2. 2023年度の年金額は3年ぶりに引き上げへ

2023年1月20日、厚生労働省が、2023年(令和5年)度の年金額引き上げを公表しました。新規裁定者(67歳以下)の年金額の例は以下の通りです。

2.1 国民年金(老齢基礎年金)

  • 6万6250円(1人分)

2.2 厚生年金(「標準的な夫婦世帯」が受給する2人分の金額)

  • 22万4482円(※夫婦2人が受け取る標準的な「モデル年金」)

※モデル年金:平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

新規裁定者(67歳以下)で2.2%、既裁定者(68歳以上)で1.9%の引き上げとなりました。ポジティブな変化ではありますが、昨今の物価上昇を鑑みると手放しでは喜べません。

3. 厚生年金「平均受給額(月額)」を見る時の注意点3つ

ここからは、厚生労働省「令和3年度厚生年金・国民年金事業の概況」をもとに、厚生年金の「1人あたり」の受給額を見ていきます。

厚生年金の男女全体の平均月額は「14万3965円」です。しかし、数字だけをそのまま捉えてはいけません。

これからご紹介する注意点を念頭において、参考データを正しく見ていきましょう。

3.1 注意点①:「国民年金(基礎年金)」部分も含まれる

厚生年金の平均月額は約14万円ですが、この数字には国民年金(基礎年金)」も含まれている点にご注意ください。

先ほど「年金制度の仕組み」で確認したとおり、2階建ての1階が国民年金、2階が厚生年金です。

厚生年金の平均月額14万円に国民年金が加算されると勘違いされる方は少なくないようです。しかし、厚生年金には国民年金部分が含まれていますので、マネープランを考える際に誤って国民年金を加算しないよう注意しましょう。

3.2 注意点②:個人差が大きい

厚生年金の平均月額は約14万円ですが、細かく見ていくと非常に個人差が大きいことがお分かりいただけます。

厚生年金の年金月額階級別受給権者数を1万円刻みで見ていきましょう。

<厚生年金月額階級別の老齢年金受給者数>

出所:厚生労働省「令和3年度厚生年金・国民年金事業の概況」

  • 1万円未満:9万9642人
  • 1万円以上~2万円未満:2万1099人
  • 2万円以上~3万円未満:5万6394人
  • 3万円以上~4万円未満:10万364人
  • 4万円以上~5万円未満:11万1076人
  • 5万円以上~6万円未満:16万3877人
  • 6万円以上~7万円未満:41万6310人
  • 7万円以上~8万円未満:70万7600人
  • 8万円以上~9万円未満:93万7890人
  • 9万円以上~10万円未満:113万5527人
  • 10万円以上~11万円未満:113万5983人
  • 11万円以上~12万円未満:103万7483人
  • 12万円以上~13万円未満:94万5237人
  • 13万円以上~14万円未満:91万8753人
  • 14万円以上~15万円未満:93万9100人
  • 15万円以上~16万円未満:97万1605人
  • 16万円以上~17万円未満:101万5909人
  • 17万円以上~18万円未満:104万2396人
  • 18万円以上~19万円未満:100万5506人
  • 19万円以上~20万円未満:91万7100人
  • 20万円以上~21万円未満:77万5394人
  • 21万円以上~22万円未満:59万3908人
  • 22万円以上~23万円未満:40万9231人
  • 23万円以上~24万円未満:27万4250人
  • 24万円以上~25万円未満:18万1775人
  • 25万円以上~26万円未満:11万4222人
  • 26万円以上~27万円未満:6万8976人
  • 27万円以上~28万円未満:3万9784人
  • 28万円以上~29万円未満:1万9866人
  • 29万円以上~30万円未満:9372人
  • 30万円以上~:1万4816人

ボリュームゾーンは「9万円以上~11万円未満」です。17万円以上の方も多いようですね。

8万円以上~20万円未満のゾーンにそれぞれ90万人~100万人ほどが固まっているのが見てとれます。

平均月額14万円は、それぞれの数値が平準化されていることを踏まえて「参考」程度に捉えておかなければ、老後に向けて正しい生活設計ができなくなります。