8月は就職活動中の大学生を対象とするインターンシップが本格化する時期です。

特に大学3年生の就活生は毎日の予定が就活関連イベントで埋まり、「時間の使い方が難しい……」と悩み始めている人も多いのではないでしょうか。

そして就職活動をしている中で避けられないものの一つが、「親世代とのギャップ」です。

  • 「不安定な業界だ」「売り手市場だから楽」と決めつけで話された
  • 「私たちの時代は……」とイマドキの就活事情に理解を示してくれない親にイラっときた

そんな経験がある就活生は少なくないでしょう。ただでさえメンタル不安定になりがちな就活中、親の悪意ない一言がグサッと刺さることもありますよね。

それもそのはず、親世代と私たち現役大学生の就活事情はかなり違うのです。

就職活動を経験した「24卒」の私が、親世代とのギャップを感じた分かりやすい例の一つが「就活用語」でした。この記事では、現役大学生が使う就活用語で「親世代と話して通じなかった」ものを紹介していきます。

「24卒って何?」イマドキ就活頻出ワードから見えてくる親世代とのギャップ

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さきほど「24卒の私」と自己紹介しましたが、「ん、24卒って何?」と思った人もいるのではないでしょうか。この卒業年度の略し方こそ、親世代にはなかった「イマドキ就活用語」の分かりやすい例かもしれません。

大学生の就職活動が早期化したいま、学生によって就活を始めるタイミングはまちまちです。そんな中、SNSで仲間を集める就活生たちが「22年卒」「24年卒」などのハッシュタグを使って発信。「卒業年+卒」の呼び方も広がっていきました。

一方、インターネット自体が存在しなかった親世代の就活では、大学の就職課(キャリアセンター)で求人情報を得ることが一般的でした。

また、ハガキで企業情報誌を取り寄せたり、企業での面接がメインの就職活動であった点などから見ても、現在の就活とは大きく事情が異なることが分かります。

そもそも就職活動を「就活」なんて略して呼ばなかった、という話も。大学生の就職活動をめぐる「言葉」も大きく変化しているのですね。

ここから先は「親世代には伝わりづらいかもしれない」イマドキ就活用語を紹介していきます。

【就活用語・基礎編】親世代には通じない!?イマドキ就活頻出ワード4選

その1:ES(エントリーシート)

ES(エントリーシート):選考応募時、自己PRなどを必要事項を書いて提出する書類

2000年以降、就活の初期段階が面接から書類にかわったことで「エントリーシート」が普及していきました。

「学生と社会人の違いは何ですか」や「業界の将来について」という価値観や業界理解が問われるものから「白紙にご自由にお書きください」「あなたらしい写真でアピールしてください」といった自由度が高いものまで、企業によりさまざまです。

その2:WEBテスト(適性テスト)

WEBテスト:能力検査(言語・数学的知識)や性格検査をWEB上で行うこと

ESとセットで行われる企業も多く、就活の足切りとして利用されています。

テストの種類も企業によってさまざまで「SPI」や「玉手箱」は比較的よく知られていますね。企業がオリジナルで用意しているパターンもあります。

その3:グルディス(GD)

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グルディス(GD):「グループディスカッション」の略。選考の初期段階で行われることが多く、複数人で一つの課題に取り組む選考方式

コロナ禍ではオンラインでのグルディスが広まったようです。

初対面のライバルたちと議論を交わし、意見をまとめて、最後に企業に対しプレゼンを行う場合もあります。

GDでよく使われるのは、新規事業提案型の「企業の新規事業を立案せよ」、課題解決型の「働き方改革を進めるには何が必要か」、「待機児童問題を解決するために何が必要かといった企業業界理解、社会課題解決に関するものが多い印象です。

ちなみに、私が実際体験して「おもしろいけど難しい……!」と感じたテーマは「合コンでは男女が何割ずつ負担すべきか」「無人島には何を持っていくべきか」でした。

GD選考では、初対面の人との対応の仕方や、学生の価値観をチェックされるようです。

苦手意識がある人は、表情を明るくしたり、まずはひとこと発言してみたりすることからスタートしてみるとよいかもしれません。

その4:動画面接・AI面接

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面接も、企業の担当者と学生が話す以外のさまざまなスタイルが増加しています。

動画(録画)面接:応募者が好きな時間にスマホやパソコンを使って面接を受けるしくみ

採用のオンライン化によりエントリー数が増え、採用活動の効率化という観点から動画面接が広まりました。

あらかじめ用意された面接官の動画に対して答える形式や、設定された質問に対し答える形式があります。

AI面接:人工知能AI導入型選考のこと

AIは2020年以降から広まりました。専用のアプリを起動すると時間や場所を選ばずスマホを通して面接を受けることができるシステムです。

面接官がAIなので、平等な面接が期待できる点は大きなメリットだと感じました。

質問される内容は通常の面接と同じ。「問題意識を持ち、課題に対してどのように向き合ったか」を深掘りされます。

現役大学生たちが「普通に使っている」イマドキ就活トレンドワード5選

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ここからは、主に学生たちの間で使われている就活用語を紹介しましょう。SNSをきっかけに広まったものも多くあります。

ただし、親世代はもちろん、企業の面接担当者を目前に使っても伝わらない場合や、マイナスイメージに繋がってしまう可能性も。

企業の面接や説明会でポロっと言ってしまわないように注意しましょう。

その1:ガクチカ

ガクチカ:「学生時代に力を入れたこと」の略

エントリーシートや面接で聞かれることが多い「ガクチカ」。

就活の初期段階では「ガクチカで話すことがない……」と自分の学生生活を悔やむこともあるかもしれません。

でも、「全国大会への出場歴がある」「100人レベルの団体のリーダー」といった大きな経験がある人はほんの一握り。

ゼミやサークルなど大学内の活動、アルバイトやボランティアなど「自分で工夫しチャレンジして、成長した」と思える瞬間を、自分の言葉で話せることが大切です。

面接では「なぜその活動に力を入れたのか」「具体的にどういう取り組みをしたのか」を深掘りされるケースが多いです。

自分の経験を分析して話せるように練習していきましょう。

その2:持ち駒(もちごま)

持ち駒:選考に進んでいる企業の数

説明会に参加し、面接を受けることが決まっている企業や、一次選考に合格し二次選考待ちの企業などの総数。

持ち駒がなくなってしまうと焦りや不安からメンタル不調になる人もいるため、持ち駒を絶やさず就活を進める必要があります。

スケジュールの観点から、持ち駒が多ければ多いほどいいというわけではないため、持ち駒を増やそうと必死になるのではなく一つ一つを丁寧に進めていくことが重要です。

その3:お祈り(お祈りメール、サイレントお祈り)

お祈り:企業からの不採用通知のこと

メールの結びに「今後のご活躍をお祈り申し上げます」とあることから、「お祈りメール」と呼ばれるようになりました。

選考から1週間から2週間で連絡されることが多い印象ですが、なかには不採用の通知を行わない企業も。

さらに、いつまで待っても不採用通知すらこないことを「サイレントお祈り」と呼びます。

その4:NNT「ない内定」

NNT:内定を一社も持っていない状態。反対語は「ANT(ある内定)」

就活生の間で自虐的に使う表現の一つです。

SNSでよく見かけるワードですが、友だちに不用意に言ってしまうと相手の気持ちを不快にさせる可能性があるため、使う場合は細心の注意を払いましょう。

その5:納得内定

納得内定:納得した内定を得ること

企業から内定をもらった後も、納得感を持たせて就活を終了したい人が増えています。

リクルートの就職みらい研究所の調査(※)によると、2023年6月1日時点、24卒の内定率は79.6%とほぼ8割ですが、3割が内定取得後も就活を継続すると回答しています。

就職プロセス調査(2024年卒)「2023年6月1日時点 内定状況」

イマドキ就活用語「内定承諾にまつわる」頻出用語2選

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そして、学生が内定承諾をする際にも親世代とは大きなギャップが。

リクルートの就職みらい研究所の調査(※)によると、24卒の学生内定保有企業数は平均1.06社。

複数の企業から内定をもらうケースも珍しくないため、内定辞退を経験する学生の数は増加中です。

そのため、内定承諾・辞退にまつわる用語もたくさん生まれています。

就職プロセス調査(2024年卒)「2023年8月1日時点 内定状況」

その1:オヤカク

オヤカク:企業が学生の親に対して内定の確認をとること

2022年度のマイナビの調査では49.9%が、企業からの内定確認の連絡を経験したと回答しています。

親からの反対で内定辞退されることを危惧して企業が行っている対策であり、珍しいものではありません。

ちなみに、企業が親に電話をかけるという直接的なものだけではなく、面接中に「親御さんは賛成してくれている?」と質問される形の確認も、広い意味で「オヤカク」の一種と言えるでしょう。

株式会社マイナビ「2021年度 就職活動に対する保護者の意識調査」を発表

その2:オワハラ

オワハラ:「就活終われ(終わらせろ)ハラスメント」の略

企業が内定を出した学生に対して他社の選考辞退を促すことを「オワハラ」と呼び、具体的には以下のような働きかけがあります。

  • 内定承諾書・入社承諾書の提出を強要される
  • 内定が出た瞬間、インターンやアルバイトをするように促される
  • 電話がかかってきて、就活状況と内定承諾をしつこく聞かれる

オワハラは「職業選択の自由」を妨げる行為です。

「これってオワハラかも?」と感じたときは、大学のキャリアセンターなど信用できる機関に相談することをおすすめします。

24卒の私から、後輩たちにエールを込めて

今回は、「親世代には伝わりにくい」いまどきの大学生が使う就職活動に関する用語を見てきました。

「24卒」として就活を終えた私も、就活中には何かとメンタルが不安定になることが多く、親との会話で「お祈りメールって何?」と触れられただけで、モヤモヤして落ち込んでしまったこともありました。

時代が違えば、就職活動のスタイルも変わります。とはいえ、人生の大先輩である親の意見を聞いてみて正解だったと思うことも多かったです。

親世代の就活と今の時代の就活は、スタイルこそ変わりましたが「社会人としての第一歩を踏み出す準備」という位置づけは同じ。

お互いの価値観を尊重して話ができれば、納得した内定、そして自分らしい仕事選びのヒントが得やすくなるかもしれません。

就職活動をがんばる後輩たちへのエールを込めて、終わりにしたいと思います。

参考資料

LIMO・U23編集部