2. 厚生年金と国民年金から天引きされるお金5つ

厚生年金や国民年金から天引きされるお金は、税金と保険料です。次の5つにわけて整理しましょう。

2.1 税金①所得税および復興特別所得税

公的年金は雑所得となり、65歳未満なら108万円、65歳以上なら158万円を超えると所得税が課税されます。これらは給与等と同じく、年金から源泉徴収されます。

また「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律117号)」により、所得税の源泉徴収の際に併せて復興特別所得税もかかります。

2.2 税金②個人住民税

前年中の所得が一定以上の方は住民税が課税され、基本的に年金からの天引きで納めます。

年金から天引きされる税金は以上のふたつですが、いずれも障害年金や遺族年金を受給する場合は非課税です。

2.3 保険料①介護保険料

保険料としては、まず介護保険料が年金から天引きされます。介護保険とは、介護状態になると一定の自己負担で介護サービスを受けられるという制度です。

40歳から保険料の支払いが始まるものの、健康保険料の上乗せという位置づけのため、あまり意識していない方も多いかもしれません。

65歳以上になると、原則として年金年額が18万円以上の方は、介護保険料が年金から天引きされると知っておきましょう。

2.4 保険料②国民健康保険料(税)

国民健康保険とは、協会けんぽや健康保険組合などの会社の保険に加入していない75歳未満の方が加入する公的健康保険です。

65歳から74歳までの世帯で国民健康保険に加入している方の場合、原則として、国民健康保険の保険料(税)も年金から天引きされます。

2.5 保険料③後期高齢者医療制度の保険料

原則75歳以上になると、どんな健康保険に加入している方も「後期高齢者医療制度」に加入します。

後期高齢者医療制度の保険料も、原則として年金天引きで納めます。

※国民健康保険や後期高齢者医療制度は、申請により普通徴収(納付書や口座振替)に変えられる自治体もありますが、それでも支払いの義務はあるため、実質年金天引きと負担は変わらないといえます。

3. 年金から税金や保険料が天引きされない人もいる

年金から天引きされる5つのお金を見ていきました。ただし、年金から天引きされないという人もいます。

その条件を確認しましょう。

3.1 「所得税および復興特別所得税」が天引きされない人

所得税および復興特別所得税は、年金所得が一定額に満たなければそもそも課税されません。この場合は当然天引きされません。

具体的には、65歳未満で108万円、65歳以上で158万円以上が課税の目安となります。

3.2 「個人住民税」が天引きされない人

個人住民税も、非課税の場合はもちろん天引きされません。

ただし、課税される場合でも下記に該当すると年金から天引きされないケースがあります(自治体によって異なります)。

  • 老齢基礎年金等の年額が18万円未満の場合
  • 介護保険の特別徴収対象被保険者でない場合
  • 当該年度の特別徴収税額が老齢基礎年金等の年額を超える場合
  • 老齢基礎年金等から所得税、介護保険料、国民健康保険及び後期高齢者医療制度の保険料を控除した後の額が特別徴収税額より小さい場合

年金から天引きされない場合は普通徴収となり、口座振替や納付書等で納付します。

3.3 「介護保険料」が天引きされない人

介護保険料額は、以下に該当する場合は年金から天引きされず、普通徴収となります。

  • 老齢基礎年金等の年額が18万円未満の場合
  • 年度途中で別の地域に転入した人
  • 年度途中で保険料が減額・増額になった人
  • 年金の受給開始年度の場合

その他にも、年金現況届の提出を忘れた場合は、年金が一時差し止めになると共に天引きが止められるケースがあるので注意しましょう。

介護保険料は税金のように「非課税」という概念はありません。所得が低くても支払う義務は残るので注意しましょう。

3.4 「国民健康保険料(税)」が天引きされない人

国民健康保険料(税)の場合は、以下に該当すると年金から天引きされず、普通徴収となります(自治体によって異なります)。

  • 老齢基礎年金等の年金額が年額18万円未満の場合
  • 国民健康保険料(税)と介護保険料の合計額が、年金額の2分の1を超えている場合
  • 世帯主の介護保険料が特別徴収(年金天引き)されていない場合
  • 世帯主が国民健康保険に加入していない人
  • 世帯の国保加入者に65歳未満の人がいる人

世帯主が会社の健康保険や後期高齢者医療制度などの医療保険に加入していても、他の家族が国民健康保険に加入している場合は「擬制世帯」となります。

この世帯の世帯主は「擬制世帯主」となり、世帯を代表して各種届出や保険料納付の義務を負うため、保険証や納入通知書は擬制世帯主あてに送られることも覚えておきましょう。

3.5 「後期高齢者医療保険料」が天引きされない人

後期高齢者医療保険料は、以下に該当する場合は年金から天引きされず、普通徴収となります。

  • 老齢基礎年金等の年金額が年額18万円未満の場合
  • 介護保険料と後期高齢者医療保険料の合計額が、年金額の2分の1を超えている場合
  • 介護保険料が特別徴収(年金天引き)されていない場合
  • 年度の途中で加入した(75歳となった)人
  • 年度の途中で保険料が減額となった人