総務省「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の概要」によると、60歳から64歳の就業率は男性が83.9%、女性が62.7%、全体が73.0%となっています。
年金の受給開始年齢が65歳のため、60歳で完全にリタイアする人は少なめです。
就労によって給料を得られるだけでなく、社会保険に加入すれば65歳以降の厚生年金の増額も期待できます。
今回は60歳以降に働く人の平均給与と、就労によって増える年金額などについて紹介します。
1. 60歳以降に働く人の平均給与はいくらか
最初に60歳以降に働く人の平均給与を国税庁のデータから紹介します。比較対象として55歳から59歳までのデータも追加してあります。
平均給与は年齢とともに下がっていくことがわかる結果となりました。特に現役世代である55歳から59歳時の給与と、60歳から64歳時の金額には大きな差があります。
多くの人に、60歳以降は退職して別の勤務先で働いたり、同じ勤務先でも正社員でなくなったりするなどの変化があると考えられます。
1.1 60歳から65歳未満の人が受け取れる高年齢雇用継続給付
60歳以降の給与が60歳時点の収入から75%未満に下がった人は、高年齢雇用継続給付を受けられる場合があります。高年齢雇用継続給付には、以下の2種類があります。
- 高年齢再就職給付金:失業保険の基本手当を受給し、60歳以降に再就職した人が対象
- 高年齢雇用継続基本給付金:同じ勤務先で働き続ける人が対象
いずれの場合も、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あることが受給の条件です。
2. 60歳以降に厚生年金に加入すると年金はいくら増えるか
60歳以降に働く場合に、厚生年金に加入すると給与と加入月数に応じて年金額が増えます。増加する金額(年額)は、以下の計算式で求めます。
平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入月数
標準報酬月額とは社会保険料を計算するときに基準となる金額のことで、月給に近い金額です。平均標準報酬月額は、加入期間中の標準報酬月額の平均です。
たとえば、標準報酬月額が10万円の人が5年間厚生年金に加入した場合に増加する年金額(年額)は3万2886円で、月額にすると2740円です。月額にするとわずかなようでも、20年受け取れば約66万円、30年なら約100万円も多く受け取れます。
以下の表は、厚生年金加入年数と標準報酬月額ごとに増加する年金の年額をまとめたものです。
2.1 在職定時改定により退職前に年金が増えるように
2022年4月から、65歳以降に厚生年金を受け取りながら保険料を支払う人に、「在職定時改定」という制度が導入されました。
在職定時改定とは、厚生年金を受け取りながら保険料を支払う人が、支払った保険料をもとに定期的に年金額を計算し直して支給される仕組みです。
以前は退職後、もしくは70歳以後に受け取る年金額に65歳以降に納めた保険料が反映されていました。在職定時改定により働いている間に受け取る年金が増えるようになりました。
3. 収入の多い人は在職老齢年金に注意
60歳以降も働いて収入を得て、年金も増えた場合に、注意すべきことがあります。在職老齢年金制度によって、年金の一部または全額が支給停止になる場合があるのです。
在職老齢年金制度では、基本月額と総報酬月額相当額の合計が48万円を超えると、超えた分の2分の1が支給停止になります。
基本月額とは加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額、総報酬月額相当額とは1年分の標準報酬月額と標準賞与額の合計の12分の1です。つまり、「受け取る厚生年金の月額と月給の合計が48万円を超えた場合」に近いイメージです。
なお、在職老齢年金制度で支給停止になるのは厚生年金のみで、基礎年金(国民年金)は対象外です。
また、70歳以降は厚生年金の保険料は徴収されませんが、在職老齢年金に該当した場合は支給停止の対象になります。
3.1 在職老齢年金の支給停止額をシミュレーション
たとえば、基本月額15万円、総報酬月額相当額が35万円の人の支給停止額は以下のようになります。
(15万円+35万円-48万円)÷2=1万円
よって、受け取れる厚生年金額は14万円(15万円-1万円)です。
基本月額が15万円の人は、総報酬月額相当額が33万円を超えると一部支給停止、63万円以上では全額支給停止になります。
4. 60歳以降は年金の増減に注意して働きましょう
60歳以降に厚生年金に加入して働くと、将来の年金を増やせます。65歳以降は年金を受け取りながら働くこともできるので、老後の経済的不安の解消につながるでしょう。
ただし収入が多い場合、在職老齢年金の対象になるおそれがあります。年金の見込み額は毎年チェックし、カットされないように収入を調整しましょう。

