給食は味がうすいと、学校に食塩を持参する中学生

給食がまずくて大量の食べ残しが発生したというニュースが流れました。異物混入や冷たいという問題は別にして、給食がまずいという話は今に始まったことではありません。というわけで都内の中学生数人に尋ねてみました。

「おいしくはないけど、食べてるよ。食べないとお腹すくもん」という声が多く、大きな不満をもらす声はありませんでした。そのなかで気になったのは、こんな声です。

味がしないんだよな。だから塩を持って学校に行ったら、先生に見つかってさ。

「食べ物を持ってくるのは校則違反だってことは知っているんだろ」と問い詰められたから、言ったんだぁ。
「お菓子とかはダメだって知ってるけど、塩は食べ物じゃなくて調味料だから」

一休さん並みのとんち問答のおかげか、その日はおかまいなしですんだそうです。

ところで「味がうすい」という声は、食べ残し問題が発生した学校でもあがっているようです。給食を納入している業者は「献立も調理方法も運搬方法も指定されている。……改善の必要があるなら、栄養士や教育委員会と話さないといけない」と答えています

栄養学上の最適塩分量は、個人差に対応できるのか

業者の返答から考えると、学校給食は栄養学的に見て最適な塩分量で提供されているということになります。塩分の取り過ぎが健康に悪影響のあることはよく知られています。レトルト食品やいわゆるジャンクフードを食べ慣れている現在の中学生たちには、最適な塩分量がうす味に感じてしまうのかもしれません。

一方で、塩分不足も健康によくないという説もあります。他の学説がしばしば変わるように、現在の栄養学での最適量が変わることは絶対ないと言い切れるのかという不安もあります。昔は運動中には水分をとるのはわるいことと言われましたが、今はマラソン選手を見ても競技中に水分をとっています。

また、最適の塩分量は、すべての中学生に共通するのかということも不明です。体の大きな中学生と小さい中学生、運動量の多い少ないにも個人差があります。

そもそも食べる気が起きないような塩分量の給食って、食事の役目を果たせるのかなという疑問もわいてきます。食事って、単に栄養を満たすためだけに存在するのでしょうか。

塩から始まる、マヨネーズやふりかけ持参の給食風景

塩持参で登校した中学生は、別の迷いももらします。

「これからも学校に塩を持っていっていいのかな?」

不問に付してくれたのは初めてだったからの温情か、それとも今後も塩持参で登校していいと意味だったのか、という迷いです。

一人が塩持参で登校すると、他にも塩持参で登校する生徒が出るかもしれません。調味料ならOKにすれば、マヨネーズ、ふりかけなどを持参する生徒まで登場するかもしれません。

学校の立場に立って考えると、そう簡単に答えを出せるとは思えません。集団生活で、どこまで個人差をフォローしていいのか。実際に、多くの中学生たちががまんしながらも食べているのです。特例を認めることは、不公平をもたらします。集団生活に不可避な、がまんを強いられる場面があることを学ぶ機会を奪うことにもなりかねません。

とはいえ、大量の食べ残しという事態が発生しているのも事実です。かつての脱脂粉乳の給食にてこずった体験を思い出すと、二度と同じ思いをしてほしくないなという気持ちにならないでもありません。

自分が先生なら、給食の個人差にどう対応するか

もし自分が学校の先生であったなら、どうするかを考えてみました。

結論は、とりあえず塩に限定して許可します。そのうえでマヨネーズやふりかけなど新たな事態が発生すれば、その都度、社会情勢などを加味して判断していくしかないだろうなということです。

際限なく認めてしまうのは、やはり集団生活にはそぐわないように思えてなりません。集団生活と、個人差。あなたならどういう対応をしますか?

間宮 書子