからといえます。同社は2019年からOpenAIに投資を行ってきましたが、2023年1月にさらに数十億ドル規模の投資を行うことを発表。「マイクロソフトがそれだけ本気なら」とAIに対する姿勢を改めたビジネスパーソンは多かったことでしょう。

そんなマイクロソフトのAI戦略において、最重要ともいえるのがAIアシスタント機能「Copilot」です。講演で仲西氏は「AIはあくまで人間の手助けをする技術。Pilotは人間で、AIはあくまでCopilot(副操縦士)だ」と説明。「AIは人間に指示をするものではない」というマイクロソフトの基本的なスタンスを示しました。

出所:筆者撮影

現在、Copilotは用途別に6種類が開発されており、その中でも先月プレビューを開始した「Windows Copilot」と近日発表予定の「Microsoft 365 Copilot」はChatGPT以上に幅広いビジネスパーソンの業務をアップデートするものになると期待されています。

なぜなら、それらは新しいツールではなく、これまで日常的に使ってきたツールを生まれ変わらせるものだからです。たとえばMicrosoft 365 CopilotはWordやExcel、PowerPointといったアプリに組み込まれ、自然言語による生成を可能にします。もっと分かりやすく言えば、「こんなレポートを書いて」「こんな資料を作って」と指示を出すだけで、リクエストに沿った成果物を生み出すことができるようになります。

出所:日本マイクロソフト株式会社 講演資料

マイクロソフトにアドバンテージをもたらしている「Microsoft Graph」

すでにChatGPTを試したことがあるなら「AIに的確な指示を出すのは意外と難しい」と感じている人もいるかもしれません。しかし、Copilotは「Microsoft Graph」と連携するという点でChatGPTと異なっています。

Microsoft GraphはMicrosoft 365やその他のアプリからデータを取得する技術で、アウトプットのためのソースとして機能します。過去に作成した機能やメール履歴を参照することで、ユーザーが求めに応える精度の高い生成が可能になるというわけです。

出所:日本マイクロソフト株式会社 講演資料

仲西氏は「自然言語を理解するChatGPTの技術だけでなく、ビジネスコンテンツ/コンテクスト(過去のデータ)を構造化するMicrosoft Graphの技術をもっていることが他社の追随を許していない大きな理由になっている」と同社の強みを語りました。