2023年10月から各地の最低賃金が引き上げとなりますが、悩ましいのが「年収の壁」について。
例えば年収130万円を超えると、従業員101人以上の企業では厚生年金・健康保険の適用対象となるため、社会保険料が発生します。これにより、手取りが減少するという逆転現象が懸念されています。
こうした問題から「働き控え」も話題となる中、政府は「年収130万円の壁」を打開する策も打ち出しています。
年収の壁を超え、「年収140万円」になった場合に受給できる年金額を見ていきましょう。
1. 年収130万円の壁とは
年収の壁には複数あり、税金面と社会保険面にわけることができます。
年収106万円と150万円が税金面、106万円と130万円が社会保険面での壁だと整理できます。
年収130万円を超えると社会保険料が発生するため、手取りが減少してしまいます。そこで政府は、助成金などで支援する策を検討しています。
厚生年金や健康保険に本人が加入すると、保険料が増えるというデメリットは存在するものの、メリットが存在するのは事実です。
その一つである、厚生年金について考えてみましょう。もし年収が130万円を超えて140万円になった場合、将来の年金はいくらになるのでしょうか。
2. 年収140万円の人が受け取る厚生年金は月額約9万2200円
年収140万円で働き続けた場合、老齢厚生年金はいくらになるのでしょうか。
2.1 厚生年金の受給額の計算式
報酬比例部分= A + B
- A(2003年3月以前):平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入期間の月数
- B(2003年4月以降):平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間の月数
報酬比例部分(従前額)=( A + B )× 1.014
- A(2003年3月以前):平均標準報酬月額×7.5/1000×2003年3月までの加入期間の月数
- B(2003年4月以降):平均標準報酬額×5.769/1000×2003年4月以降の加入期間の月数
どちらかの式によって算出されます。また加入の時期によって計算式が異なるため、ここでは2003年4月以降に加入したとして試算します。
2.2 厚生年金の試算条件
- 年収140万円から平均標準報酬額は11万6700円とする
- 2003年4月以降に厚生年金に38年間加入した
- 国民年金は40年間未納なし
- 配偶者や扶養家族はいない
2.3 厚生年金額をシミュレーション
上記の式に当てはめると、厚生年金額は31万1200円。
さらに老齢基礎年金(国民年金)の満額約79万5000円を足すと、合計で約110万6200円となります。
月額にすると約9万2200円です。
ただし、これは38年間を通して年収140万円であったケースです。これまで扶養内でパートをしてきて、途中から厚生年金に加入したという場合は、もっと少なくなるでしょう。
反対に年収をもっとあげれば、その分厚生年金額はあがります。
詳細にシミュレーションしたい場合は、ねんきんネットなどを活用してみましょう。
※昭和21年4月1日以前に生まれた方については、給付乗率が異なります。
※年収÷12で仮の平均標準報酬月額を算出しています。実際には「平均標準報酬月額」「平均標準報酬額」を用いるため、厳密には年収と異なります。
※あくまでも概算のため、実際の受給額とは異なるケースがあります。
※老齢基礎年金は2023年度新規裁定者の基準額です。
3. 厚生年金を月額9万2200円以上受給している割合
では、厚生年金(国民年金を含む)を月額9万2200円以上受給している高齢者はどれほどいるのでしょうか。
厚生労働省の資料から見ていきましょう。
3.1 厚生年金月額ごとの受給者数
出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
- 1万円未満:9万9642人
- 1万円以上~2万円未満:2万1099人
- 2万円以上~3万円未満:5万6394人
- 3万円以上~4万円未満:10万364人
- 4万円以上~5万円未満:11万1076人
- 5万円以上~6万円未満:16万3877人
- 6万円以上~7万円未満:41万6310人
- 7万円以上~8万円未満:70万7600人
- 8万円以上~9万円未満:93万7890人
- 9万円以上~10万円未満:113万5527人
- 10万円以上~11万円未満:113万5983人
- 11万円以上~12万円未満:103万7483人
- 12万円以上~13万円未満:94万5237人
- 13万円以上~14万円未満:91万8753人
- 14万円以上~15万円未満:93万9100人
- 15万円以上~16万円未満:97万1605人
- 16万円以上~17万円未満:101万5909人
- 17万円以上~18万円未満:104万2396人
- 18万円以上~19万円未満:100万5506人
- 19万円以上~20万円未満:91万7100人
- 20万円以上~21万円未満:77万5394人
- 21万円以上~22万円未満:59万3908人
- 22万円以上~23万円未満:40万9231人
- 23万円以上~24万円未満:27万4250人
- 24万円以上~25万円未満:18万1775人
- 25万円以上~26万円未満:11万4222人
- 26万円以上~27万円未満:6万8976人
- 27万円以上~28万円未満:3万9784人
- 28万円以上~29万円未満:1万9866人
- 29万円以上~30万円未満:9372人
- 30万円以上~:1万4816人
3.2 厚生年金月額ごとの受給者数
厚生年金9万円以上~10万円未満に属する人は113万5527人です。
また、9万円以上の厚生年金を受給している方は1356万6193人。割合にすると83.8%です。
80%の方は受給できていますが、男女別に見ると男性が91.6%、女性が68.1%と差があります。
そもそも厚生年金に加入して働き続ける女性が少なかった時代なので、こうした男女差があるのは仕方のない側面もあります。
4. 年金も視野に今後の働き方を考える
年収140万円の方が受け取る厚生年金(国民年金を含む)は月額約9万2200円となりました。基礎年金しかない場合は満額でも6万6000円ほどなので、少しでも上乗せすることができます。
このように、今後の働き方によって、年金額は大きく変わるでしょう。
ただし、最低賃金の動向に合わせて働き控えが行われるのも仕方のない側面があります。世帯の手取り収入は重視したいものなので、なかなか扶養を超えて働くことに踏み切れないのが現実です。
政府の今後の支援策に、注目が集まります。