2023年8月10日に発表された、株式会社 コーチ・エィ2023年12月期第2四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社コーチ・エィ 代表取締役 社長執行役員 鈴木義幸 氏

2023年12月期上期_ Executive Summary

鈴木義幸氏:コーチ・エィの鈴木です。本日はお忙しい中、決算説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。2023年12月期上期の決算についてご説明します。

Executive Summaryです。第1四半期の受注高は前年同期比でマイナスでしたが、第2四半期の受注高は四半期ベースで過去最高となり、上期の受注総額は前年と同水準でした。ただし、受注が上期の後半に偏重したため、当期中に計上される売上高が減少し、来期に繰り越しとなる見込みです。したがって、通期の売上高は計画未達と予想しています。

そのような中、事業成長に向けた採用や海外展開など、投資は下期も計画どおり実行する予定です。通期の受注高は期初計画どおりを見込むものの、売上高および各段階利益の通期業績計画は修正します。エグゼクティブを中心とした組織開発サービス提供の強化などにより、さらなる収益の増加を目指します。

また、AIコーチングをグローバルに展開するPanda Training社と業務提携に関する基本合意書を締結しています。さらに2023年12月より、期末の株主さまを対象とする株主優待制度を導入します。

2023年12月期上期_連結損益計算書

連結損益計算書です。売上高は前年同期比1.1パーセントマイナスの約16億4,200万円、営業利益は前年同期比88.8パーセントマイナスの約2,900万円です。売上および利益増減の理由については後ほど詳しくご説明します。

特別損益は、投資有価証券の売却益が約5,900万円です。結果的にプラス約4,200万円の特別損益を計上しています。

親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比85.8パーセントマイナスの約4,300万円、受注高は前年同期比0.7パーセントマイナスの約19億8,500万円です。

2023年の受注高と売上高

受注高と売上高について詳しくご説明します。

第1四半期の受注高は前年同期比で減少しています。一方、第2四半期はさまざまな営業施策の実施効果により、四半期ベースで過去最高の受注高を記録しており、6月単月でも過去最高となっています。その結果として、上期の受注高総額は前年上期と同水準になりました。

下期も受注高は堅調に推移する見込みであり、通期の受注高は期初計画どおりの約38億5,500万円としています。

次に売上高についてご説明します。主に第1四半期の受注高が前年同期を下回ったことにより、第2四半期の売上高は前年同期比で減少しています。その結果として、上期の売上高は前年上期と同水準になっています。

通期の売上高は、前年を約5,000万円下回る予想です。これは、前期に比べて受注が上期の後半に偏重したため、当期中に計上される売上高が減少して来期に繰り越しとなる見込みであることが要因です。

前年度と比較した売上高の変化の主な要因

前年度と比較した売上高の変化の主な要因です。当社の売上高は、実際に実施したコーチングセッションの進捗に応じて計上されます。

第2四半期の受注高は四半期ベースで過去最高となったものの、セッション開始に一部遅れが生じるため売上高は通期で減少する見込みです。

スライドの図にお示ししているとおり、2022年上期の受注高は2023年とほぼ同額の約19.9億円で、2022年度中に計上された売上高は約18.3億円でした。また、2022年上期の受注高のうち、次年度に繰り越された売上高は約1.6億円でした。

一方で、2023年上期の受注高約19.8億円のうち、2023年度中に売上計上できるのは約16.5億円で、残りの約3.3億円は来期に繰り越される予定です。

営業利益の変動要因分析

営業利益の変動要因分析です。経費の増加は、次の成長に向けた投資が主な要因となります。具体的には、スライドのグラフにお示ししているとおり、第2四半期以降の受注高・売上高増加に向けた営業活動の強化、採用および従業員の教育・研修、IT関連費用などです。

下期も将来の事業成長に向けて、採用や海外展開などの投資は継続的に実行していきたいと考えています。

2023年12月期_連結業績予想の修正

2023年12月期の連結業績予想の修正についてご説明します。

これまでご説明したとおり、受注高は通期で計画を達成する見込みですが、売上高は受注が後ろ倒しになったことを受け、約39億3,800万円から約35億5,000万円に修正します。

一方で、将来の成長を見込み、投資は計画どおり実行します。

したがって、売上高は約35億5,000万円、営業利益は約2億円、親会社株主に帰属する当期純利益は約1億4,000万円を予定しています。受注高については約38億5,500万円と、期初の計画どおりです。

2023年12月期の事業テーマ

2023年12月期の事業テーマです。「中長期の成長を見据えた、盤石な事業基盤づくりへの先行投資」をテーマとし、大きく3つ掲げてきました。

1つ目が「顧客基盤の強化・拡大」、2つ目が「コーチ人材の採用と育成」、3つ目が「海外ビジネスの拡大」です。

顧客基盤の強化・拡大_大規模取引クライアントの数とグループあたりの取引額を拡大

まずは「顧客基盤の強化・拡大」についてです。既存クライアント向け施策については、エグゼクティブ・コーチングを起点とし、クライアントの状況に適したプログラムを提案します。また、エグゼクティブを対象としたさまざまな施策で、クライアントとの絆を継続的に強化しています。

さらに、新規および休眠クライアント向けの施策として、エグゼクティブをはじめとした顧客開拓のタッチポイントを拡大しています。Top to Top Salesの強化はもちろんのこと、同時にボトムアップセールスも拡大しています。

顧客基盤の強化・拡大_既存クライアント向け施策

我々のビジネスは、エグゼクティブとの関係をいかに強化するかということが非常に重要です。コーチングセッションやエグゼクティブ・コーチングを実施するだけでなく、プロジェクトが終わった後も、エグゼクティブと継続的にコンタクトすることが大切です。コロナ禍が収束したこの上期には、エグゼクティブ向けのさまざまなイベントや交流会も実施し、関係強化に努めてきました。

スライド右上の「エグゼクティブ・ダイアログ」は、CEOを中心とするエグゼクティブ・クライアント向けの組織開発に関する対話イベントです。また、「海外トッププロゴルファーとのゴルフ懇親会」としてエグゼクティブのお客さまをご招待し、関係強化を図るイベントも実施しました。

さらに、世界的に有名なアカペラ合唱団である「ザ・ハーバード・クロコディロス」を招き、来日公演を開催しました。こちらは、69名のエグゼクティブを含む270名の企業の方々にご参加いただきました。

顧客基盤の強化・拡大_新規・休眠クライアント向け施策

新規・休眠クライアント向けの施策として、各種フォーラムや講演会を実施しており、その内容をスライドにまとめています。例えば、「次世代リーダーの条件とは」というテーマのフォーラムには、531名の方にご参加いただきました。一番下の「エンゲージメントが高い組織を作るための3つのポイント」は私自身が実施した講演で、人事担当の方、そしてもちろんエグゼクティブの方々を含め、697名がお越しくださいました。

フォーラムや講演会への参加をきっかけに、新規お取引のきっかけがたくさん生まれるほか、既存顧客の方々が当社との取引をさらに拡大しようと動いてくださる例もあります。上期は、これらイベントを多数実施し、顧客基盤の強化を図りました。

コーチ人材の採用と育成

上期施策のテーマの1つに、「コーチ人材の採用と育成」を掲げています。コーチの数を約15パーセント増やすことを目標に採用活動を行った結果、2022年上期から2倍強にまで増員しました。

2022年上期は、コーチ職としての入社者が6名、内定が4名という結果でした。今年は、上期を終えた時点で14名が入社、内定が8名となり、合計22名の採用となる予定です。非常に順調に進捗していると考えています。

コーチ数の推移

2023年3月末時点で117名だったコーチ数が、現在は127名まで伸びています。

海外ビジネスの拡大

海外にビジネスを拡大していく上で、当社には3つの道があります。青い矢印で示されているのが、日系企業を世界中で支援するための路線です。赤い矢印は、我々の傘下にあるCOACH Uというアメリカの会社を起点として、非日系企業向けのマーケットを開拓する路線を表しています。緑の矢印は、COACH Uのビジネスをアジア地域にも拡大していく流れを示しています。

海外ビジネスの拡大

2023年12月期の重点施策として、海外に新拠点を2つ設立する予定です。すでにリリースしているとおり、ニューヨークに新たな拠点を作りました。こちらの拠点は、北米および南米での日系企業の支援に加えて、非日系企業へのビジネス展開や、COACH Uとのシナジー強化を目的に設立しました。さらに1拠点の設立を検討しています。

2023年12月期 下期の施策

下期の施策として、まずは「顧客基盤の強化・拡大」に取り組んでいきます。中でも「AIコーチングの提供」については、後ほどあらためて詳細をご説明します。

「コーチングサービスの付加価値向上」を目指し、デジタルツールの開発を進めています。 こちらのツールでは、エグゼクティブ・コーチングを実施する際に、エグゼクティブの方のネットワークをより密に、質の高いものに変えていくための支援として、お客さまのネットワーク図をデジタルで描画します。このようなコーチングに役立つさまざまなデジタルツールを開発することで、弊社のサービスの品質がより高まり、結果的に顧客を増やすことにつながるのではないかと考えています。

「マーケティング活動の強化」として、オートメーションツールを積極的に活用していきます。これは我々にアクセスいただいたお客さまに対して、人を介在させずに自動的にさまざまな情報を提供できるデジタルツールです。お客さまの関心を我々につなぎ留め、受注につなげる施策をさらに増やしていきたいと思います。

「コーチ人材の採用と育成」では、コーチのデビューに向けたスケジュールを、質を保ちながらさらに早め、コーチの増員を図りたいと思っています。

「海外ビジネスの拡大」としては、アメリカで力を入れているマーケティング活動を引き続き推進するとともに、アメリカに次ぐ2つ目の拠点を年内中に設立するため、現在準備を進めています。

AIコーチング日本語対応版の共同開発に向けた業務提携に関する基本合意書締結

AIコーチングについて、詳しくご説明します。世界屈指のAIコーチング開発会社であるPanda Training社と、法人向けAIコーチング「Pandatron」の日本語対応版を共同開発・販売するために基本合意書を締結しました。スライドの画像は、AIのコーチとチャットでやり取りしている画面のスクリーンショットです。このようなコーチングが可能となります。

あるセッションをきっかけに、Panda Training社のCEOであるDima氏と知合いました。彼との会話の中で、彼らがAIコーチングを開発して世界中でビジネスを展開していること、Universal PicturesやSAPなどが導入し、すでに1万アカウント単位で利用している企業もあることなどを聞きました。

非常に興味を抱き、名刺を交換して、帰国後にどのくらいのクオリティのものか調べようと自分で「Pandatron」を試してみました。その精度の高さにコーチとして驚き、それからCEOのDima氏とやり取りを開始しました。

彼らはBoston Consultingとも提携しています。コンサルティングファームは通常、戦略を策定して実行する過程でいろいろなトレーニングを行いますが、その段階で「Pandatron」を使うことで、Boston Consultingが策定した戦略を、より確実にクライアントの社員一人ひとりに浸透させることを目的としているそうです。

「Pandatron」を導入する企業の社員たちは、日々AIコーチングを受けており、それらをビッグデータ化していくと、会社の課題は何なのかが非常によくわかります。そのような情報をベースにコンサルティングを行うことで、コンサルティングファームとしてはアップセルも可能になるということです。

AIコーチングは、我々のビジネスも大きく発展させるサービスになり得ると考え、「我々が監修して『Pandatron』の日本語版を作りたい」と申し出たところ、Dima氏から快く「一緒にやろう」という返事をもらいました。

7月の終わりから、当社の社員全員がAIコーチングを試用しており、自分で予約して週に1回、30分のAIコーチングを受けています。加えて、「ナノコーチング」という、朝、夕方、帰社前などに5分ずつコーチングを受けるサービスも体験しています。朝出社して受けるAIコーチングでは「今日はどんなふうに過ごしたいのか」「何を成し遂げたいのか」、帰る前には「今日1日のパフォーマンスはどうだったのか」を振り返ります。

プロのコーチである当社の社員も、AIコーチングのクオリティの高さに驚いています。秋頃からは、本格的にセールスしていきたいと考えています。

法人向けAIコーチングを提供する狙い

これまで我々のサービスでは、主にエグゼクティブと管理職を中心にコーチングを提供してきています。コーチング費用は決して安価でないこともあり、一般社員の方々にコーチングを提供することはなかなか難しかったのですが、AIコーチングであれば、社員全員に対し、組織の開発と変革に向けたコーチングの提供が十分可能になります。

例えば、ヨーロッパにあるSkanskaというコンストラクションカンパニーでは、Panda Training社の「Pandatron」が導入され、すでに約1万アカウントが稼働しています。これらのアカウントのうち、実際の稼働率は約8割だそうです。つまり、約8,000人がこれを使い続けているということです。

同様のことを、日本のお客さまへ我々が提供することは十分可能だと思っています。「あるテーマに関して組織変革をしたい」「組織改造したい」というお客さまに対しトップ層だけでなく、全社員に対してAIコーチングの提供が可能になります。

法人向けAIコーチングの特徴

ここまでお伝えした内容のポイントをまとめると、AIコーチングの特徴の1つ目は「全拠点、全部署、全役職など、企業全体に対して一気通貫でこのコーチングを提供できる」ことです。すでに多くのCEOのみなさまが興味を持ってくださっていて、「正式にリリースして実装できるようになればすぐに試してみたい」というお声をいただいています。大変反応がよく、可能性があると思っています。

弊社のお客さまはプライムに上場されている、いわゆる大企業が約8割を超えています。しかし、これまでコーチングに手応えはあるものの導入が難しかった中小規模の企業のみなさま、あるいは、スタートアップやベンチャーの企業さまにも、コーチングを提供できる可能性が十二分にあると考えています。

2つ目特徴である「匿名化された膨大なコーチングデータを、継続的な企業課題のリサーチツールとして活用できる」ことも、非常に強いポイントだと思っています。

例えば、企業の人事部では、組織や人材に関するさまざまなサーベイが行われます。例えばエンゲージメントサーベイは、ある瞬間を輪切りで切り取った従業員の主観をリサーチの結果としていますが、AIコーチングを活用することで、社員が入力した膨大なテキストをビッグデータとして分析し、その会社の課題などを1ヶ月単位で可視化できます。

さらに弊社のリサーチャーの分析によって、短期的な瞬間ではなく、少し中期的な会社の状況を鏡のように表現することができます。つまり、サーベイを変革するツールとしてご提供できるのではないかと思っています。

ひいては、「もっとこのようなプログラムやコーチングを導入したらいかがですか」という全社的な提案につながり、我々の既存プログラムのセールス向上にもつながるのではないかと期待しています。

そして3つ目の特徴は「企業の組織課題に合わせたAIコーチングにカスタマイズできる」ことです。さまざまなテーマに合わせて「AIコーチング」のカスタマイズができます。

例えば、DX(デジタルトランスフォーメーション)、あるいはエンゲージメント、ウェルビーイング、セールスの向上などを、全社的にAIコーチングのテーマにセットしていただくことが可能です。

一例として、「DXに向けたトランジション」は、現在多くの企業が掲げるテーマや課題となっており、コンサルティングファームが注目している領域です。そのようなテーマに対しても、AIコーチングを活用できます。

Panda Training と提携する目的

スライド左側に記載のとおり、「AIコーチング」は、「ChatGPT」の3.5と4.0や、ICF(国際コーチング連盟)という、コーチングの分野で最もクレデンシャルのある組織の認定を取得したトップコーチたちのフィードバックを基にした機械学習モデルを使用して開発されています。

実際のAIコーチングはチャットで行います。チャットで書くほうが、頭で整理し、自己内省をする際にはふさわしいと考えています。TeamsもしくはSlackといった、すでに企業内で使用されているツールを利用するため、導入が非常に簡単です。

先ほどお伝えしたとおり、すでにUniversal PicturesやSAPといった世界的企業が「Pandatron」を導入しています。最近ではBoston Consultingや、欧州最大のコンサルティングファームであるCapgeminiもPanda Training社と契約を交わしたと聞いています。

日々、クライアントの入力データがアノニマス化され、AIがそれを学習して、AIコーチングをさらに優秀にし、クオリティがどんどん向上していきます。このようなところにシリコンバレーの投資家も非常に高い関心を抱き、ファンディングしているのだろうと思っています。

我々が長年培ってきた組織開発の実績やケース、ネットワーク、ブランドを活用し、AIコーチングを多くの日本の企業に使っていただくことによって、日本企業の組織開発や組織変革をかつてないスピードで進めるご支援をしたいと考えています。

株主優待制度の導入

株主優待制度についてご説明します。日頃からご支援いただいていることへの感謝、そして当社株式の価値向上を目的とし、毎年12月31日現在の株主名簿に記載または記録された、1単元(100株)以上の株式を保有されている株主さまを対象に、「QUOカード」3,000円分を贈呈します。

贈呈の時期は毎年1回、定時株主総会終了後の3月末を予定しており、決議通知と同封して発送したいと考えています。

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