8月も半ばを過ぎると、イタリアもバカンスから自宅へ戻る人が増えてきます。
楽しかったバカンスが終わった虚脱感、9月から始まる新学期の準備などで、少しばかりけだるい空気が漂うのがこの季節です。行きつけのバールに赴いて、常連さんたちとバカンスを語り合う姿もよく見られます。
カフェ文化が根付いているイタリアに、スターバックスが上陸したのは2018年のことでした。満を持してイタリアに進出したスターバックス、その成功の理由とはなんだったのでしょうか。イタリアのカフェ文化とともに解説します。
ローマ教皇さまも気に入った?異教徒たちの飲み物「コーヒー」
アラブ人たちの飲み物とされていたコーヒーがヨーロッパに渡来したのは、16世紀とされています。交易で栄えていたヴェネツィアにもたらされ、その後ヨーロッパ各地に「カフェ」が誕生します。
コーヒーは当初、異教徒たちが飲むものとしてキリスト教会は好ましく思っていなかったようです。
しかし1600年頃、当時の教皇がコーヒーを味わい、すっかり気に入って飲用を認めたことから、カフェ文化にも拍車がかかったと言われています。
ヴェネツィアの「カフェ・フローリアン」、パドヴァの「ペドロッキ」、ローマの「カフェ・グレコ」は、こうした流れの中で生まれました。
18世紀初頭のカフェでは、芸術家やジャーナリスト、文学者などが集う、インテリたちの社交の場でした。
現在のイタリアでは、どんなに小さな町にもバールがあります。常連さんたちが集まって、にぎにぎしくおしゃべりをする様子は、いかにもイタリア的な光景といえるでしょう。
スターバックスがイタリアに上陸!着々と店舗数は増加中
イタリア人は、自国の食文化に強い自負心を持っています。パスタもピッツァも、世界に普及してそれぞれの地域で発展したものの、本家本元は自分たちの国と確信しているのです。
マクドナルドやケンタッキーフライドチキンはイタリアに上陸済みですが、日本に比べると店舗数は少ない印象があります。そんななか、2018年に満を持してイタリアに進出してきたのがスターバックスでした。
イタリア人たちは「いったい誰が高い金を払ってアメリカのコーヒーを飲みに行くのだろう?」と一様に首をかしげていました。すぐにつぶれるのではないかという、不躾な意見も少なくなかったのです。
ところが2023年8月現在、スターバックスはミラノ、トリノ、ローマなどの都市に、13店舗をオープンさせています。
特に話題になったのは、イタリア国内でもコーヒーがおいしいことで知られるナポリに出店を決めたときです。ナポリの第1号店は、外国人客も多いカゼルタのアウトレット内にオープンしました。
ところが2023年夏、スターバックスはナポリの町の中心ウンベルト一世のガレリア内に開店することを発表。ナポリっ子の度肝を抜きました。
というのもウンベルト一世のガレリア周辺は、「グランカフェ・ガンブリヌス」などの名店や老舗が軒を連ねています。スターバックスはまさに、イタリアの古き良きカフェの伝統に挑戦してきたという趣があります。