2023年7月26日に発表された、株式会社ヴィア・ホールディングス2023年3月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社ヴィア・ホールディングス 代表取締役社長 楠元健一郎 氏
株式会社ヴィア・ホールディングス 経営推進室長兼CFO 羽根英臣 氏

2023年3月期決算説明

楠元健一郎氏(以下、楠元):みなさまこんにちは。株式会社ヴィア・ホールディングス代表取締役社長の楠元健一郎です。本日は大変お忙しい中、決算説明会をご視聴いただきまして誠にありがとうございます。

猛暑が続いていますが、体調はいかがでしょうか? 我々は居酒屋を中心とした外食企業です。事業内容について、みなさまに少しでもご理解いただけるような中身にしていきたいと思っています。ご視聴のあと、「今日はどこかに飲みに行きたくなったな」と思っていただけるような説明会にしたいと思いますので、ぜひ、ゆったりとした気分で聞いていただければと思います。よろしくお願いします。

会社概要

初めてご参加される方々も多数いらっしゃると思いますので、まずは簡単に会社概要をご説明します。

株式会社ヴィア・ホールディングスは、現在全国に324店舗を展開しており、直営が293店舗、FC加盟店が31店舗あります。北は北海道の札幌から、南は九州の福岡まで、全国に多数の業態を持っています。

会社概要

もともとは、暁印刷という印刷業から始まりました。印刷業界の事業構造改革ということで、「すかいらーく」を創業した横川兄弟が出資したことで始まったのが飲食業です。

業態の俯瞰図

業態についてご紹介します。まずは、「備長扇屋」「やきとりの扇屋」「炭火やきとりオオギヤ」です。こちらは文字通り、炭火焼き鳥の居酒屋です。「日本橋紅とん」は、焼きとんの居酒屋です。「魚や一丁」は刺身や寿司などの、いわゆる海鮮居酒屋です。「いちげん」は埼玉ローカルにドミナントを持った総合居酒屋です。

また、フードリームが運営しているファミリーレストラン系の洋食、中華、「カジュアル・ダイニング」という洋風居酒屋、「パステル」というパスタとスイーツの専門店の業態があります。最後は、「ぼちぼち」というお好み焼き・もんじゃ焼きの鉄板料理屋です。

ブランド紹介(やきとりの扇屋)

直営で293店舗とお伝えしましたが、そのうちの169店舗が「やきとりの扇屋」です。ヴィアグループの中核の業態で、駅前の商業ビルタイプの「ザ・居酒屋」という立地から、ファミリーレストランと同じように地方・郊外のロードサイドにあるお店まで、さまざまなパターンの業態があります。

また、比率がフード6、ドリンクが4の店舗から、フード9、ドリンク1の店舗まで、バリエーション豊かな立地に存在する特徴的な焼き鳥居酒屋です。

ブランド紹介(パステル)

フードリームのカジュアル業態の主力が「パステル」です。現在、フードリームは直営が74店舗あります。そのうち「パステル」が35店舗と、約半分を占めています。「なめらかプリン」で一時期有名になった業態で、基本的にはスイーツとパスタレストランを、イオンや丸井などの大手ショッピングセンターに出店しています。

ブランド紹介(紅とん/一丁)

株式会社紅とんには、「紅とん」と「ぼちぼち」の2つの業態があります。「紅とん」は、スライドでは「働くお父さんのエネルギー源!」とありますが、ジェンダーレスの時代でもあり、最近は「働くビジネスパーソンのためのエネルギー源!」とお伝えしています。こちらは先ほどの「扇屋」とは打って変わって、東京23区内を中心に出店している「ザ・居酒屋」と言える、焼きとんの居酒屋業態です。

「魚や一丁」は、刺身・寿司を提供している刺身居酒屋業態です。

以上が、ヴィアグループの主な業態のご紹介でした。続いて、CFOの羽根より2023年3月期の決算の状況についてご説明します。

2023年3月期 連結決算について

羽根英臣氏:それでは2023年3月期の連結決算について、ご説明します。

2023年3月期の連結会計年度は、4月から2年ぶりに、営業制限のない営業が全店舗で可能となりました。売上高は、都市部を中心に想定を上回るスピードで順調に回復したものの、新型コロナウイルス第7波が、夏場の売上に大きな影響を与えました。また、冬場も新型コロナウイルス第8波により、居酒屋業態の宴会事業が大きな影響を受けました。

コスト面については、不採算店舗を閉店し本部コストを削減するなど、過年度に大規模な収益構造改革を行った結果、利益が出やすい体制となりました。しかしながら、急激な円安により、ありとあらゆるものの価格が上昇しています。

また、エネルギーコストや仕入れ価格も大幅に上昇しています。加えて、人手不足や最低時給単価の引き上げなどによって人件費も大幅に上昇し、その影響を受けた結果となりました。

店舗数は、不採算店舗や契約を行えなかった店舗を閉店したことにより、前期の期首と比べて28店舗減少の324店舗となっています。

以上の結果、売上高は145億5,300万円、営業利益はマイナス9億3,300万円、経常利益はマイナス10億円となりました。当期純利益については、雇用調整助成金や時短営業協力金の収入がなかったため、マイナス13億2,900万円となっています。

2023年3月 連結決算(前期比)

当期の連結決算の数字について、前期と比較しています。先ほどお伝えしたとおり、4月から全店舗で営業が可能となりましたが、新型コロナウイルス第7波および第8波の影響により、売上高は42億9,500万円の増加に留まり、145億5,300万円となっています。

営業利益は、当社グループで過年度に実施した大規模な収益構造改革が影響しています。具体的には黒字化が見込めない店舗や、黒字化には長期の時間を要することが見込まれる店舗について、前倒しで閉店を行いました。

また、早期退職者制度の実施に加え、各事業会社がそれぞれ持っていた本社機能をホールディングスに一本化し、徹底的なスリム化を図った結果、売上規模に合わせたコンパクトな本部体制が実現しました。

しかし、急激な円安によってありとあらゆるものの価格が上昇しており、水道光熱費においては脅威的な水準にまで上昇しました。加えて、人手不足や最低時給単価の引き上げによる人件費の増加など、環境の劇的な変化に伴うコスト増加の影響を受ける結果となりました。

また、前期には地方自治体からの時短営業・休業の要請を受けました。その要請を遵守していた期間に発生した店舗家賃などの固定費には臨時性があるとし、約18億円を販売費および一般管理費から特別損失へと振り替えています。その結果、前期と比べて1億9,000万円の利益改善に留まり、営業利益はマイナス9億3,300万円となりました。

前期の実績には、時短営業要請を遵守したことによる雇用調整助成金約3億円が営業外収益に計上されています。そのため、経常利益は前期と比べて1億7,300万円減少し、マイナス10億円となっています。

当期純利益についても、前期の実績には休業要請を遵守したことによる時短協力金や雇用調整助成金約37億円が特別利益として計上されています。そのため、前期と比べて18億7,200万円減少し、マイナス13億2,900万円で着地しました。

今期は、4月よりヴィア・ホールディングスおよび紅とんの社長を務めている楠元が「扇屋」の社長を兼任するということで、社内の体制が大きく変化しています。また、3月にはマスクの自由化、5月には新型コロナウイルス感染症が5類に変更されるなど、経営環境は4月から6月にかけて徐々に回復しています。

7月の時点では、当社グループの売上高はコロナ禍前の水準にまで戻ってきています。一方で、急激な円安による物価コストの大幅な増加への対応が近々の課題となっています。しかし、早期黒字化を実現するための社内組織体制の変更はすでに完了しています。

また、さらなる収益構造転換を行うことで収益構造の安定化を進め、年度末の再成長を見据えた体制の確立に向け、さまざまな施策を実施していきたいと考えています。

以上をもちまして、2023年3月期の決算実績についての説明を終了します。続いて、社長の楠元より今後の事業方針についてご説明します。

既存店舗 売上高 前年比推移 前年比 / 2019年比

楠元:羽根からご説明させていただいたとおり、非常に厳しい前期決算となりました。ご心配をお掛けして大変申し訳ありません。しかしながら、足元では業績がしっかり上向いてきています。

ここからは、アフターコロナに向けての準備と、大幅に増加しているコストへの対応方針についてご説明します。スライドは、羽根からご説明した昨年の経緯を時系列で並べたものです。棒グラフは新型コロナウイルスの感染者数を表しており、第7波と第8波があったことがわかります。

昨年の年初は、まん延防止等重点措置による営業制限がありました。そちらが3月22日に解除された後の1年間は、時短営業等の影響がまったくない状況でした。フルに営業できることは、私どもにとって非常にありがたいことであり、ようやく営業が戻ってきました。

一方で、新型コロナウイルス感染症の第7波、第8波の波は非常に高いものでした。その中でのフル営業は、今後のウィズコロナ、アフターコロナにおいてどのように戦っていくのか検証できたという意味で、意義深い2023年3月期であったと思っています。

グラフはコロナ禍を中心に記載していますが、さらに大きな問題は、まん延防止等重点措置の時期にかかる2月から3月に、ロシアとウクライナの戦争が始まったことです。それを発端として、急激な円安や原価高、エネルギー高、物流費高が、ある意味でコロナ禍以上の新たな課題、敵として立ちはだかりました。

新しいコスト構造下で収益を生み出す体質にどう変わるべきか、また、アフターコロナに向かってどのような業態作りをしていくべきかということは、実は同義であることがよく理解できた1年でした。それに向かって、1年間かけて構造改革を行ってきました。

オレンジ色の折れ線グラフは、売上高をコロナ禍前の2019年と比べたものです。足元の6月は94.3パーセントで、この7月では95パーセントを超えてきています。100パーセントに近く、2019年当時の売上に戻りつつあることを、まずはみなさまにご認識いただけるとありがたいと思っています。

事業方針_事業再生の第3フェーズ

今年度の方針をご説明していきたいと思います。フェーズ1、フェーズ2、フェーズ3とあります。私どもは、再生のための準備フェーズ、再生フェーズ、再成長フェーズと呼んでいます。「再生から再成長」となります。

フェーズ1は私が社長に就任した1年目になります。当時はまず、事業再生ADRの成立を最優先に行い、資本と財務体質の改善を行うと同時に、それを財源として会社全体の体質をスリム化し、いわゆる筋肉質化に向けた構造のリストラクチャリングに集中しました。

先ほどの決算説明のとおり、昨年度は収益を目指す構造改革に着手しなければいけないというところで、フェーズ2を過ごしてきました。

フェーズ2に「脱旧居酒屋」と記載しているため、みなさまから「居酒屋を辞めるのですか?」とよくご質問を受けたのですが、それは違います。私どもは居酒屋を中心に生きてきた会社ですし、居酒屋は今後も必要とされると思います。

ただし、やはり働き方も、人々の動き方も、飲みに来る時間も変わりました。行動変容は間違いなく起きています。したがって、営業のあり方、特に収益構造を変えていくことで、みなさまの飲み方、食べ方も必ず変わると思っています。

そのため、居酒屋は辞めませんが、昔のやり方ではなく新しいタイプの居酒屋に変わっていこうということで「脱旧居酒屋」としました。いろいろなことに取り組んできたのが昨年度であったということです。それらの施策を通して、また足元の状況からも、再生を終わらせて再成長へ向かうフェーズ3のタイミングに来ていると判断しています。

スライドでフェーズ3の下に記載している今年度の基本的な方針についてご説明します。まずは「新たな収益構造の安定化」になります。先ほどお伝えしたコストの中でも特に大きいのは原価です。その次が人件費、加えてエネルギーコストとして水光熱費が非常に上がっています。

従来のオペレーション、あるいは従来の価格帯ではなかなか収益を生まないため、昨年の夏以降、構造改革に真剣に取り組んできました。今、その結果が出始めており、まずは新たな収益構造の安定化を目指す1年になると思っています。

それに加えて再成長です。黒字化を達成することにより再生は終了しますが、それはゴールではなく、新たな再成長へのスタートです。その中で「新業態、新コンセプトの業態展開」をどのように行っていくかが重要です。

それはオペレーションの転換で成し遂げられるかもしれませんし、収益構造転換によって成し得るかもしれません。結果として業態変化していくことで、転換を図っていきます。無理に何かに変わっていくのではありません。焼き鳥屋を何かに変えるということではなく、その変化の延長線上に転換が起きるように、いろいろな設計をしています。

「再拡大準備」は、シンプルに出店のことです。だいぶ店舗リストラをしてきました。生き残るためには仕方がなかったのですが、これからは店舗の出店を再開していくフェーズに入っていきます。

「調達力強化」については、付加価値の拡大と記載しています。物流費も原材料費も上がっています。加えて、供給上の問題もあります。よく報道されていますが、スーパーで突然生卵が高くなったと言われています。

これは単なる値上げではなく、生産者も水光熱費の高騰で困っており、それが価格転嫁されたという側面もあります。また、経営が難しくなり、休・廃業した業者も多数あります。そのため、供給量も非常に不安定になっており、今までいつでも手に入った食材が、思うように手に入らない時代がすでに来ています。これはしばらく続くのではないかと思っています。

したがって、調達力強化は収益構造にもつながります。今後、新しい事業展開ができるかどうかはすべてここにかかってくると考え、調達力強化を昨年の夏から続けてきました。今年はこれを根付かせていきたいと思っています。

そしてもう1つ、みなさまが注目されている外食業としてのデジタルトランスフォーメーション(DX)についてです。今後、いろいろなITシステムの導入も考えていく中で、「新経営システムへの移行」が進んでいます。今、事業再生ADRによる優先株でご支援いただいているため、次の新たなステージの「資本デザイン」に入っていける1年になると思っています。

事業方針_第2フェーズの主な投資

昨年の夏以降に取り組んできたこと、どのように今年につなげているかを簡単にご説明します。第3フェーズへの種まきということで、「リフォーム」「戦略的リニューアル」「リモデル」があります。

リモデルはいわゆる業態展開ですが、その手前でまずはリフレッシュのためのリフォーム、大きなお金をかけての戦略的リニューアルという順番で手を付けています。

「リフォーム」は、ブランドイメージを維持するために、老朽化したものや見栄えの悪いところをまずはきれいにしようということです。正直に言いますと、コロナ禍の3年間で営業がままならず、だいぶ荒れてしまった部分もあるため、しっかりと手を入れています。看板の電気が付かなかったり、ドアの建て付けが悪かったりなど、そのようなところを交換していきます。

特に、スライドに赤文字で記載している「新機種(材)導入」は将来への種まきです。先ほどお話ししたオペレーションの転換という意味で、キッチンの機材からお客さまのオーダーシステム、会計システムなどの新機種、新機材の導入を今、実験でかなり進めています。このように、人手が足りない部分への投資も十分に行っています。

また「外装塗り替え」については、コロナ禍がようやく明けるため、やはりお店をきれいにしようということです。

「戦略的リニューアル」は、コンセプトに合ったデザインということです。「パステル」と「やきとりの扇屋」、お好み焼き屋の「ぼちぼち」は、実験的に新しいタイプのお店にリニューアルしています。

「リモデル」は、「扇屋」を中心に行っています。炭火焼き鳥の強みを活かしながら、その技術の中で新しい食動機に向かった業態はどのようなものがあるかということで、昨年に干物食堂の「しんぱち食堂」、今年に入ってから焼き鳥を中心とした食動機の強い「オオギヤ食堂」を立ち上げて実験しています。

事業方針_第2~3フェーズ(事業ポートフォリオ)

第2から第3フェーズの事業ポートフォリオです。焼き鳥屋、刺身居酒屋など満遍なくちりばめていますが、基本的にアルコール動機、食動機と分けています。しかしながら、これからの居酒屋は両方の動機に対応していかなければならないと、私どもは判断しています。

そのため、今後は食動機とアルコール動機のバランスの取れた業態開発や、そのような業態へのリモデルを進めていきたいと思っています。

事業方針_第2フェーズ(脱・旧居酒屋)

その具体例の1つが、前年度から取り組んでいる「二毛作」になります。昼のランチタイムと夜のディナータイムとで顔が変わるというのが二毛作です。

その中心で行ってきたのが、台湾まぜそばの「はなび」です。「はなび」は名古屋発祥の非常に人気のあるブランドで、こちらのFCに入りました。特に「扇屋」と「紅とん」と「ぼちぼち」の業態で、昼は「はなび」を営業し、夜は居酒屋として営業することに挑戦しました。

夜の顔ではランチタイムの営業が厳しい立地もあるため、そのような店舗には昼専門の顔を持ってきて、二毛作で営業するという施策を行っています。これが「脱・旧居酒屋」の1つのスタイルであると仮説を立てて行ってきました。

もう1つが「ダブルネーム」です。2つの顔を持ったお店を昼から夜まで通しで営業することです。一番大きなところでは、「扇屋」がうなぎの「宇奈とと」と組ませていただいて、「オオギヤと宇奈とと」という店舗を展開しています。

先ほど説明した食動機とアルコール動機が時間に関係なくまたがっていく立地においては、お食事動機の強い業態と組ませていただくことで、食事だけでも立ち寄れますし、もしかしたら1杯飲みたくなることもあります。

また、居酒屋として来られているお客さまと同じ空間に一緒にいても居心地感がしっかりとあるようなダブルネームの業態を展開してきました。

事業方針_第2フェーズ(脱・旧居酒屋)

先ほどは「宇奈とと」との社外コラボレーションでしたが、こちらのスライドで紹介しているのは「一源」と「魚や一丁」を合体させた社内でのダブルネームです。「一源」の中に、刺身居酒屋の「魚や一丁」の良いところだけをインストールしています。

現在は「一源」の半数の店舗で、「魚や一丁」とのコラボレーションメニューを展開しており、大変好評です。「魚や一丁」目当てのお客さまも「一源」にご来店いただき、「一源」の客数が非常に伸びています。

下段の「専門店化、小型店化」は、新宿3丁目にある「魚や一丁」です。非常に大きな箱なのですが、大きなお金をかけずに、投資を少なく抑えながら、小型専門店の実験をここで行っています。

入り口の立ち飲みコーナー、簡易で可動式の普通の居酒屋テーブル、中で職人がお寿司を握っているコの字型の寿司カウンター、それから奥に行くと従来型の大箱としての「魚や一丁」のスペースと、4つのゾーニングを作っています。入り口のほうの3つのゾーニングで立ち飲みと、いわゆる居酒屋スタイルをイメージしており、ここだけを切り出せば、小型専門店ができるような実験をしています。

この新宿の店舗は今、過去最高の売上を更新するぐらい、非常にご好評をいただいています。この実験であれば、近い将来に小型専門店である「魚や一丁」が出店できるのではないかと非常に期待しています。

事業方針_第2~3フェーズ(新業態/新規事業)

先ほどお話しした食動機へのまったくの業態転換は、炭火を使っている「扇屋」だからこそできるという延長の中で考えました。スライド上段はFC加盟による業態転換です。「しんぱち食堂」はホッケ、シャケ、サンマなど生の魚から干物まで、すべて炭火で焼く焼き魚定食の専門店です。

「しんぱち食堂」は、今非常に首都圏で伸びています。私どもは、亀有で1店舗実験をしているのですが、「扇屋」の時代よりも2.5倍の売上高になっており、しっかりした利益が得られています。今後は「扇屋」として営業していくのが厳しい立地において、この「しんぱち食堂」への転換が可能なのではないかと、今のところ実験の手応えを感じています。

また、同じような発想なのですが、「扇屋」そのもので食堂をやってみようということで、「炭火焼鳥麺飯店」として新業態の実験を行っています。炭火で焼くことには変わりなく、「その焼き鳥を使って親子丼を作っちゃおう」「同じ焼き鳥の原料から取ったダシでラーメンを作っちゃおう」ということで、お昼は完全に食堂の顔です。

一方で夜は、お昼に炭火で焼いた焼き鳥をお召し上がりいただき、ビールやハイボールを飲んでいただく普通の居酒屋としてもご利用いただけます。もちろん、お昼と同じように食事だけでも楽しめます。

そのようなお店を今、埼玉県の三芳藤久保店で実験しています。ゆっくり育成しており、まずは昼間の顔として定着し、今月から夜の営業を始めています。夜の顔としてもゆっくり浸透しています。

「どうやって利用するの?」「昔の扇屋と違うの?」というみなさまからの疑問にお答えすることで、「だったらちょっとおもしろいね」という好評の声を多くいただいています。そのため、今年度にこの事業体を育て上げ、来年度以降の大きな転換の起爆剤にしていきたいと思っています。

事業方針_第3フェーズ(新コンセプト、新業態)

新コンセプト、新業態についてです。「しんぱち食堂」と「オオギヤ食堂」に加えて、先ほどお話ししたとおり「ぼちぼち」や「パステル」も戦略的に大きくリニューアルすることで、お客さまへの訴求の仕方を大きく転換しています。

「ぼちぼち」はファミリー向け、「パステル」はパスタレストランとしての顔と、ティータイムにはデザートも主力のスイーツ専門店という、両方の顔を見せられるようにリニューアルしました。両方ともコロナ禍前の数字をはるかに上回る売上高と客数を確保できていますので、今後の展開が期待できる実験として成功していると思っています。

事業方針_第3フェーズ(新たな収益構造の安定化)

このようにいろいろな実験をしつつ、「再生から再成長」ということで、第3フェーズは「新たな収益構造の安定化」、これに尽きると思っています。今年度、黒字化は目の前に来ています。足元では、損益分岐点は十分ターゲットに入ってきています。

昨年度から今年の春にかけて収益構造改革に取り組んできたことが、今は安定化へ向かっています。目標としている安定化の数字を100とすると、今、45パーセントから55パーセントくらいまでの幅で成果が出始めています。

再生から再成長を達成していく中で、私はキーワードを2つ置いています。1つはこれまでお話ししてきた新たな収益構造の安定化、そしてもう1つが「本質への回帰」です。

本質への回帰とはどのようなことかと言うと、冒頭に私どもの各業態について、焼き鳥・焼きとんなどのザ・居酒屋業態、刺身・お寿司の居酒屋、総合居酒屋、鉄板焼き、パスタ専門店などとご紹介しましたが、これらの業態は日本の食文化のど真ん中にいる、流行や流行りに乗ったものというよりはエッセンシャルな業態ばかりです。

確かにブランドには流行り廃りはあるかもしれませんが、例えば、焼き鳥屋は残念ながらお店を閉める方々も多数いた一方で、新規参入も多く、焼き鳥屋の数はコロナ禍前から増えています。

テイクアウト専門店も含めてですが、やはり焼き鳥という文化は非常に根強い食文化の中心にいます。そのため、私どもはいろいろな新しい実験、脱・旧居酒屋と謳いながらも、本質的にはエッセンシャルな存在のメイン業態、メインアイテムをもう1回磨き上げることで、確実に再成長が可能であると、この1年間で判断しています。

本質への回帰を実現するためのテーマをスライドの左側に記載しています。中でも今年度の一番重要なテーマが「メニュー開発」です。本質に見合ったメニュー、今のコスト構造を安定させるためのメニュー設計が「価格戦略」につながっていきます。

単純に値上げをすればいいというものではないことは重々承知していますので、価格戦略はきめ細やかに、かつ本質回帰を実現するための価格戦略とメニュー開発を連携させながら進めていきます。

冒頭にお伝えした食材の供給危機、原価の値上げなどをコントロールして、それにきちんとメニュー開発がついていけるよう、「調達構造」も変え始めています。

また、もう1つの大きな問題は人員不足です。採用を一生懸命がんばって人を育てて、人員不足を解消するための努力は続けていきますが、しかし、おそらく人手に関して一番良い状態なのは今であり、今後はさらに厳しくなる可能性があります。

少人数で今まで以上のハイクオリティな価値を提供するためには、「省人化オペレーション」に取り組まければいけないため、先ほどお話ししたとおり新機種・新機材の実験も行っています。昨年からオペレーション改革に取り組んでおり、今年1年間も、ここが施策の中心になっていくと思っています。

本質への回帰という時に、これら4つの「メニュー開発」から「省人化オペレーション」までは経営として、仕組みを変えていくことで対応していきますが、現場ではやはり「本質」を大事にしようと考えています。

情緒的な話ですが、「焼き鳥をおいしく焼こう」「焼きとんとお酒がおいしい状態を提供しよう」というメンタリティがやはり大事です。スライドの一番右側の「焼師心得三か条」は、「やきとりの扇屋」です。「扇屋」が創業期から社訓のように唱和してきた、この3つの言葉をあらためてきれいに作り直して、焼き台の上にこれを貼って、毎日大きな声で唱和しながら焼き台に向かうという、基本的かつ大事なところにしっかりと取り組んでいます。

今、これだけでも焼き鳥の品質は一気に向上しているという手応えを感じています。品質とコストパフォーマンスをお示しし、メニュー開発と価格戦略をお客さまにご理解いただきながら、「扇屋」らしさを実現していこうとがんばっています。

加えて、「紅とん」は生ビールの品質ということで、アサヒビールからスライド中央のポスターを作っていただきました。アサヒビールから最高品質と言われるお店の比率をどんどん高めて、このポスターにあるように、価格に見合った以上の価値提供をしていることをお伝えできる営業の現場作りをしています。

この2つのキーワードをもって、今年度はすでに黒字化が見えていますので、その先の再成長につながる施策を実行していきたいと思っています。

事業方針_第3フェーズ(出店体制の確立)

拡大・再拡大についてです。来週末に「日本橋 紅とん」が、ヴィアグループの純粋な新店としては5年ぶりに新規出店します。

こちらは「紅とん」の吉祥寺店となります。先ほど「紅とん」はすべて23区内にありますと話しましたが、初めての23区外の、山手線の外のお店としてチャレンジしたいと思っています。一見すると既存店と変わりませんが、新しい串焼きの柱に並行して2本目の柱、3本目の柱になるようなメニュー構成にしています。

吉祥寺という街は、飲みのベテラン、サラリーマンから若い方々まで、いろいろなタイプのお客さまがいらっしゃいます。どのようなお客さまに来ていただけるかによって、どのようなかたちに変化していったらいいのかを考えています。

そのような意味でミニマムなサイズから始めて、次々に新しい提案をして、徐々にメニュー数もコンセプトも拡大させていくという、新店でしかできない実験をこの店舗で行おうと思っています。ぜひ、みなさまに来て楽しんでいただき、「こんなお店にしてみたらどう?」と声を上げていただければ本当にありがたいと思っています。

このように、私どもグループはついに新店も出せる状態まで再生が進んできました。そのことを今日、みなさまにご報告します。

2024年3月 連結業績予想(前期比)

連結業績予想です。今期の売上高180億円という数字については、まだ原価に変動がある中、それに伴って価格戦略も走りながら見直していくため、今の客数に対して適正な売上高かどうかはわかりません。

ただし、利益構造を安定化させていくことで、営業利益・経常利益の規模については是が非でも確保していきたいと思っていますし、4月から7月の営業でも手応えを感じています。

この数字を目指してがんばっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。私からの説明は以上です。ありがとうございました。

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