2023年8月10日に発表された、株式会社ブロードバンドセキュリティ2023年6月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社ブロードバンドセキュリティ 代表取締役社長 滝澤貴志 氏
PLサマリー
滝澤貴志氏:ブロードバンドセキュリティの滝澤です。本日はご視聴いただき、誠にありがとうございます。これより、当社の2023年6月期通期決算内容についてご説明します。どうぞよろしくお願いします。
さっそくですが、2023年6月期通期業績ハイライトからご説明します。当社の2023年6月期の経営成績は、引き続き旺盛なセキュリティ需要を背景に、前年同期と比較して増収増益となり、通期ベースで過去最高の売上高、利益水準となりました。
売上高は59億400万円、営業利益は5億3,100万円、経常利益は5億2,800万円、当期純利益は4億1,600万円となり、売上原価と販売費及び一般管理費の増加を吸収し、前期比で増益となりました。
業績ハイライト
売上高については、おかげさまで10期連続の増収となりました。また、売上高の増加に伴い、安定的に営業利益を計上できるようになっています。
サービス区分別売上高推移
3つのサービス区分別売上高推移です。セキュリティ監査・コンサルティングサービスでは、自動車関連業界を中心としたサプライチェーン向けの案件が増加したことに加えて、アドバイザリサービスの顧客数の増加に伴う定常収益の増加が寄与しています。
脆弱性診断サービスでは、旺盛な需要が続いており、大規模診断案件の増加と人材育成による生産体制の強化が、売上高の増加に寄与しています。
情報漏えいIT対策サービスでは、サイバー攻撃とセキュリティ事故の増加に対応するため、24時間体制で提供するセキュリティ監視運用サービスが堅調に推移しており、定常収益の増大につながっています。これらの結果、各サービス区分とも過去最高の売上高を更新しました。
セキュリティ監査・コンサルティング
それぞれのサービス区分別のトピックについてご説明します。1つ目は、セキュリティ監査・コンサルティングサービスです。クレジットカード業界向けの案件も、最新バージョン「PCI DSS v4.0」への対応案件が増え、好調に推移しました。
また、ランサムウェア感染拡大を受けて、自動車産業をはじめとしたサプライチェーンに対するセキュリティ対策へのニーズが拡大しており、さまざまなガイドラインに準拠するための取り組みを支援するコンサルティングサービスを拡充しています。
特に、一般社団法人日本自動車工業会および一般社団法人日本自動車部品工業会のガイドラインに対応するサービスが好調に推移しています。
脆弱性診断
2つ目は、脆弱性診断サービスについてです。本サービスも、顧客ニーズの拡大を背景に、多数の大規模案件を獲得したことで過去最高の売上高となっています。
また、情報漏えい事故調査である「デジタルフォレンジックサービス」と連動し、事故後速やかに脆弱性診断を提供できる体制を整えていることも当社の特徴となっています。迅速な脆弱性診断の実施により、事態の収束と再発防止に寄与することで、お客さまの事業継続を支援しています。
また、積極的にサイバー攻撃の可能性を予測し、セキュリティ事故を未然に防ぐニーズも増えており、それに対応する新サービスも開始しました。
情報漏えいIT対策
3つ目は、情報漏えいIT対策サービスについてです。このサービスは、24時間365日体制で実施するセキュリティ監視の「マネージドセキュリティサービス」が、主要な事業となっています。
特に、1年以上の契約期間のサービス売上、つまり、定常収益の顧客数が順調に拡大しています。中でも、「EDR(Endpoint Detection And Response)」と呼ばれるエンドポイントの監視運用サービスの取引社数が増大しており、この監視端末数は延べ約5万端末となりました。
また、情報漏えい事故の調査「デジタルフォレンジック」や、「PFI(PCI Forensic Investigator)」と呼ばれるクレジットカード情報に関する事項を専門に扱う案件についても、継続的に案件が増加しています。
BSサマリー
バランスシートのサマリーです。純資産は16億2,800万円、自己資本比率は45.6パーセントとなり、前期末と比べて6.3ポイント増となっています。
CFサマリー
キャッシュ・フローのサマリーです。営業活動によるキャッシュ・フローは、前払費用の増加などで前期と比較し減少しましたが、投資活動によるキャッシュ・フローと合わせたフリーキャッシュ・フローは4億700万円となっています。
財務活動によるキャッシュ・フローと合わせて、現金及び現金同等物の期末残高は、前期比で9,300万円のプラスとなり、13億5,600万円です。
2023年6月期のトピックス①
2023年6月期のトピックをいくつかご紹介します。1つ目のトピックスです。2023年3月に、秋田県や秋田大学などと、秋田県におけるデジタル人材育成の強化・情報関連産業の振興および地域社会の活性化を目指す協定を締結しました。
当社では、2018年に秋田県および秋田市と立地協定を結び、2021年に東北セキュリティ診断センターを開設し、秋田での新卒定期採用や中途採用を進めています。引き続き、地方創生の支援と、優秀な人材採用に向けた取り組みとして、連携を強化していきます。
2023年6月期のトピックス②
2つ目のトピックスです。当社の脆弱性診断サービスに三井住友海上社のサイバー保険を自動付帯するサービスを2022年7月に開始しました。
当社で実際に扱っているセキュリティ事故では、初動対応にかかる費用がおよそ1,000万円であることから、その金額を考慮したサイバー保険を付帯しています。脆弱性診断にサイバー保険を付帯することで、お客さまの迅速な初動対応と事業継続を支援する取り組みを行っています。
2023年6月期のトピックス③
3つ目のトピックスです。会社法の改正に伴い、株主総会資料の電子提供制度が始まったことに対応し、2023年5月に新たなサービス「BBSecヘルスチェックサービス」を開始しました。
これからも、時代やお客さまの求めるサービスをタイムリーに提供していくことで、「便利で安全なネットワーク社会を創造する」という当社ビジョンの実現に取り組んでいきます。
ブロードバンドセキュリティの目指す方向性について
今後、当社が目指す方向性についてお話しします。1つ目は情報セキュリティ市場の拡大、2つ目は当社サービスの拡充、3つ目は当社の人的資本への投資に関連して、コンサルタント・エンジニアの育成についてご説明します。
①情報セキュリティ市場の拡大
情報セキュリティ市場の拡大についてご説明します。ニュース等でも報道されているとおり、サイバー攻撃は増加の一途を辿っています。
スライド左側のJPCERTコーディネーションセンターのレポートをご覧ください。セキュリティインシデントは今年に入ってから急激に増加しています。
中でも、ランサムウェアと呼ばれる身代金要求型の攻撃は、スライド右側の警察庁が発表したグラフからもおわかりいただけるように、前年比で58パーセントも被害が増加しています。自動車関連業界などのサプライチェーンや病院など、対策が手薄な企業や団体が標的にされたニュースはみなさまの記憶にも新しいと思います。
①情報セキュリティ市場の拡大
特に、従来からセキュリティ投資に積極的だった超大手企業だけでなく、大手や中堅企業においてもセキュリティ投資が活発になってきています。これは、攻撃者がセキュリティ対策の行き届いた超大手企業のみならず、サプライチェーンでつながるセキュリティ対策が比較的脆弱な企業を狙うようになり、セキュリティ事故が多発していることによるものです。
①情報セキュリティ市場の拡大
日本自動車工業会および日本自動車部品工業会が、会員企業である各メーカーに対して、業界標準のガイドラインを用いたセキュリティの取り組みを要求する等の動きも見られ、この流れは今後も加速するものと思われます。当社としては、日本自動車工業会・日本自動車部品工業会のガイドラインに対応したサービスを拡充し、今後積極的に事業展開を図っていきたいと考えています。
また、さまざまな業界のガイドラインに対応したサービスも拡充していきます。
②フルラインナップのセキュリティサービス拡充
当社のサービス体系についてご説明します。当社では、上流のセキュリティ監査・コンサルティングから、脆弱性診断、セキュリティの監視・運用まで、フルラインナップのセキュリティサービスを提供できる体制を確立しています。お客さまのニーズに合わせ、必要なサービスを組み合わせて提案できることが当社の強みです。
当社のお客さまはスポット型サービスの取引からはじまり、情報漏えいIT対策等の定常収益型サービスを提案することで、継続的な取引の維持と、取引額の拡大ができるモデルとなっています。またお客さまにとっては、緊急時の事故対応も当社サービスでカバーできることが安心につながっています。
②フルラインナップのセキュリティサービス拡充
フルラインナップのサービスを提供してきた結果、直近4期で顧客数が370社増加し、前期実績では1,568社となりました。フルラインナップのサービスを武器に、今後さらに顧客数の拡大に取り組んでいきます。
②フルラインナップのセキュリティサービス拡充
セキュリティの運用・監視を行うSOC(Security Operation Center)の利用に代表される定常収益型のサービスは、お客さまとの継続的な関係性を維持するための基盤となっており、当社の全売上高の40パーセントを占めています。定常収益型のサービスの拡充を通じ、お客さまの安全安心と、当社の事業の拡大に取り組んでいきたいと思います。
②フルラインナップのセキュリティサービス拡充
フルラインナップのサービスを提供することで、継続的な取引、つまりリピートオーダーにもつながっています。前々期に取引のあったお客さまのうち、75パーセントは前期も引き続き取引していただいています。
また、取引中のお客さまにクロスセルを推進することで、2019年6月期には306万円だった顧客単価も、2023年6月期には377万円と、20パーセント以上増加しています。
②フルラインナップのセキュリティサービス拡充
フルラインナップのサービス提供の要の1つに、クレジットカード情報の漏えい事故に対応できる「デジタルフォレンジックサービス」があります。当社は、国内でも数少ないカード情報の漏えい事故調査を取り扱うことができる機関の1つとして認定されており、被害者となった企業・団体の緊急対応のニーズに応えることができます。
セキュリティ事故に対する緊急対応実施後の支援も合わせて、顧客を支援する体制を拡充することで、新しいお客さまの獲得も行っています。
③コンサルタント・エンジニアの育成
人材育成の取り組みの事例についてご説明します。お客さまにご満足いただける、進化するサイバー攻撃に対応した高度なセキュリティサービスの提供に向けて、コンサルタントやエンジニアに代表される人的資本への積極投資を行っています。
当社では標準勤務時間を1日7.5時間から6.5時間に短縮し、短縮した1時間を未来に向けた成長のための「みらい時間」として活用することを推奨しています。「みらい時間」を通じた資格取得や、最新技術の習得等、社員一人ひとりがスキル向上に向けて取り組むことを支援しています。
③コンサルタント・エンジニアの育成
「みらい時間」を使った資格習得を推進した結果、AWS認定資格取得者数は1年間で100名を超えたほか、そのほかのセキュリティ資格保有者も多数在籍することとなり、さまざまなサービス展開につながっています。
③コンサルタント・エンジニアの育成
資格習得については、スライドに記載のある資格を含め、100種以上の資格の取得を奨励しており、受験費用の会社負担や勉強会の開催、資格手当の支給といった制度を整備し、人材育成を通じた企業価値向上に取り組んでいます。
③コンサルタント・エンジニアの育成
人的資本への投資に関して、優秀な社員を採用することは重要な経営課題だと認識しています。前期より新卒定期採用を開始し、新卒社員7名を含め、従業員数は19名増の241名となりました。
一方で、コンサルタントやエンジニアに対する教育や資格取得の積極的な推進と高品質なサービスを実現することにより、1人当たりの売上高も2018年6月期は1,850万円でしたが、2023年6月期は2,450万円と、32.5パーセント増加しています。
当期も引き続き人的資本への投資を継続し、高品質なサービスを提供することで企業価値の向上に取り組んでいきます。
2024年6月期業績予想
2024年6月期業績予想についてお話しします。当社がターゲットとする大手・準大手企業の市場拡大を見込んでいます。
また、フルラインナップのセキュリティサービスを通じた新規顧客の獲得に加え、定常収益型サービスの拡大と高いリピート率の維持、クロスセルの実現による営業効率の向上を通じて、顧客数と顧客単価の向上を実現します。
さらに、コンサルタントやエンジニアの育成による人的資本とサービスの拡充、生産性の向上を図ることで、さらなる事業展開を進めていきます。
2024年6月期業績予想
2024年6月期の売上高は65億円、営業利益は6億5,000万円、経常利益は6億4,000万円、当期純利益は4億4,000万円を見込んでいます。
事業モデルのイメージ
こちらのスライドは事業モデルのイメージです。スポット型サービスによる新規顧客の獲得と、顧客への定常収益型のサービスのクロスセル、アップセルにつなげることで、今後もさらなる事業の拡大を目指していきます。