公的年金の受け取りは原則として65歳からですが、60歳から65歳になるまでの繰上げ受給と66歳以降75歳までの繰下げ受給も選択できます。

このうち繰上げ受給は繰上げた月数に応じて減額された年金額が一生続くため、一般的には選ばないほうが無難とされています。

今回は年金の繰上げ受給の基本と注意点、減額される金額、どのような人に適した仕組みなのかを解説します。

1. 年金の繰上げ受給をする人の割合は?主な注意点7つ

年金の繰上げ受給とは、原則65歳からの公的年金の受給を60歳から64歳に前倒しすることです。

繰上げ受給をすると、繰上げの請求時点に応じて年金が減額されます。繰上げの減額率は繰上げ1カ月あたり0.4%または0.5%で、以下のような条件になっています。

  • 1962年4月2日以降生まれの人:0.4%(最大24%)
  • 1962年4月1日以前生まれの人:0.5%(最大30%)

1.1 繰上げ受給する人の割合は?

実際のところ、繰上げ受給を選ぶ人の割合はどの程度でしょうか。厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2021年の繰上げ受給の割合は以下のとおりです。

  • 国民年金のみの人:27.0%
  • 厚生年金の人:0.6%

1.2 年金の繰上げ受給の注意点

公的年金の繰上げを請求すると取り消しはできず、減額された年金を一生受け取ることになります。

そのため、繰上げ受給は慎重に考える必要があります。その他、以下のような点に注意が必要です。

  • 国民年金と厚生年金の繰上げは原則同時に請求しなければならない
  • 繰上げ請求をすると国民年金の任意加入や、保険料免除や納付猶予を受けた期間の追納もできなくなる
  • 繰上げ請求をすると厚生年金基金の年金額が減額される場合がある
  • 雇用保険の基本手当や高年齢雇用継続給付が支給される場合、厚生年金の一部または全部が支給停止となる
  • 65歳までは老齢年金と遺族厚生(共済)年金は併給できない
  • 繰上げ請求をすると寡婦年金を受給できなくなる
  • 繰上げ請求をすると事後重症などによる障害年金の請求ができなくなる