2023年8月9日に発表された、株式会社アイキューブドシステムズ2023年6月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社アイキューブドシステムズ 代表取締役執行役員社長 CEO 佐々木勉 氏
株式会社アイキューブドシステムズ 取締役執行役員管理本部長 CFO 里見亮陛 氏

目次

佐々木勉氏(以下、佐々木):みなさま、こんにちは。株式会社アイキューブドシステムズの佐々木でございます。本日はお忙しい中、ご参加いただきまして誠にありがとうございます。本説明会が、当社の事業成長についてのご理解を深めていただく場になるよう努めていきますので、どうぞよろしくお願いします。

本日は、まず2023年6月期のサマリーについてご説明します。続いて、当社グループの簡単な事業概要、1年間の主な取り組み、2023年6月期の業績についてご説明します。

なお、詳細な業績については、CFOの里見からご説明します。最後に2024年6月期の成長戦略と業績見通しについて私からお話しします。

2023年6月期 通期サマリー

通期のサマリーについてご説明します。売上高は26億6,500万円、営業利益は6億1,800万円、導入法人数は4,900社を超え、5,000社目前のところまで来ました。

2022年6月期において、半導体不足などの影響により一部のお客さまでモバイル端末の調達に時間がかかり、当社との契約開始が遅れるようなケースが生じていました。現在、スマートフォンの供給は回復しており、コンシューマー市場においては十分な量が行き渡っているという情報もありますが、当社の顧客となる国内企業からの需要が高いスマートフォンについては引き続き流通が不足しています。そのため、端末の調達に時間を要する状況が継続しています。

このように、事業環境は厳しい状況が続いていますが、導入法人数は前期末比25パーセント増となる1,000社以上を獲得することができ、売上高は前年同期比8.6パーセント増と、着実に成長することができました。これも、お客さま、パートナー、関係者のみなさまのおかげと感謝しています。ありがとうございました。

当社グループの事業構成

事業概要について簡単にご説明します。当社グループは、CLOMO事業と投資事業の2つの事業を展開しています。中でも株式会社アイキューブドシステムズでは、CLOMO事業を主軸に事業を展開しています。

加えて、2021年11月に投資事業を開始し、そのタイミングでベンチャーキャピタル子会社とCVCファンドの設立を行い、投資事業も展開しています。資料6ページ以降には、各事業の詳細や競争力の源泉について記載していますが、今回はご説明を割愛します。お時間のある際にご覧いただければと思います。

また、本日初めて説明会にご参加いただいた方におかれましては、IR取材の場で、より具体的にご説明したいと思っています。よろしければ当社のIR情報についてのお問い合わせフォームからお問い合わせください。

国内MDM市場12年連続シェアNo.1の達成

2023年6月期の事業ハイライトについてご説明します。まず、CLOMO事業については、国内の自社ブランドMDM市場において12年連続シェアNo.1を達成しました。

冒頭でご説明したような厳しい事業環境下においても、トップシェアを維持することができています。MDM市場において、より安定的な地位を確保するため、引き続き売上拡大に向けたさまざまな取り組みを進めていきます。

シェア拡大に向けたNTTドコモグループとの連携

NTTドコモグループさまとの協業についてです。NTTドコモグループさまは、CLOMO事業における主力の販売パートナーであり、CLOMO事業の成長に大きく貢献していただいています。

2022年9月に、NTTドコモグループさまが提供するMDMサービスである「あんしんマネージャー」が「あんしんマネージャーNEXT」へリニューアルしました。その際、当社の「CLOMO MDM」が採用されることとなり、OEM提供を開始しています。

「CLOMO MDM」が採用されたポイントは、これまでの豊富な導入実績と、MDM市場において高いシェアを持っている点です。また、当社の営業拠点網によって日本全国の販売パートナーやお客さまを支援できる体制について、評価をいただきました。

さらに、当社では社内にカスタマーサクセス部門を設置していますが、カスタマーサクセス部門がお客さまと直接コンタクトを取り、お問い合わせの対応や、製品を活用するためのセミナーの開催などを行っています。このようなお客さまに寄り添ったサポート体制に対しても評価をいただいています。

今後は、「CLOMO MDM」としての販売に、OEM製品としての販売も加わりますので、NTTドコモグループさまとのさらなる連携を図り、売上拡大に取り組んでいきます。

販売パートナーとの連携強化に向けた営業拠点増設

販売パートナーとの連携強化に向け、営業拠点を増設しました。2023年6月期においては、札幌、仙台、名古屋と3拠点を新たに設置し、期初の計画どおり完了することができています。

営業拠点の増設は、販売パートナーのみなさまからも強い要望をいただいており、地方エリアにおける販売戦略に合わせ、全国を広くカバーするために、主要都市に設置しようと進めてきたものです。拠点エリアの拡大によって各地の販売パートナーとの連携を強化するとともに、地場企業へのサービス導入を促進し、CLOMOサービスの事業拡大を図っていきたいと考えています。

ARPU向上に向けたオプションサービスの拡充

ARPU向上に向けた施策として、Deep Instinctさまと連携し、2022年10月から新たなオプションサービスの提供を開始しています。

Deep Instinctさまが提供する「Deep Instinct」というサービスは、モバイル端末側での高精度なウイルス予測と防御を可能にする、エンドポイントセキュリティのソリューションです。世界で初めて、ディープラーニングのモデルを用いているため、すでにあるウイルスだけでなく、未知のウイルスまでも防御することができるという特徴があります。

働き方改革やDXの促進によって、業務におけるモバイル端末を活用するシーンが増えている一方で、ランサムウェアによる企業の被害件数も右肩上がりに増加しており、ビジネス利用におけるモバイル端末は常に危機にさらされている状況です。

当社が提供する「CLOMO MDM」のデバイス管理や情報漏えい対策機能と合わせて、「Deep Instinct」のサイバーセキュリティ対策機能を組み合わせることによって、より安心安全なモバイル端末の活用を実現しようとするものです。このオプションサービスの販売により、ARPUの向上を図るほか、「Deep Instinct」への関心をきっかけとしたCLOMOサービスへの顧客拡大も図れると考えています。

Google社とのパートナーシップ強化

今回、Googleさまにて新たなパートナープログラムである「Android Enterprise Partner Program」が開始されましたが、当社はGold Partnerとして認定いただきました。

当社はこれまでも、2019年から継続的に「Android Enterprise Recommended」を取得しており、今回は、その高い技術力や導入実績、サポート体制などが評価され、新たなプログラムである「Android Enterprise Partner Program」においてもGold Partnerとして認定されました。

Gold Partnerとして、Googleさまから技術面での支援を受けながら、「CLOMO MDM」のAndroid版の開発や、Android端末を利用しているお客さまのサポートを、引き続きしっかり進めていきたいと考えています。

投資活動における取り組み

投資活動における取り組みについてご説明します。まず、CVCファンドからAI自動収穫ロボットの開発などを行うアグリスト社、請求書受領サービスなどを提供するペイトナー社、教育やヘルスケア分野における習慣化プラットフォームを提供するウィズウィー社の3社に投資を行っています。これにより、投資先は累計5社、投資総額は約2億4,000万円となりました。今後も幅広い事業領域への投資を積極的に進めていきたいと考えています。

また、このような投資活動における情報収集の効率化を図るため、ベンチャーキャピタルファンドへのLP出資も実施しました。CVC投資やM&Aにおけるソーシングの強化、協業先の発掘の推進を期待しています。

先ほどのCVCファンドを通じた投資を合わせると、2023年6月期における現在の投資総額は3億6,400万円となります。なお、2023年6月期において、投資先の評価損は発生していません。引き続き、当社グループの中長期的な成長を加速させるため、積極的な投資活動を進めていきたいと考えています。

ここからは、CFOの里見より2023年6月期の業績についてご説明します。

CLOMO事業KPI① 導入法人数・継続率

里見亮陛氏:CFOの里見です。私から2023年6月期の通期業績についてご説明します。

まず、CLOMO事業のKPIとして、導入法人数・継続率を設定しています。2023年6月期の純増導入法人数は1,014社で、過去最高の増加数となっています。これにより、導入法人数の累計も4,900社を超えています。「CLOMO MDM」としての販売による顧客の拡大に加え、OEM提供の開始に伴う新規顧客の獲得が進んだことが、導入法人数の大幅な増加理由となっています。

継続率は97.1パーセントと引き続き高い水準を維持しています。カスタマーサクセス活動により、顧客の定着を促進することができています。

CLOMO事業KPI② ARRの推移

ARRは26億2,400万円となり、前年同期比5.6パーセントの増加となっています。冒頭でご説明したとおり、法人需要の高いスマートフォンの流通が減少している影響で、大規模な契約の受注が少しペースダウンしているものの、ARRについては毎期着実に伸ばすことができています。

CLOMO事業KPI③ ARPUの推移

ARPUについては、少し緩やかな傾向が続いています。現在、当社は顧客基盤の拡大を積極的に推し進めており、OEM提供の開始や営業拠点の増設によって、より幅広い規模の企業に向けた当社サービスの導入促進を図っています。

結果として、中小規模企業に対するサービスの導入が加速している状況にあるため、1顧客あたりのライセンスが減少し、ARPUが低下する傾向にあります。

今後も顧客基盤拡大のために、中小規模企業のお客さまへの導入をさらに促進していきたいと考えていますので、ARPUについては一定程度まで低下傾向が続くものと考えています。

一方で、ARPUを押し上げる施策についても取り組みを続けています。カスタマーサクセス部門からアップセル・クロスセルへの提案に引き続き注力するとともに、事業ハイライトでもご説明のとおり、オプションサービスをさらに充実することでもARPUの改善に取り組んでいきたいと考えています。

2023年6月期 第4四半期 連結売上高・営業利益

第4四半期の実績については、売上高6億7,800万円、営業利益1億2,800万円で着地しました。なお、営業利益については売上原価と販売管理費の増加により、前年同期比で19.8パーセントの減少となっています。

2023年6月期 通期 連結売上高・営業利益

通期の実績についてです。冒頭でご説明したとおり、売上高は26億6,500万円、営業利益は6億1,800万円で着地しました。売上高は前年同期比で8.6パーセントの成長となりましたが、営業利益は前年同期比で25.2パーセントの減少となっています。

営業利益の増減要因

営業利益の減少について、売上高、売上原価、販売管理費と3つに分けてもう少し細かくご説明します。売上高については、着実にCLOMO事業を拡大させることができており、営業利益を押し上げる理由の1つとなっています。

一方で費用面については、売上原価が前年同期比で増加しています。2023年6月期においては、社内の開発リソースをより付加価値の高い開発業務に充てるため、製品開発業務の一部を外部に委託する取り組みを進めてきました。

委託先企業の開拓が順調に進んだことで外部のリソースを十分に獲得することができ、開発投資やソフトウェア製品のリリースが順調に進んでいます。結果として、減価償却費や製造経費といった売上原価を構成する費用が前年同期比で増加しています。

売上原価については、前期の2022年6月期においてソフトウェアのリリースが例年より少なかったことで減価償却費が抑えられていた影響もあり、前年同期比での差がより強く出ている状況です。

販売管理費については、営業拠点の新設に伴う人材投資により人件費が増加しました。また、情報セキュリティ体制強化のためISMAPの取得を進めており、取得に必要な監査費用等が前倒しで発生しています。

なお、ISMAPについては2024年6月期中の取得完了を目指しています。ISMAP取得を通じて、CLOMOサービスの信頼性の向上と官公庁市場におけるシェア拡大を目指しており、そのための先行投資となっています。結果、通期の営業利益率は23.2パーセントとなりました。

2023年6月期 連結貸借対照表

期末時点の貸借対照表についてです。現預金については、引き続き20億円を超える水準を維持しており、自己資本比率は75.5パーセントと、成長投資に備えた財務基盤を構築できています。

当社としては、事業成長に向けた投資、株主のみなさまへの還元というところを引き続き積極的に実施していきたいとに考えています。

また、スタートアップ投資、ファンド出資を含めると、投資総額は3億5,000万円を超えている状況にありますが、キャピタルゲインとともにCLOMO事業との協業、加えてシナジーについてもしっかりと模索を進めていきたいとに考えています。

続いて、佐々木より2024年6月期の成長戦略についてご説明します。

売上拡大施策のさらなる推進

佐々木:2024年6月期の成長戦略についてご説明します。まず、2024年6月期の成長戦略の全体像についてです。CLOMO事業の売上拡大を目指す上で必要な要素として、特に重要であると考えている要素が2つあります。1つは顧客の拡大、もう1つはARPUの改善です。

そのため、2024年6月期においては、OEMによる顧客の拡大と、オプションサービスによるARPUの改善を戦略として、売上の拡大を図っていきたいと考えています。それぞれの戦略についてご説明します。

OEMによる中長期的な顧客拡大

まずは、OEMによる顧客拡大についてです。事業ハイライトでもご説明したとおり、NTTドコモグループさまが提供するMDMサービスです「あんしんマネージャー」を「あんしんマネージャーNEXT」へリニューアルしたことに伴い、当社のCLOMO MDMが採用され、OEM提供を開始しています。

サービスがリニューアルしたということで、今後は、これまでの旧サービスから、当社がOEMを提供する新サービスへと、顧客契約の切り替えが段階的に進み、当社の顧客が拡大していく見通しとなっています。

NTTドコモグループさまにて、旧サービスの提供終了は2026年3月に予定されており、今後3年間で大半の契約の切り替えが見込まれるものと考えています。さらに、既存顧客の契約の切り替えに加えて、あんしんマネージャーNEXTの新規顧客の開拓にも取り組んでいきます。

また、当社は全国7ヶ所に営業拠点を設けました。NTTドコモグループさまの地方販売スタッフと密に連携を取り、製品勉強会の開催や地域を限定した広告宣伝の展開にも取り組むことで、既存顧客の契約切り替えを促進するとともに、地方の新規顧客の獲得も進めていきたいと考えています。

このようにOEMを成長エンジンの1つとして位置づけ、営業拠点を通じた積極的な販売パートナーへの支援活動を通じて、顧客基盤の拡大をさらに進めていきたいと考えています。

ARPUの改善

ARPUの改善に向けた施策についてです。業績報告にてご説明したとおり、戦略的な顧客基盤の拡大によって、ARPUの低下傾向が続いています。OEM提供などを通じて拡大した顧客基盤をもとに、しっかりと売上の最大化を図るべく、顧客ニーズに沿ったオプションサービスの拡充に取り組んでいきたいと考えています。

このような背景から、2023年6月期においては新たに3つのサービスを開始し、セキュリティ対策の強化と運用支援を充実化させています。

セキュリティ対策については、他社のセキュリティソリューションと連携することで、MDMだけでは防ぎきれないサイバー攻撃などに対する備えを強化し、より安心安全にモバイル端末を活用できるサービスを提供しています。

また、昨今では企業において情報システム部門の業務負荷の増加が顕著となっています。運用支援サービスではモバイル端末の導入から運用に至るまで、一貫した支援をすることで、お客さまの業務負荷を軽減し、ビジネスにおけるモバイル端末の活用を支えるものとなっています。

2024年6月期においては、前期にリリースしたこのようなオプションサービスの販売をさらに進めていくとともに、オプションサービスのラインナップの拡充を進めることで、ARPUの改善に向けて取り組んでいきたいと考えています。

2024年6月期 連結業績見通し

成長戦略を踏まえた、2024年6月期の業績見通しについてご説明します。売上高は前年比プラス12.7パーセントの増加、営業利益は前年比プラス5パーセントの増加を見込んでいます。営業利益の増減については、後ほど具体的にご説明します。

2024年6月期 連結業績見通し

売上高は、毎期右肩上がりで成長を続けており、2020年6月期からの年平均成長率は16.3パーセントとなる計画です。

利益については、2023年6月期より積極的な成長投資を進めているため、期によってややばらつきがあるものの、2024年6月期は増益を見込んでいます。結果的に、年平均成長率は12パーセントとなる予定です。

営業利益の見通し

営業利益の見通しについてご説明します。売上高については、成長戦略でもご説明したとおり、OEM製品による売上成長が営業利益を押し上げる要因になると見込んでいます。一方で、売上原価と販売管理費については、前年同期比で増加する見通しです。

売上原価については、2023年6月期に開発力を増強し、ソフトウェアのリリースが増加しているため、今期の減価償却費は増加する見通しとなっています。

売上原価率については、当社では20パーセント程度を目標値として考えていますが、現在は事業拡大に向けた積極的な開発投資が必要な局面であるという認識のもと、引き続き顧客ニーズに応えるための開発活動を推進すつ計画です。

販売管理費については、従業員の増加に伴い、システム関連費用などが増加する見通しです。加えて、ISMAPなどの取得に向けた監査費用が引き続き生じますので、これらによって前年同期で増加する計画としています。この結果、営業利益は前年比でプラス5パーセントとなる計画です。

2024年6月期においては引き続き成長投資を進めつつ、売上の拡大や事業運営の効率化によって営業利益の改善も図っていきたいと考えています。

41ページ以降は、参考資料として会社概要などを添付していますので、お時間のある際に目を通していただければと存じます。以上、2024年6月期の業績見通しについて、2023年6月期通期決算説明資料をもとにご説明させていただきました。ご清聴ありがとうございました。

佐々木氏からのご挨拶

佐々木:みなさまのご支援のおかげで、当社グループは上場3期目となる2023年6月期を無事終えることができました。NTTドコモグループさまへのOEM提供開始や営業拠点の増設など、今後のCLOMO事業の拡大に向けた施策に挑戦することができた1年となりました。

今期もCLOMO事業の拡大を中心に、投資事業など新たな取り組みにも力を入れながら、着実に進めていきます。本日はお忙しい中、当社の説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございました。どうぞ引き続き、ご支援のほどお願い申し上げます。

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