内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、65歳以上の一人暮らしの者は男女ともに増加傾向にあるようです。

65歳以上の男女それぞれの人口に占める割合は、2020年時点で男性15.0%、女性22.1%。1980年時点では男性4.3%、女性11.2%です。40年間で男性は3倍以上も「おひとりさま」が増えていることになります。

今後も増えていくことが予想されている「おひとりさま」。今回は70歳代にフォーカスして、おひとりさまの貯蓄額や年金額からその暮らしぶりを考察していきます。

1. 70歳代「おひとりさま」貯蓄ゼロは約3割も

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和4年)」をもとに、70歳代の単身世帯の金融資産保有額を見ていきましょう。

70歳代「おひとりさま」の金融資産保有額は、「平均1433万円・中央値485万円」でした。

1.1 70歳代「おひとりさま」金融資産保有額の平均と中央値

70歳代「おひとりさま」の金融資産保有額は、平均と中央値で1000万円ほどの乖離が見られます。

《70歳代「おひとりさま」金融資産保有額の平均と中央値》

  • 平均1433万円
  • 中央値485万円

平均が中央値と1000万円も高くなるのは、金融資産保有額が大きい層の数値に引っ張られていると考えられます。

数値を大きい(小さい)順に並べた時に真ん中に位置する「中央値」の方が、より実態に近いでしょう。

しかし、円グラフを見てみると、中央値の485万円を含む「400~500万円未満」の層は3%ほど。

貯蓄額は世帯で事情が異なるので、中央値は参考程度に捉えておきましょう。

より70歳代「おひとりさま」の貯蓄事情を詳しく見るために、金融資産保有額別にその世帯割合を見ていきます。

1.2 70歳代「おひとりさま」金融資産保有額別の世帯割合

  • 金融資産非保有:28.3%
  • 100万円未満:5.2%
  • 100~200万円未満:4.0%
  • 200~300万円未満:4.2%
  • 300~400万円未満:4.6%
  • 400~500万円未満:3.0%
  • 500~700万円未満:8.8%
  • 700~1000万円未満:4.8%
  • 1000~1500万円未満:5.6%
  • 1500~2000万円未満:5.8%
  • 2000~3000万円未満:8.2%
  • 3000万円以上:16.1%
  • 無回答:1.2%

70歳代「おひとりさま」は、貯蓄ゼロが約28%。一方、2000万円以上も約24%です。

はっきりと二極化していることが見てとれますね。

退職金や、死別の方であれば配偶者の遺産相続などにより金融資産保有額が大きくなった方もいるでしょう。あるいは「おひとりさま」で迎える老後に向けて、現役時代からコツコツ資産を積み上げた方もいるでしょう。

一方、貯蓄ゼロ世帯は「年金があるから貯蓄は不要」と考えたのか、「貯蓄ができなかった」のか。

その事情は世帯によって異なりますが、年を重ねると医療費や介護費用などの負担も増えてきます。年金収入だけではカバーできない時にはやはり貯蓄は必要でしょう。

現役世代の方は、老後に向けてどのくらいの貯蓄が必要なのかを真剣に考えておきたいものです。