就職氷河期世代の老後問題

就職氷河期世代は、現在40歳代から50歳代となっており、50歳代においてはあと10年ほどで、年金を受給し始める年齢となります。

日本の公的年金は「2階建て構造」となっており、「厚生年金」と「国民年金」が存在します。

国民年金は日本に住む20歳~60歳未満の国民すべてが加入し、保険料納付等の要件を満たせば老齢基礎年金が受け取れます。

一方で、厚生年金は会社員や公務員だった人にのみ支払われます。

また、厚生年金は「報酬比例」となっており、現役時に支払った保険料に比例して受給額が異なります。

満足のいく職に就けなかったり、非正規雇用のまま働き続けていたりする50歳代においては、年金受給額が低い人の割合が多くなる可能性があります。

厚生労働省の発表した「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、60歳から69歳までの厚生年金の平均受給月額は【図表5】のとおりです。

厚生年金の平均受給額が「14万3965円」、国民年金の平均受給額が「5万6368円」となっており、その差は大きなものとなっています。

厚生年金を受給できる場合であっても、1ヶ月の支出をまかなうには心もとなく、貯蓄をしていない人の割合が多い50歳代では、就職難に加えて「老後生活の問題」も課題になるとうかがえます。

まもなく「老後生活」に突入する就職氷河期世代

本記事では、50歳代「就職氷河期世代」の貯蓄事情について紹介していきました。

就職氷河期世代にあたる50歳代の貯蓄中央値は、夫婦世帯が「350万円」単身世帯「53万円」となっており、老後資金としてはまだまだ不足しているとうかがえます。

また、貯蓄割合においては、貯蓄が「ある人」と「ない人」の二極化が深刻化しており、特に単身世帯においては、貯蓄がない人の割合のほうが多い状況となっています。

上記の要因として、就職氷河期によって就職難となった人が多く、現在もなお非正規雇用として働いている人が多いことから、貯蓄額が低い傾向にあるのだとうかがえます。

これを受け政府は、就職氷河期世代を対象とした支援を行っており、内閣官房「就職氷河期世代の就業等の動向」では、就職氷河期世代の中心層の正規雇用労働者は2019年からの3年間で8万人増加したと発表しています。

就職氷河期世代の正規雇用者が増加していますが、それら世代は間も無く定年となり「老後生活」へと突入していきます。

就職氷河期世代がシニア世代に移行しつつある現代においては、今後政府は就職支援だけでなく、貯蓄が十分でない就職氷河期世代の老後に向けた資産形成のサポートも課題となると言えるでしょう。

参考資料

太田 彩子