2023年8月26日にログミーFinance主催で行われた、第60回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第4部・株式会社テノ.ホールディングスの講演の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社テノ.ホールディングス代表取締役社長 池内比呂子 氏
元・ファンドマネージャー/元・ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
経済アナリスト/経営コンサルタント 増井麻里子 氏
「テノ.」の由来
池内比呂子氏(以下、池内):株式会社テノ.ホールディングス代表の池内でございます。よろしくお願いします。
社名の「テノ.」は、手のひらを意味しており、「もっと愛情を・・・もっと安心を・・・『手の』ぬくもりまでも伝えたい」という思いを表しています。
経営理念
池内:経営理念には、「私たちは女性のライフステージを応援します。私たちは、相手の立場に立って考えます。私たちは、コンプライアンスを推進します。私たちは、事業を通して社会貢献致します」と掲げて、事業を展開しています。
目次
池内:本日は、セクションを4つに分けてご説明します。1つ目が会社概要で、2つ目が当社の特長と強み、3つ目が決算ハイライトとトピックス、4つ目が成長戦略についてです。
会社概要
池内:会社概要です。創業は1999年7月で、ホールディングスとしては2015年に設立しています。本社は福岡県にあり、従業員は1,903人です。事業内容については、後ほどご説明します。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):先ほど社名の由来を教えていただきましたが、創業のきっかけも教えてください。
池内:自己紹介にもなりますが、以前務めていた会社を辞めたあとに、弁当屋を経営した経験があります。その経験が創業のきっかけになりました。会社員時代は、組織の一部として経理や総務、営業として仕事をしていましたが、弁当屋を1人で開くとなると、すべて自分でまかなわなければなりません。
弁当屋では、380円の弁当を福岡空港のコンコースで10個売ったのがスタートでした。箱やネーミング、中身などすべて自分で考えて作ったものを買っていただき、「私が作ったものでも対価をいただけるんだ」「おいしいと言っていただけるんだ」と、大変感動しました。そこで事業のおもしろさを感じ、社長になろうという思いが生まれました。
どのような事業を起こすべきかマーケティングやリサーチをする中で、当時は女性の社会進出や少子高齢化、グローバル化が大きな課題だとわかりました。その中で、私自身が女性であることも強みだと考え、女性目線の仕事ができると思いベビーシッター事業からスタートしました。
その頃のベビーシッター業界は、一番売上がある企業でも1億円程度で、大変マーケットが小さい時代でした。そのようなニッチなところからビジネスに挑戦したいと思ったのが、創業のきっかけです。
坂本:それから保育事業に進んでいくという順番ですか?
池内:おっしゃるとおりです。
グループ概要
池内:グループ概要です。テノ.ホールディングスは純粋持株会社で、その傘下に5つの100パーセント子会社があります。テノ.コーポレーションは、認可保育所や小規模認可保育所、院内・事業所内保育所、学童保育所、「わいわい広場」の受託運営と、あらゆる保育事業を行っています。
オフィス・パレットは、名古屋市で認可保育所の運営とベビーシッターサービスを行っています。フォルテでは、介護事業と高齢者向けの住宅の運営事業を行っています。
M&Aで新たに子会社になったホームメイドクッキングは、料理教室です。セーフティージャパン・リスクマネジメントの本社は福岡県ですが、大阪府や愛知県、東京都で少額短期保険事業を展開しています。
沿革
池内:沿革についてです。主婦をしながら1999年に会社を立ち上げ、最初は3万8,000円くらいの売上からスタートしています。私どもの会社ががんばったのもありますが、事業環境として追い風があり、必要とされる事業に取り組み続けてきました。22期連続で売上を伸ばしており、2021年に東証一部に上場を果たしたところです。
私としては女性のライフステージを応援したいと思ってスタートしましたが、1時間1,800円ほどのベビーシッターサービスをどのくらいの方が利用できるかと言いますと、大変少数になります。そのような意味で、企業や国を巻き込んで、安価な料金で保育が利用できる仕組みを作りたいと、事業所内保育所や認可保育所などの開設を進めてきました。
ガバナンス体制(2023年3月23日時点)
池内:ガバナンス体制についてです。私をトップとしつつ、役員の男性陣、2名の女性執行役員は現場に近いところで支援しながら進めています。
売上高構成比
池内:売上高構成比です。公的保育事業が一番多く、62パーセントとなっています。ブランド名としては、「ほっぺるランド」と「こととも保育園」があります。
次に受託保育事業が18パーセントとなっています。企業の福利厚生として設置される事業所内保育所や、病院の中の保育所、学童保育を展開しています。また、介護事業が4パーセントで、生活関連支援事業が5パーセントという構成です。
事業内容① 保育事業(公的保育)
池内:公的保育事業についてご説明します。東京都が中心で、ほかには福岡県、大阪府、名古屋市で、認可保育所を運営しています。認可保育所は、自治体から補助金をいただいて保育サービスを提供する事業です。設備投資の負担があり、自由度も低い反面、長期安定収益が見込めます。
事業内容② 保育事業(受託保育等)
池内:受託保育事業についてご説明します。こちらは「持たざる経営」として、院内・事業所内保育所では、企業から保育料をいただいて保育サービスを提供しています。学童保育所等は、自治体から指定管理を受け、補助金をいただいてサービスを提供する事業です。
事業内容③ 介護事業
池内:介護事業としては、フォルテが運営する住宅型介護施設や、通所介護施設があります。
坂本:保育事業をずっと続ける中で、介護事業も始めた理由やシナジーがありましたら教えてください。
池内:私たちの事業は、「手の」ぬくもりが感じられる人的なものであり、介護も保育も目指すところは同じです。介護施設には、育児や家事、介護をしながら働き続ける女性、また「手の」ぬくもりに共感してくれる職員がたくさんいます。
相手が子どもか高齢者なのかが違うだけで、その方たちとなら同じものを目指し、ともに事業ができると考えました。そのため、大変入りやすい事業だと思い、進めているところです。
事業内容④ 生活関連支援事業
池内:2022年11月から料理教室事業をスタートしました。また、少額短期保険業についても、新たな生活関連支援事業として進めているところです。
坂本:最近グループに入ったホームメイドクッキングとは、どのようなシナジーがあるのか、料理教室事業を始めた経緯も含めて教えてください。
池内:食育という部分では、保育や介護とも関連します。そのような部分のシナジーもありますが、もう一方で私は女性のライフステージを応援したいという考えもあります。どのようにしたら女性が世の中で活躍できるのか、どのように少子化対策ができるのか考えてきました。
スライドに掲載している写真で、エプロンをつけているのは全員女性です。私たちはジェンダー平等の意識の中で、写真の人物が全員男性になるように支援しています。現在のユーザー以外の男性ユーザーも含めて、事業的に新たな戦略で進めていけますので、当社の目指すところと共感できる事業だと思っています。
坂本:料理教室事業は赤字だったと思いますが、こちらは新型コロナウイルスの影響ですか? 50年の歴史があるため、黒字の時期もあったのでしょうか? 御社グループに入り変わるとは思いますが、買収前の状況を教えてください。
池内:買収したのが新型コロナウイルスが落ち着いたころで、直近3年間の成績は非常に悪いものでした。しかし、その前は黒字の状況でしたし、今期も少しずつですが回復してきています。通期で見ると、クリスマスやお正月がある後半のほうが伸びていくため、今期も後半にもう少し持ち直すだろうと見ています。
事業内容⑤ その他
池内:その他として、ベビーシッターやハウスサービス、「テノマリ」、「テノスクール」、「保活アシスト」、人材派遣サービスがあります。子育てや家庭支援について多様な事業を展開しています。
運営施設数の推移(セグメント別)
池内:スライドの図・グラフは、セグメント別の運営施設数の推移を示しています。黄色い部分には生活支援事業が少し含まれており、現在は合計で363施設です。
テノ.ホールディングスの「特長」と「強み」
池内:私どもの特長についてご説明します。1点目は、先ほどもお伝えしたとおり、それぞれの事業において女性目線で付加価値サービスを提供することを大きく掲げている点です。
2点目の多様な子育て支援と多様な働き方については、お客さまだけではなく、社員に対してもそれぞれのライフステージに合わせた働き方を提供しています。また、3点目として「テノスクール」という学校も運営しています。
4点目の公的保育事業・受託保育事業については、東京都では待機児童解消のための公的支援が必要で、地方は人手不足のため福利厚生が必要ですので、これを両輪で行っています。
特長と強み① 女性目線~本物の保育
池内:一般的な保育所は、子どもたちへの理念を持って運営していますが、当社は子どもと保護者の両方に対する理念を持っている会社です。子どもたちが将来、「うまれてきてよかった!」と思えるように、保育課程からプライベートカリキュラムまで具体化し、英語やSTEAM教育、あるいは国際交流等、いろいろなかたちで支援しています。
特長と強み① 女性目線~子育て支援
池内:一方、おかあさんたちに対する取り組みについてです。仕事と子育ての両立は大変ですが、「産んで良かった!!」と思っていただけるような支援を行っていきたいと思っています。忙しいおかあさんたちが、ストレスを抱えずに子育てできるように、さまざまな取り組みを行っています。
1つの例ですが、スライド右側に「小さなおにぎり」と記載しています。当社の保育所では、夕方になると子どもに「小さなおにぎり」をあげています。その理由は、子どもとおかあさんが家に帰り、おかあさんが夕飯の用意する間に、子どもが泣かずに待てるようにするためです。そして、夜にはおかあさんと子どもが絵本の読み聞かせなどのコミュニケーションを取り、また次の日に元気に保育所にやってくるという暮らしの実現を支援しています。
おかあさんのストレスを解消するために、何をすべきかを考えながら事業を展開しており、そのような意味では「24時間に寄り添う子育て支援」と言えます。現在は、オムツのサブスク等も導入しながら進めています。
特長と強み② 多様な子育て支援・多様な働き方
池内:当社はベビーシッター事業からスタートしていますので、「好きな時間に好きな場所で」仕事ができることをキャッチコピーに掲げています。女性のライフステージに合わせて働き方、職種、働く場所を多様なかたちで提供できるということです。
また離職した人も、子どもが小さい時には、土日にしかベビーシッターができなかったが、子どもが少し大きくなり、やはり大学に行かせるのにお金がかかるとなれば、常勤の仕事に戻ることができます。このように多様な子育て支援をしている結果、多様な働き方ができるということが大きな強みだと思っています。
特長と強み③ テノスクール(tenoSCHOOL)
池内:「テノスクール」についてです。2005年から、保育士やベビーシッターの人材育成をしながら事業展開しています。
ベビーシッターについての問い合わせは、料金関係のものもありますが、やはり「どのような人が来てくれるのか?」という質問が多いです。その質問に答えられるようにスクールをスタートしました。現在は、各自治体の子育て支援研修や、認可保育所の研修等も行っています。
特長と強み④ 公的保育所と受託保育所を両輪で展開
池内:先ほどお伝えしたとおり、私どもは福岡で創業しました。福岡で築き上げた人材・ノウハウを、アジアの玄関口である国際都市・東京、そして大阪へ提供しながら、女性目線で事業を展開していきたいと思っています。
コア・コンセプト~ライフステージとサービススコープ
池内:スライドには「結婚」「出産」「育児」「八面六臂」「介護」と女性のライフステージを記載しています。昨年は、売上高の8割が「出産」「育児」に当たる子育て事業だったため、こちらを横展開していきたと考えています。特に「介護」は今後強化していきたい分野です。
また、教育分野についてはバイリンガル幼児園等も含めて縦展開していきたいと考えています。このように女性のライフステージにおいて、いったい何が必要なのかを中心に考え、事業展開していきます。
2023年12月期第2四半期決算ハイライト
池内:決算ハイライトです。売上高は71億5,600万円で、前年同期比プラス20.7パーセントとなりました。営業利益は7,100万円で前年同期比マイナス8パーセント、純利益は8,100万円で前年同期比プラス220パーセントとなっています。
スライド中段には、新規開設とトピックスについて記載しています。トピックスは後ほどご紹介します。
スライド下段には、下方修正した業績予想を記載しました。売上高は147億円、営業利益は2億円、当期純利益は1億2000万円に修正しています。
まだ第2四半期ですが、売上高はM&Aによる新しい売上が計上されています。一方で4月に開設した通常の認可保育所等への入所数が予想より少なかったため、利益の業績予想を下方修正しています。
坂本:最近、電気代なども上がっているため、コストもかさんでいますか?
池内:労務費もですが、おっしゃるとおり水道光熱費が大変上がっていることもコスト増の要因です。現在、そのあたりを全体的に改善しているところです。
坂本:なるほど。保育事業より介護事業のほうが意外と光熱費がかかりそうですね。
1株当たり配当について
池内:スライドには、1株当たりの配当について記載しています。今期も昨年同様、9円となる予定です。
坂本:配当を決める上で、配当性向や、資本に対して考えるDOEなどがあると思うのですが、御社はどのような指標をお考えですか? 現状では、増配が続いている状況ですが、そこに注力するのか、あるいは利益から還元するのかを含めてイメージを教えてください。
池内:まだ上場して数年ですので、その点はまだ決めていません。今は財務体質の強化をしつつ、投資をしないといけない時期だと考えていますが、配当も継続的に行っていきたいという思いで経営しています。上場している以上、さらに利益を上げて、配当を増やせるような会社でありたいと思います。
トピックス
池内:スライドには、今期新たに取り組んだトピックスだけを載せています。まず、先ほどお話ししたとおり、今年1月にセーフティージャパン・リスクマネジメントの株式を取得しました。これにより、女性のライフステージに応じた保険サービスの開発・提供をしていきたいと思っています。
坂本:現状はまだ具体的な保険商品の販売はしていないのですか?
池内:おっしゃるとおりです。現状は、外部に発注している各種の保険を内製化することから始めています。
坂本:なるほど。今は、どのような保険を外部発注しているのでしょうか?
池内:火災保険などです。これは、当社の職員が賃貸で自宅を借りていることが多いためですが、ほかにも各種保険を洗い出し、できるだけ内製化を図りたいと考えています。基本的には、女性を対象とした場合、将来に備える保険よりも短期的な保険があったほうがよいと思いますので、そのようなことが事業として実現可能なのか検証しながら行っているところです。
トピックス
池内:スライドには、今回オープンした「ほっぺるランド相生橋つくだ」について記載しています。
トピックス
池内:今年4月にテノ.コーポレーションとテノ.サポートを同時に吸収合併しました。目的は、企業構造のスリム化と経営資源の有効活用です。
一方で、福岡で多様な事業とビジネスモデルをつくり、東京、大阪に展開するとお話ししましたが、実はテノ.コーポレーションは東京では認可保育所がメインで、ほかの事業は行っていませんでした。そこで現在、テノ.サポートが保有するベビーシッターや学童保育所のような事業を大阪あるいは東京で展開しています。この吸収合併により、もう一歩、マーケットを拡大していく考えです。
トピックス
池内:すでに開示していますが、初めての取り組みとして2024年4月に、バイリンガル幼児園「KDI福岡アイランドシティ」を福岡に開設します。定員数342人と、九州初の大規模なバイリンガル幼児園です。
坂本:東京にも英語教育を行う幼稚園はよくありますが、バイリンガル幼児園の特色はありますか?
池内:私どもは保育所も経営していますので、保育所と幼稚園の良いとこ取りができます。一般的に幼稚園は開園時間が短いのですが、バイリンガル幼児園は保育所と同じように、朝から夕方まで預かることができます。
坂本:長く預かってもらえるのですね。
池内:時間としては保育所の良いところ、教育が手厚いという意味では幼稚園の良いところを持っており、働く女性たちが安心して預けられる仕組みになっていると思います。
坂本:料金体系はどのようになっているのでしょうか?
池内:月に10万円から11万円ぐらいです。
坂本:時間も長いですし。
池内:ただし、3歳児からの無償分が3万7,000円ほど補助金として入ります。習い事にかかる費用をすべてここに使うと考えれば、それほど高くない料金だと思っています。
坂本:アイランドシティは人工島ですよね。物流や工場ゾーンは、開発がある程度終わっています。そのようなエリアの竣工が最近あったので、将来的には近くに住む子どもが減ってくると思います。こちらの対策としては、スクールバスをたくさん出して、周辺地域から子どもを集めてくるようなかたちをお考えですか?
池内:今回もバスは5台ぐらい出していますが、アイランドシティという場所を選んだ理由は、まだまだ開発が進んでおり、バイリンガル幼児園の隣に新しく小学校ができるほど子どもが増えているためです。
やはり私たちが不安に思うのは、人の流動はどうなのかという点です。ただし、アイランドシティの住民の3割は賃貸住宅に住んでいるため、メリットは非常に大きいと思います。
坂本:福岡の中では所得も高いほうでしょうからね。バイリンガル幼児園がアイランドシティで成功すれば、将来的には他地域への展開もお考えですか?
池内:やはり多様性という観点でいうと、認可保育所も企業内保育所もよいのですが、もう1つの選択肢として、このようなインターナショナルな施設も今後必要だと思っています。そのような意味では、この「KDI福岡アイランドシティ」が最初のスタートです。
トピックス
池内:こちらのスライドには、海外交流プログラムの開始や保育所の取り組みを記載しています。
トピックス
池内:8月10日に株式会社ウィッシュの株式取得を開始しました。100パーセント取得するのは10月になる見込みですが、保育事業における療養機能の追加が目的です。ウィッシュは児童発達支援、放課後のデイサービスを運営しています。
さらに孫会社の子育てサポートという会社も今回M&Aしています。子育てサポートは直営事業所が8施設、フランチャイズ加盟数が43施設あるため、私どもの保育サービスの強化・拡充につながると思っています。
トピックス
池内:新型コロナウイルス感染症対策応援企画の第7弾として、「無償オンライン保育士講座」を実施しています。累計の登録者数が1,000人以上、視聴回数は2万3,000回とがんばっているところです。
坂本:こちらの講座は御社の保育士ではない方も見ていると思いますが、この取り組みを採用につなげるお考えや実績はありますか?
池内:このプログラムを卒業して当社に入る方もいます。こちらは新型コロナウイルス感染症によって仕事を失った人たちへの支援事業として開始しており、大変感謝されています。保育士になりたい人がまだまだいるという事実にも喜んでいますが、できるだけ当社の人材採用につなげたいという思いで行っています。
坂本:保育士の資格は独学で学び、その後実技を行うと、大学に行かなくても取れるのですよね。
池内:ただし、自分だけで学ぶと意外と大変なので、そこを支援しています。こちらは今まで有料で行っていたものを無償で提供しています。
坂本:カリキュラムもしっかりしているということですね。
池内:10年以上行っている事業ですが、コロナ禍でオンライン講座が浸透したため、このようなかたちで進めています。
わたし、選んで、生きていく。
池内:成長戦略についてご説明します。まずは動画をご覧ください。
(動画流れる)
Purpose 存在意義
池内:私どもは、女性が育児をしても、家事をしても、介護をしても働き続けるために、いったい何が必要なのかずっと求め続けています。動画にあったとおり、ライフステージの中で起こりうるさまざまな出来事に対して、たくさんの解決の選択肢が当たり前にあること、誰もが自分らしい働き方や生き方が選択できることを、この「手のぬくもり」で支えていきます。
私どもの存在意義、パーパスは「『手の』ぬくもりで、安心できる社会を創造する。」です。そして、「わたし、選んで、生きていく。」をキーメッセージに掲げています。さらに、冒頭でお伝えした経営理念と、後ほどご紹介する「teno VISION 2030」の下で成長戦略を考えています。
SDGsの取り組み
池内:SDGsへの取り組みについてです。スライドに記載した3つに注力をしていますが、特に「ジェンダー平等を実現しよう」ということを大きく掲げています。
SDGs:ジェンダー平等を実現しよう
池内:創業以来、一貫してジェンダー平等の実現に取り組んできました。「女性が活躍する社会の創造」というビジョンと、「女性が活躍する事業展開」という戦略を、しっかり進めていきたいと思っています。
SDGsの取り組み
池内:テノ.グループ社内のジェンダー平等にもコミットします。基本的に、現場でも女性がとても多いため、他社よりはジェンダー平等が進んでいるかと思います。
しかし、前々年あたりに調べたところ、意外と男性が育児休暇を取っていないことがわかりました。そのあたりも含め、社内のジェンダー平等にもしっかりコミットしなければならないという思いで進めています。
コア・コンセプト〜ライフステージとサービススコープ
池内:私どものパーパスは、「手の」ぬくもりを持ちながら、女性を応援して社会を変えていくことです。そのために必要な事業は何なのかということを考え続けながら、事業を進めていきたいと思います。
「teno VISION 2030」
池内:「teno VISION 2030」についてです。時代に求められるサービスを提供するプロフェッショナル集団となり、働き手にとって最も自己実現が可能な家庭総合サービスグループを目指します。
私どもは今、売上高の8割が保育事業の会社ですが、2030年には「家庭総合サービスグループ」と呼ばれるように、その他の事業も十分に成長させていきたいと考えています。そのためには、スライドにあるとおり、働き手視点、顧客・クライアント視点に応えられるようにすることが、私どものビジョンの実現と、「選ばれる企業集団」になるために重要だと考えています。
特に、スライド左側の働き手視点に、「グループ全体の収益が高いため、処遇は他社よりも高く設定されている」とありますが、これらのビジョンはすべて現場の声を反映したものです。裏を返せば、今はまだそのような状況にないということですが、みんなに喜ばれる会社にしていきたいと思っています。
「teno VISION 2030」達成に向けて
池内:こちらのスライドには、「teno VISION 2030」を実現するため、現場で行っていることを記載しています。働きがいがある会社を目指し、楽しく働くために「チームエンゲージメント」を行っています。
また「保育みらい研究所 Compass」では、保護者のみなさまに選ばれる保育所にするため、「子どもがここに行きたい」と言うためには何を提供したらよいかなどを研究しています。
中期経営計画と長期ビジョン
池内:中期経営計画の基本方針です。1つ目は、先ほどお伝えした公的保育事業、受託保育事業における事業拡大と、M&Aによる事業拡大です。2つ目には、「サービス品質」を追求し、選ばれる施設作りを行います。
3つ目に、人事制度と人材育成制度の一体改革に着手します。4つ目は新規事業の立ち上げです。5つ目に、介護事業における事業拡大に注力し、公的保育事業、受託保育事業に続く柱にしていきたいと考えています。
事業環境① 環境動向
池内:私どもの事業環境です。世界中のインフレ、そして継続する新型コロナウイルス感染症による影響の中で、みなさまもご存じのように、出生率は2022年に過去最低となりました。
2023年度の待機児童が過去最少となった中で、2023年4月に少子化対策として、子どもを産み育てることのできる環境整備、保育士の処遇改善、保育所の配置基準の見直し、「こども誰でも通園制度」等のいろいろな制度が出来ているところです。
事業環境② 次元の異なる少子化対策(政府方針)
池内:そのような中で、特に株価が上がった時がありました。これは「異次元の少子化対策」が発表された時です。実際に発表されている政策はまだ少ないのですが、2024年度から「こども誰でも通園制度」がスタートします。
保育所は、保護者が働く中でなかなか保育ができない家の子どもたちを預かるというところからスタートしているため、働いている保護者以外の子どもは預けられませんでした。今後は、誰でも保育所を利用できる仕組みがスタートします。それ以外にも、児童手当、出産・子育て応援交付金、育児給付率等、いろいろなものが出てきているところです。
事業環境③ 少子化対策:東京都、福岡市
池内:東京都、福岡市の少子化対策についてです。東京と福岡で一番大きいのは、0歳から2歳児の第2子以降の保育料無償化です。こちらが、私どもにかなり効果があるのではと思っています。
坂本:東京と福岡はどちらかといえば、全国的にも手厚い地域であるということですね。
池内:そうですね。いろいろな子育て支援がありますが、おかあさんたちにとっては、大変ありがたい支援ではないかと思っています。
事業環境④ 幼児教育・保育の無償化に関して
池内:幼児教育・保育の無償化に関してです。スライドの棒グラフの赤い部分が保育所に通っている子どもたちで、0歳児からいますよね。そして、グレーの部分が幼稚園に行っている子どもたちです。
一方で、ピンクの部分はどこにも行っていない子どもたちです。基本的に、少子化ですので子どもは減っていく中で、「保育所はどうなの?」と思われるかもしれませんが、保育所に行っていない子どもたちはまだまだたくさんいます。誰でも預けられるようになることもあり、需要はまだまだ伸びると思っています。
事業環境⑤ 人手不足と女性の社会進出
池内:子どもが少なくなる影響はもちろん、一番大きいのは、女性が働くか働かないかということです。女性が世の中で活躍すれば活躍するほど、保育所は増えていきます。そのような意味でも、まだまだ需要はあると思っています。
事業環境⑥ セグメントの市場動向と今後の取り組み
池内:セグメント別の市場動向です。スライドでは、保育事業、介護事業、生活関連支援事業について記載しています。先ほど事業環境をお話ししたとおり、少子化は進んでいますが、保育所で預かっていない子どももたくさんいます。そのため、マーケットはまだまだ拡大すると考えています。
さらに、介護事業はみなさまもご存知のように、2040年には市場規模が2.5倍になる見通しですので、まだまだ拡大できると考えています。そして、保育事業、介護事業が進むと、生活関連支援事業もどんどん進んでいくのではないかと思っています。
中期経営計画と長期ビジョン
池内:このような中で、私どもは30年の長期ビジョンを作っています。戦略の1つ目が保育関連事業の拡大です。2つ目が新規事業の創出、3つ目がM&Aによる事業拡大です。
2030年には保育関連事業が4割、介護・その他事業が6割というかたちになるよう、毎年ローリングしながら進めていきたいと思っています。
質疑応答:事業拡大戦略について
坂本:2030年にはかなり業績が伸びる予想とのことですが、これは2桁成長で緩やかに伸びていくかたちなのでしょうか? 介護事業をいきなり作っていくのは難しく、M&Aしていくイメージがあるのですが、そのあたりのお考えを教えてください。
池内:おっしゃるとおり、毎年ローリングするのはM&Aのイメージがなかなか描けないためです。私どもは、毎年M&Aしながら事業を拡大していますが、これがないとなかなか厳しい状況にあります。
既存の事業、特に保育関連事業の売上高200億円は順調にいけば達成できると思うのですが、それ以外の部分については、M&Aや他社との事業連携をして初めて、全体で500億円の売上高が見えてくると考えています。
坂本:確かに「介護は意外と電気代が高い」という話は、M&Aを仲介している人からよく聞きます。
池内:私どもとしても、毎年10ヶ所ずつくらい介護施設を作っていこうと考えていたのですが、初期投資がかなり高騰しているのですよね。採算も少し難しいところがあるため、M&Aも含めつつ、自社では来年に埼玉に2ヶ所開設予定です。
坂本:そこでノウハウを得ていくのですね。
池内:あとは、委託ですね。私どもは保育事業も直営と委託のどちらも行っていますので、直で作ることに加え、委託も含めて開発していくことが重要だと思っています。