3. 「厚生年金・国民年金」老齢年金から天引きされるお金3つ

さて、冒頭で申し上げたとおり公的年金(老齢年金)からも天引きされるお金があります。

年金から天引きされるものは主に以下の3つ。

  1. 税金
  2. 介護保険料
  3. 健康保険料

※遺族年金・障害年金は非課税です。

上記の天引き額は、居住地や年金支給額によって異なります。

具体的にイメージしやすいよう、例を見ながら確認していきましょう。

例:大阪府大阪市に住む女性(76歳)年金以外の所得はないものとする

3.1 老齢年金から天引きされるお金1.税金(所得税と住民税)

厚生年金が月額15万円の場合、年間収入は180万円です。

収入が年金のみの場合は、所得税として年約2850円、住民税として約1万6000円が天引きされます。

また復興特別所得税(2013年1月1日~2037年12月31日まで、通常の所得税に上乗せして徴収される特別税)も引かれます。

3.2 老齢年金から天引きされるお金2.介護保険料

年金年額が18万円以上の場合、介護保険は強制的に年金から天引きされます。

大阪市の場合、年金収入が180万円の方の介護保険料は年額10万6841円です。

※2021~2023年度の場合

3.3 老齢年金から天引きされるお金3.国民健康保険料または後期高齢者医療制度の保険料

年金から天引きされる健康保険料は「国民健康保険」か「後期高齢者医療制度」かで異なります。

今回、76歳の女性を例としていますので、75歳以上が対象となる後期高齢者医療制度の保険料が天引きされます。

大阪府後期高齢者医療広域連合の「保険料試算ページ」を用いて計算すると、保険料は年間約5万7300円です。

4. 厚生年金「額面15万円」天引き後の手取り額は約13万円(※大阪市の場合)

先ほど例で手取り額を計算してみましょう。

税金(所得税・住民税)・介護保険料・後期高齢者医療制度の保険料で年間約19万円が天引きされます。

厚生年金の年額180万円から天引き額19万円を引くと161万円が手取りの年額となります。

161万円÷12カ月=月額13万41666…

手取りの月額は約13万4000円です。

天引きされることを知らなかった、あるいは失念していたなど、額面で老後の生活設計をしてしまうと不足分を貯蓄でカバーするペースが想定上に早まってしまいます。

老齢年金については天引きされるお金があることを考慮して老後の準備を進めましょう。

※あくまでも上記は大阪市の税率を用いた概算です。天引きされる金額は事務処理上、年度途中に確定するため1年を通して同じ手取り金額になるとは限りません。

5. 自分に合う方法を見つけて老後の準備を

今回は、年金の受給額の実態と年金から天引きされる税金や保険料などについて確認していきました。

意外と引かれる金額が大きく驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

老後資金を考えていく上では額面ではなく、手取り額を把握することが非常に重要です。

現在のシニア世代の厚生年金の平均年金月額から想像するに、老後は年金収入だけではやりくりすることはできないようです。

不足分や老後に起こりうる突発的な大きな出費に対応できるよう、ご自身が安心できる程度の貯蓄を準備しておく必要があるでしょう。

しかしながら、銀行の預貯金は金利が低く、インフレを考慮すると実質的な資産価値は目減りしてしまう状況です。

NISAやiDeCoといった国が後押しする税制優遇制度を利用すれば、元本保証はありませんが、通常、利益に対して約2割かかる税金が非課税になるというメリットを得ながら預貯金以上のリターンを期待した資産運用が可能です。

こうした工夫も取り入れながら、効率良く資産を増やす方法もあります。

資産をつくる方法は様々ありますので、自分に合う方法を見つけて、老後を見据えた準備をしていきましょう。

参考資料

西村 翼