2023年8月4日に発表された、株式会社正興電機製作所2023年12月期第2四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社正興電機製作所 取締役常務執行役員 経営統括本部長 田中勉 氏

1.会社概要

田中勉氏:当社は、福岡市に本社を置き、今年で創業102年となる企業です。資本金は26億721万7,518円、2022年12月期の連結売上高は250億円、連結従業員数は993名となっています。 国内では福岡本社・古賀事業所・東京支社、その他全国に16ヶ所の営業拠点と子会社4社を持っており、北海道から沖縄まで、全国に営業展開を行っています。

また、海外では中国の大連、北京をはじめ、マレーシアやフィリピンに製造・販売・開発拠点を持っており、アジア各国へ事業展開を行っています。

1.会社概要【沿革】

続きまして、当社の沿革について簡単にご説明いたします。当社は1921年に商事会社「正興商会」として創業し、1928年には配電盤・開閉器の生産を開始、製造メーカーとして「モノづくり」をスタートしました。

1960年に、現在の「正興電機製作所」に商号を変更し、グループの開発・生産拠点である古賀工場を建設しました。1960年より日立製作所さまとの技術提携を行い、1973年には九州電力嘉穂制御所さま向けの制御システム(OT)の開発、1985年にはワークステーションの基本ソフトウェア(ITシステム)の開発をスタートしました。

1989年にはマレーシアに生産拠点として子会社を設立、その後、中国・フィリピンへ海外進出を行っています。1990年に福岡証券取引所に上場、2005年には東京支社を設立しています。

2010年には、IoT技術を活用した操作支援システムを開発し九州電力さまへ納入を開始しました。2020年には、火力発電所に自動巡視点検AIロボットを納入、2021年にはAI・ARソリューションを展開するベンチャー企業HMS社へ出資を行うなどAI技術の取組みを進めています。

また、2021年に創立100周年を迎え、さらなる事業拡大に向け、技術開発拠点Eサイトの建設と古賀事業所の生産エリアの拡張を行っています。

1.会社概要【事業内容】

正興グループの事業内容についてご説明いたします。沿革の中でご説明しましたとおり、当社はプロダクト(モノづくり)に加え、IT(情報技術)、OT(制御技術)を有する数少ない企業であり、電力・エネルギー分野や、水・道路などの公共施設、物流・産業分野など、幅広い分野に事業を展開し、社会インフラを支えています。

また、このIT・OT・プロダクト技術に、AI・IoTなどの最新のデジタル技術を組み合わせ、脱炭素やデジタル(スマート保安ソリューション)など、事業活動を通じた社会課題解決に「One 正興」で取組んでいます。

1.会社概要【正興グループ事業体制】

次に、当社グループの事業体制についてご説明いたします。国内および海外の事業会社と相互に連携し、電力部門、環境エネルギー部門、情報部門、サービス部門の4つの部門とその他(エレクトロニクス・オプトロニクス分野)にて、事業を推進しています。

事業規模の構成としましては、主力事業である電力・環境エネルギー・情報部門の3部門で全体の約80パーセントを占めています。

2.事業内容【電力分野】

それでは、主要事業の内容についてご説明いたします。電力分野では、発電所から送電・配電に関する設備を長きにわたり製作、納入しています。電力設備を安定的に運用するための監視制御システム(OT)や情報システム(IT)についても40年以上の実績を持っており、システムの開発・構築からメンテナンスまでを行っています。

また近年、業務の効率化・省人化・自動化に向けた取組みが加速していく中、当社独自のスマート保安ソリューションを展開しています。カメラと独自のIoTセンサーにより、設備データを遠隔で監視する遠隔設備監視システム、スマートグラスやICタグにより現地操作をナビゲーションする現地操作支援システムにおきましては、九州内の変電所や全国の電力会社へ順次展開しています。

現地操作支援システムは、導入後、ヒューマンエラーによる事故「ゼロ」を実現しており、電力会社のみならず産業プラント設備にも展開しています。

また、AIを搭載した巡視点検ロボットにおいても、九州電力さまや、関西電力さま、電源開発さまの火力・水力発電所や変電所にて運用されています。

これらスマート保安ソリューションにつきましては、電力分野だけでなく、他の事業分野も含め、当社グループの重点成長分野として注力しています。

2.事業内容【環境エネルギー(公共分野)】

公共分野におきましては、全国の自治体やネクスコ各社に展開しており、当社グループの中で一番規模の大きな事業です。

水処理分野と道路分野で構成されており、水処理分野におきましては、浄水場や下水処理場の設備を一括で監視・制御を行うシステムや小水力発電システムなどを納入しています。

道路分野では高速道路のサービスエリアやトンネルの照明・換気設備の受変電設備を納入しており、どちらの分野も製品・システムの設計・製作から設置工事、保守メンテナンスまでトータルにサポートしている点が特徴となっています。

2.事業内容【環境エネルギー(産業)部門】

産業分野では、脱炭素に貢献するエネルギーソリューション、業務の効率化・自動化を実現するデジタルソリューションの2つの事業を展開しています。

エネルギーソリューションにおきましては、当社独自のパワエレ技術を活用した企業向けの脱炭素・再エネソリューションや、メガソーラー、風力・小水力発電など再生可能エネルギー発電所向けの電源・監視システムなどの設計・製作を行っています。

デジタルソリューションにおきましては、電力分野で多くの実績のあるスマート保安ソリューション(プラットフォーム)をエネルギー会社や鉄道・産業プラント工場へ展開しています。

スマート保安ソリューションにおきましては、電力分野と連携し重点成長分野として注力しています。

2.事業内容【情報部門】

情報部門では、データセンターを活用したクラウドサービスを展開しています。

港湾分野では、港湾関連事業者向け業務サポートサービスを提供しており、コンテナ台帳サービスは国内トップシェアとなっています。

また、港湾業務DX化に向け、国土交通省が推進する荷役自動AIターミナルやペーパレス化など、サイバーポート事業を進めており、今後の事業拡大が期待されます。

ヘルスケアソリューションにおきましては、当社の健康管理ソリューションは、従業員の健康状態の見える化、産業医の保健業務のDX化、ウェアラブル端末を活用したウォーキングイベントなど企業の健康経営をサポートするシステムとなっています。

また、B2BやB2Cのeコマースソリューション、インターネットによる企業、学校、個人向けeラーニングサービス等も展開しています。

2.事業内容【その他】

次にその他、新製品などの取組みについてご説明いたします。

1つ目は、当社は液晶調光フィルム「SILF」を開発しており、このフィルムは、主としてオフィスやホテルの客室などのパーテーションとして使われていますが、救急車の窓のシャッターとしても採用されており、各自動車メーカの一般車両向けなど、車載市場の拡大に取組んでいます。

2つ目の、AIクラウドソリューションにつきましては、独自のAIクラウドプラットフォームにより費用を抑えながらAI監視を実現するもので、当社が出資しているベンチャー企業HMS社との協業によりサービスの展開を進めています。このシステムは、AWSの活用や既存の監視カメラとの組み合わせも可能であり、危険地域への侵入検知や入退所管理サービスなどへの展開に取組んでいます。

3つ目は、海外における再エネ事業の取組みです。中国におきましても、現地進出日系企業の再エネに関する投資が進んでおり、同日系企業を中心に、PPAを活用した太陽光発電システムの設置や、 現地で開発した電力遠隔監視システムの導入を行っており、今後も再エネ事業の拡大が期待されます。

5.IC2026 中期経営計画

次に、中期経営計画についてご説明いたします。当社は、2026年を最終年度とする「中期経営計画 SEIKO IC2026」を策定しています。

中期経営計画の基本方針としましては、サステナビリティ経営を掲げ、3つの重点方針に取組んでいます。

1つ目は「デジタルファースト」デジタル技術を活用した社会課題解決、2つ目は「脱炭素社会の実現」カーボンニュートラルへの取組み、3つ目は「One 正興」グループ総合力発揮による国内・アジアへの事業展開です。

「中期経営計画 SEIKO IC2026」の経営目標としまして、売上高400億円、営業利益36億円を設定しています。

4.2023年12月期 第2四半期決算概要

それでは、2023年度第2四半期決算についてご説明いたします。

第2四半期におきましては、売上高については、前期に再エネ関連の大口案件があった影響から微減となりましたが、利益につきましては、環境エネルギー部門の水処理関連施設向け設備や、その他部門の電子制御機器分野が堅調に推移したこと、また、電力部門の利益率の改善等により増加しました。

その結果、2023年第2四半期の連結業績は、売上高は125億5,600万円、前年同期比2.1パーセント減、営業利益は8億4,200万円、前年同期比20.2パーセント増、経常利益は9億4,800万円、前年同期比15.9パーセント増、親会社株主に帰属する当期純利益は6億1,800万円、前年同期比17.9パーセント増と、売上高は微減となりましたが、利益については半期開示開始以来、過去最高となっています。

4.2023年12月期 第2四半期決算概要・・営業利益の増減要因

続きまして、前期に対する部門ごとの営業利益の増減要因を下のグラフで表していますが、今回、増加した主な理由としましては、当社グループの主力事業である電力部門、環境エネルギー部門が堅調に推移したこと、また、その他部門の電子制御機器分野の売上が増加したことです。

各部門の詳細につきましては、次ページよりご説明いたします。

4.2023年12月期 第2四半期決算概要・・セグメント別業績①

電力部門におきましては、売上高については、OT(制御・運用技術)分野で前期に大口案件があった影響から減収となりましたが、IT(情報技術)分野での操作支援や遠隔監視といったスマート保安ソリューションが堅調に推移したことや、継続して取組んでいる原価低減活動の効果により、利益は増加しています。

環境エネルギー部門におきましては、電子部品を中心とした部品の入荷遅延が前期に比べ改善傾向であることや、公共分野において水処理施設向け監視制御システムの売上が増加し、増収増益となっています。

4.2023年12月期 第2四半期決算概要・・セグメント別業績②

情報部門におきましては、国内では、港湾分野でのサイバーポート事業や、ヘルスケア分野の介護認定支援システムなどのサービス事業が堅調に推移し、売上は増加しましたが、海外において、フィリピンでの日系企業向けシステム開発関係の売上が減少し、利益については減少となりました。

サービス部門におきましては、前期に比べ、太陽光発電所向け大口案件が減少したことや、デジタル関連製品の販売が低迷し、売上・利益とも減少となりました。

4.2023年12月期 第2四半期決算概要・・セグメント別業績③

その他の事業におきましては、国内および海外(マレーシア)での電子制御機器分野の売上が増加したことや、電力会社の発電所、変電所向け工事が堅調に推移したことにより、売上・利益ともに増加となりました。

5.2023年12月期 業績予想

当期の業績予想としましては、環境エネルギー部門を中心に期首時点で受注残が約41億円増加しており、また、電力部門、環境エネルギー部門、情報部門の受注も堅調に推移していることから、期首の予定通り、売上高は300億円、前年同期比20パーセント増、営業利益は20億円、前年同期比38.8パーセント増、親会社株主に帰属する当期純利益は13億7,000万円、前年同期比26.5パーセント増を見込んでいます。

6.株主還元①

次に、株主還元についてご説明いたします。中間配当金につきましては、前期から2.5円の増配の1株当り17.5円を決議しています。

また、期末配当金につきましても、2.5円の増配の1株当り17.5円を予定しており、年間配当金としましては5円増配の35円を予定しています。

2016年からの配当金の推移をグラフに表していますが、当社は事業の成果を還元し、株主のみなさまからのご期待に沿えるよう、これまで継続的な増配を行っています。

6.株主還元②

次に、株主優待制度についてご紹介いたします。当社では、株主のみなさまの日頃からのご支援に感謝するとともに、当社株式への投資の魅力を高め、より多くの方々に中長期的に当社株式を保有していただけるよう、株主優待制度を導入し、当社株式の保有株式数に応じて、「QUOカード」を贈呈しています。

7.トピックス①

最後に、最近のトピックスを記載しています。当社は、「社員が活き活きと仕事ができる」企業グループを目指し、健康経営の推進を重点課題として取組んでいます。

2018年より6年連続で健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定を受けており、上位500法人が選定される「ホワイト500」に認定されています。

また、社会貢献の1つとして、当社は地域、学校、自治体などの地域のみなさまとまちの新たな景観づくりや、花や緑のある持続可能なまちづくりを推進する「まちにわプロジェクト福岡」の活動を企業グループボランティアの団体代表として行っています。

7.トピックス②

また、オープンイノベーションを通じた新事業・新製品の創出に向け、今年度は、北九州学術研究都市技術開発交流センターへの産学官連携オフィスの開設や、チャイナ・モバイル・インターナショナルとの戦略的パートナー提携、長岡技術科学大学との共同研究による「カメラによる光の映り込みの軽減および計器文字盤を鮮明化できる技術」の開発などを行っており、今後も積極的にさまざまな取組みを推進してまいります。

以上で、当社の事業内容、2023年12月期第2四半期の決算概要のご説明を終了します。ありがとうございました。

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