3. 高齢者の支出は平均いくらか
年金収入を確認したあとは、老後の支出について考えてみましょう。どれほど支出するかわからない場合、まずは平均を参考にしてみるのもひとつです。
例えば総務省の「家計調査報告 家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要」という資料では、「65歳以上の夫婦のみ無職世帯」の支出平均がわかります。
こちらによると、夫婦の支出平均は26万8508円。年金額に対して赤字になる可能性もあるでしょう。
ただし、あくまでも平均なので「26万円も必要ない」と感じた方もいるでしょう。平均はあくまでも参考のひとつとして、シミュレーションのきっかけとしていただければと思います。
4. 老後に向けた資産形成4選
年金だけで暮らす高齢者は44.0%だけです。年金しか収入源がない場合、支出額によっては赤字になる可能性も高いでしょう。
老後の生活に困らないためには、年金以外の収入源を確保したり、貯蓄で備えたりする必要があります。
資産形成には具体的にどのような方法があるのでしょうか。
4.1 iDeCoや個人年金保険などで独自の年金を作る
厚生年金や国民年金だけでは心もとないという場合、自分で独自の年金を作るという方法があります。
貯蓄では少しずつ切り崩す必要がありますが、年金形式では精神的に安心できるという方も。
支給額が確定している方がいいのか、運用成績によって増やせる方がいいのかなど、個々の考え方やリスク許容度に合わせて選びましょう。
節税効果も見逃せないメリットです。
4.2 先取り貯蓄で確実に老後資金を作る
貯蓄で備えたいという場合は、先取り貯蓄がおすすめです。
現役世代が準備したい資金は老後資金だけでなく、「入院に備えた予備費」「教育費」「住宅購入費」「車の買い替え費用」など多岐に渡ります。
老後資金は遠い未来のもののため、どうしても優先順位が下がってしまうもの。
挫折しないためにも目的別に色をつけることで、混ざらずに着々と貯蓄を進められるでしょう。残し貯めではなく、銀行や職場の制度を利用して先取り貯蓄できるシステム作りが効果的です。
4.3 資産運用も視野に入れる
貯蓄を進める際、預貯金だけではなく資産運用も選択肢のひとつに入れてみてはいかがでしょうか。
低金利の今は、銀行に預けているだけではなかなかお金が増えません。インフレのリスクもあるため、「せっかく2000万円貯めたのに、いざ老後を迎えたら2000万円の価値が下がっている」という可能性もあるのです。
こうしたデメリットをカバーするには、一定額を資産運用に振り分けるという視点も重要です。
ただし大切な老後資金ですから、元本割れは避けたいですよね。個々のリスク許容度と照らしながら、長期・積立・分散投資ができるという方は一度検討してみてもいいでしょう。
4.4 厚生年金の受給額をあげる
厚生年金額をアップさせる方法も考えましょう。
厚生年金の受給額は収入だけでなく加入期間もポイントになるため、厚生年金制度を導入している企業に属する期間を延ばすことが有効です。
扶養内で働くパートの方は、目先の手取りが減るものの将来の厚生年金が増えるメリットがあります。一度厚生年金への加入を検討してみましょう。
他にも繰下げ受給をして、公的年金額をアップさせるという方法もあります。
5. 老後に彩りを
老後2000万円問題も話題となりましたが、年金だけで生活できない高齢者は半分以上に上ります。
まずは老後のシミュレーションをすることが第一歩になるでしょう。
現役時代にがむしゃらに働いた分、老後は働かずにのんびり過ごしたいという方もいますよね。
どんな老後を送りたいかを考えたとき、準備期間は長いほど選択肢がひろがります。
情報収集を行い、将来に備えておきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2022年(令和4年)平均結果-(二人以上の世帯)」
太田 彩子